クレイモア吸血鬼の旅行記106 ノヴィスワールド-吸血鬼はイルヴァの夢を見るのか? 後編-

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』



アネモネ(ふむ…魔法が使えぬな。確かエリステアが言っていたな。昼は近接と射撃を、夜は魔法を封じられると)
英雄、聖なる盾、契約といった魔法が唱えられないことに不便を感じたが。夜明けまで待ったら、幻を見る前にエリザかマリーに捕まってしまうだろう。…なら、先に進むだけだ。

アネモネ「ふふっ、ふははははははははっ!我を倒せるのか?我が前に立ち塞がるのなら、踊るがよい。死が迎えに来るまで!」
そう笑い、アネモネは文字通り壁になっている嘆きの壁に銃口を向けた。嘆きの壁は呪いの言葉を吸血鬼に向かって繰り返し、次々と吸血鬼の装備が呪われ堕落していく。

アネモネ「なんだその程度か?解呪の巻物なら腐るほどあるぞ?」
つまらなそうに呟き、吸血鬼は呪いなどまったく気にせず、銃弾を放つ。容赦ない射撃に嘆きの壁はボロボロと崩れ、ただの瓦礫となった。アネモネは祝福された*解呪*の巻物を読み。階段を探す。だが、どこにも見当たらない。どうも仕掛けがあるようだ。

 


扉を開くと、ミノタウロスの彫像が立っていた。だが、こちらに向けられる敵意。他のモンスターとは異なる魔力を感じる。

アネモネ「考えるまでもないな」
笑みを浮かべ、アネモネは《魔像》に銃弾を浴びせる。何度も撃たれようが、微動だしないほど頑丈であったが、攻撃の手を止めるほどの力は無く。《魔像》はバラバラに砕けた。吸血鬼は1体だけではないだろうと、隈なく探索し。発見した《魔像》をすべて破壊した。…すると、先ほどは無かった階段が現れた。

アネモネ(わかってしまえば、簡単であるな。さて、10層以上まで来れたが…今のところ、妙な感覚があるぐらいだな)
紅い廊下のタイルを踏みしめ、扉を開けるたび、意識に僅かに差し迫る”ノイズ”。この独特の不快な感覚は、これまで幾度か、吸血鬼の意識を探索の慮外へと追いやった。ネフィア内部に居る以上、油断や思考の寸断は死に直結する。…その事実を十二分に理解しているにも関わらず、侵入者の精神をかき乱す何かがあるのだ。

エリステア「————何か、ありましたか…?」

アネモネ「いや、攻略は順調に進んでいるぞ」

エリステア「もどかしいです…。いっそ、私も貴方の探索に同行できれば…。いえ、それでは返って貴方の足手まといになる事は理解しているつもりですが…」

アネモネ「何を言っている?耳元で囁かれる、そなたの甘やかな声を聴くだけで、我は身も心もとろけそうだぞ」

エリステア「な、何を言っているんですか!」

アネモネ「ははっ。こうして和やかな会話するだけで、我の助けになっているのだぞ?もっと自信を持つがよい」

エリステア「…ふふっ。そうですね。しっかりします」

 


不意に。揺らめき立つ支柱の影から染み出すように黒い塊が零れ落ちる。コポコポと泡立ち、吸血鬼の足元へとにじり寄る不定形の”沁み”が、突然激しく、波打った。もがき蠢くソレは、まるで粘土だ。咄嗟にソレに向かって弾丸を浴びせるが、弾けるように飛び散ったソレは、すぐに元に戻り…いや、人の形に、小柄な少女へと変化する。アネモネはその顔をよく知っていた。



アネモネ「ノエル…?」
そんな訳がない。彼女は今、白紙の街タブラ・ラーサと呼ばれる場所に避難している。爆破予告の濡れ衣を着せられ、追われる身だ。滅多な事では街から出ないだろう。それに———

アネモネ「本物はもっと愛らしく、猫のゆりかごを持っておるぞ」
無表情のまま、地雷を投下していく偽ノエル。あまりの似てなさに、アネモネは呆れるように肩をすくめ。そして、偽ノエルの額に弾を撃ちこんだ。ぐにゃりと小柄な少女の形が崩れ、床には液状の何かが力無く広がった。完全には倒せていない…?時間経過で回復するのか。そして、再び冒険者を惑わすのか。どちらせよ。

アネモネ(不愉快な仕掛けだ…)
本物ではないと分かっていても、親しい人間に殺気を向けられるなど、気分が悪い。その人間の尊厳も汚された怒りすらある。

アネモネ(…昔の我は人間を生きた宝箱だの、ぬかしていたが…。変わるものだ)

そう思い出したのが影響したのか。視界の端に晴れやかな空を思わせる青い髪が映った。その方を見ると、《エーテルダガー》を構えるラーネイレの感情がない目と合う。その隣には、

ロミアス・シャドウを射撃し 致命傷を与えた。
偽ロミアス「ナゼ攻撃ヲ躊躇シナイ?」

アネモネ「阿呆か?」

 

少し気が抜けたこともあったが、吸血鬼は襲いかかってくる偽物たちを倒していき…。


アネモネ「麗しいな。しかし、本物の方が良い匂いがするぞ!」
吸血鬼はトリガーに指をかける。放たれた弾丸は偽エリステアの胸を貫いた。虚ろな顔のまま、後ろに倒れ。元の液体に戻った。

アネモネ(だいぶ奥まで進んだと思うが…幻とやらは全然見えぬな?)
嫌な感覚は続いているが、話に聞いたような幻はいまだ見えていない。偽物に対して、あまり動揺せず。落ち着いているからか。それとも、アネモネが特殊なため。惑わすための幻が上手く作り出せないのか?

アネモネ(我は…安堵している?)
塔に入る前にあった重苦しさが、だいぶ軽い気がする。このまま何も起こらなくても良いじゃないかと、そんな考えがよぎる。

アネモネ(あやつらが追いついて来たら、きちんと謝っておくか)
そう思い、歩もうとして。吸血鬼は地面に落ちている物に気付いた。ふわふわと手触りが良いシルク製の下着、とても大きな存在を感じさせる2つの空洞。《エリステアのブラジャー》だ。

アネモネ「こ、これは…なんて素晴らしい!エリステアの下着までそっくりに似せて…いや、本物を見たことがあるのではなく」
思わず口に出てしまった事への誤魔化しをしようとして、アネモネはふと気付く。エリステアの声が聞こえないことに。

アネモネ(貝の耳飾りは…落としてはいないな。故障か?)
何度も襲ってくる偽物たちとの戦い。道中でも辻ウンガガやおとおとの襲来などの激しい戦闘もあった。それが原因かもしれない。

アネモネ(作戦に支障が出ているな。戻るか…?しかし、そろそろ最上階のはずだ。登り直して、再び偽物たちの相手をするのも面倒だな)
懐に《エリステアのブラジャー》をしまいながら思案するアネモネの目の前に、また人影が見える。

アネモネ「いい加減しつこいぞ。偽物め————…?」
吸血鬼は時が止まったように、現れた人物を見つめる。見覚えが無い顔。けれど、苦しいほど締めつける心の痛みが、知っていると教えてくれる。

アネモネ「…」

 


水受けとしてテーブルに置かれていたゴブレットが、甲高い音と共にひび割れる。まるで何か呼応するかのように…。前触れもなく欠け落ちた金属片に、エリステアは思わず瞳を見開いた。不吉な迷信、あるいはそれは予兆だったかもしれない。何の根拠もない妄想だと、胸の内に去来する焦燥を否定しようとして…結果的に彼女はその悪寒を拭えず、神器越しに冒険者に声をかけていた。

エリステア「アネモネ?」
返事は———…無い。

エリステア「………」
思考が上手く纏まらない。気のせいだと、心に言い聞かせようとする。馬鹿馬鹿しいと、一笑しようとする。そんな抵抗も空しく、沈黙とノイズは耳元に纏わり付いて離れない。普段なら、あれほど強く感じ取れる冒険者の気配が、今はひどく遠い。——錯覚ではない。

エリステア(同じだ。カラムの時と、サローネの時と…全く同じだ)
気がつけば、エリステアは兵営のテントから飛び出していた。
パルミア兵「エリステア様…!?どちらに…!?」

エリステア「…後の事は任せます。もしも私が戻らない時は、部屋の引き出しの小箱を開けてください」
そこには自分自身が書き留めた思いつく限りの知識と、託すべき執務に関する申し送り————…そして、知人たちへの遺書が収まっている。イピルナの再調査を決意した際に、すでに決めていたことだった。送り出したアネモネが迷宮から戻らない、その時は…。

エリステア(いけない…挑む前から弱気になっては…)
連れ戻すのだ。彼女だけは、必ず…。理屈などではない。後も、先も、関係ない。彼女を助けたい。否、今はただ、無性に顔が見たかった。だから、

エリステア(もう一度、あの塔へ————…)

マリー「…私も同行してもいいだろうか」

エリステア「貴方は…」

マリー「すまない、声をかけようとしたのだが…アネモネの名を呟いてから、かなり焦っているようだが、あいつに何かあったのか!?」

 

 


暖かな日が差す窓辺で白いドレスを着た女性が椅子に座っている。細い指は愛しげに、僅かに膨らみがある腹を撫でている。”私”はその傍らで、部屋の壁にどんな絵を描こうか、どんな玩具が気に入るだろうか、名前も色々と考えてみたが、どれが良いだろうか。と、楽しそうに次々と彼女に聞く。彼女はそんなに急いで1度に言わなくても、これからはゆっくり一緒に考える時間があるでしょう。と、そう答え。少し呆れたように笑った。
そうだ…戦争は終わった。半年も、1年以上も帰れず。もう彼女に寂しく不安な思いをさせることはない。共に戦った友、あいつも無事に帰還し。やっと恋人との結婚の約束を果たし、幸せな新婚生活を過ごしている。いつか私たちの子供とあいつの子供が良き友人となり。私とあいつは酒を飲み交わし、すっかり歳を取っただの、他愛もない雑談や、思い出話をしながら、子供たちが遊ぶ姿を見守るだろう。そんな未来が当たり前に来ると、そう思えて———

けれど、私は理解している。これは、そうならなかった私の夢だ。本当は……。ああ、ようやく気付けた。

 



アネモネ「…」

エリザ「…」
薄っすらと開いた視界に心配そうにこちらを見つめる少女の顔が映った。吸血鬼はぼんやりと少女を見つめる。その弱々しい姿に、違和感を覚え…ハッとしたように、アネモネの意識は戻った。

アネモネ「…エリザ?………いや、エリザか」

エリザ「…!し、心配しましたのよ!いくら呼びかけても、反応が無くて…」
頭部に柔らかな感触がし、良い匂いがする。幻の中を彷徨っている間、膝枕をしてくれていたのか…。そして、

アネモネ「我の頬がヒリヒリするのだが…?」

エリザ「目を覚ますかな~と、思いましたの」

アネモネ「…ふ。ははははっ!エリザはエリザらしいものだな。…それが良い」

エリザ「…?」

アネモネ(そういえば、いつも最初に我を見つけていたのはエリザだったな…)「ところで、1人で来たのか?塔の前にエリステアたちが待機しているはずなのだが、会わなかったのか?」

エリザ「え?その…なんだか無断で入ってはいけない雰囲気でしたし。急いでいたから、つい勝手に入りましたの。だから会っていないですわ。…やっぱり怒られますわよね。冒険者資格を取られてしまうかしら…」

アネモネ「ははははは!大丈夫だ。せいぜい罰金を取られるぐらいであろう。…すると、このネフィアで何が起こるのか知らずに我の元に来たのか。エリザはとんでもないなぁ。ふふ、く、はははははははは!」

エリザ「そんなに笑わなくても…少し、おかしな幻が見える程度でしたし」

アネモネ「どんな幻を見たのだ?」

エリザ「え…ええっと。その…あなたが私に……べ、別に、そんなに気にすることじゃないでしょう!?」

アネモネ「なるほどなるほど。今のように睦み合っていたと?」 吸血鬼はにやりと笑い。頭の下にある少女の太ももをじっくりと撫でた。

エリザ「ひゃ…こ、この阿呆吸血鬼っ!!」

アネモネ「ぬわああああああああっ!?」
エリザは恥ずかしさのあまり勢いよく立ち上がり。アネモネは派手に転がり落ち、頭を床にぶつけた。

アネモネ「なんという理不尽…これが現実か」

エリステア「———アネモネっ!

 


ここまで急いで強行突破してきたのか、エリステアの恰好は少しボロボロで。疲れた息を整えている。しかし、見つけたアネモネの姿に、心の底から安心したように笑みを浮かべ。エリステアは自然と瞳から涙を零していた。

アネモネ「そなたには随分と心配をかけてしまったな。そのように泣かせてしまうとは…」

エリステア「え?私が泣いている?…そんな事はありません。声が震えている?…気のせいです」

アネモネ「素直になれ。我の胸で泣くといい。優しくその清らかな雫を拭ってくれよう」

エリステア「な、何ですか…。あまり年上をからかわないで下さい。良いですか?今、私の顔を見るのは禁止ですよ。あ…ちょっと…!」
慌てふためくエリステアを微笑ましく覗き込もうとする吸血鬼だが、後ろからマントを引っ張られた。

アネモネ「ぬぐぁっ!?エリザ…我はただ」
そう言いかけて、吸血鬼は言葉を止めた。振り返って見えたのは青い目であった。その隣で、エリザは驚きに口を開いていた。

マリー「………夢を。お前も見たのか?」

アネモネ「…もう逃げぬよ。だが、話し合うには。お互い落ち着かない状況であろう。それに…こんな悪趣味なものを見せた存在が待ちかねているぞ?」

 

異様なマナの流れを感じた。墨が落ちたような暗闇の中、吸血鬼たちは身構える。すると、松明に次々と明かりが灯り始めた。揺らめく紅の壁や床の原型は、今や影も形もない…。静謐な冷気すら漂う、石造りの広大な回廊。擬態を止めた追憶の塔が吸血鬼たちの前にその全容を顕にした。


エリステア「あれは、祭壇…?」
かがり火に照らされるのは、人面のレリーフが描かれた奇妙な古代の儀式場…。その中央で、不気味に何かが蠢いている。…それは、半人半獣の生物だった。蛇の鱗を纏った下半身を携え、猛禽類の腕、幾つもの人の貌を宿すその獣は、醜悪でありながらどこか神聖さを感じさせる。ややあって、こちらを見やると、”獣”は抑揚なく呟いた。
追想と鏡の獣「—————…人間か…」
声というものを長らく忘れていたかのような…ひどく掠れ、しゃがれた声だった。目を凝らして確認すれば、祭壇に祀られているのは、蒼く透き通った液体を納める水瓶だ。人1人分の大きさは優にあろうその瓶を庇うように、獣はずるずると吸血鬼たちの元へ近づいてくる。
追想と鏡の獣「我は見続けてきた、そして見せ続けてきた…幾百幾千の年月の間。よもや今になって、此処までたどり着く人間が居ようとは…」

エリステア「…見続けてきた…何をです…?」
追想と鏡の獣「それは汝らの記憶であり、語録であり、願望でもある…人はそれを”追憶”という名で呼び表す…。我は『追想と鏡の獣』。盟約に従い塔を守護し、”太陽(ヴァーラ)”への道行を阻むもの」

エリステア「ナーク・ヴァーラ…。やはり間違っていなかった…。この塔に失われた文明紀への足掛かりが…」
エリステアは息を呑み、祭壇に掲げられた水瓶を見つめる。たゆたう水鏡には、幾千にも積み重なった景色が、時が、そして人々の苦悩が影となって渦巻いている。追憶の塔がこれまで食らってきた人間たちの記憶…。それでは、何故…?何の目的で、この獣は侵入者に過去の幻影を作り出して見せたのだろう。
追想と鏡の獣「この塔は混沌によって課せられた人間たちへの試練。過去という名の毒を飲み干し、感傷という名の茨を乗り越え、頂きへと至る者にのみ太陽の門は開かれる」

エリステア「混沌…?古文書に記される、地上に魔術をもたらした異郷の神々の事ですか…?彼等がどうして…」
追想と鏡の獣「我は待ち続けた…。そして汝らは神に可能性を示したのだ。人間という種が持つ可能性を。ヒトは過去を越え、闇を照らす灯をその手に抱く事が出来るのか…そして、今こそが裁定の時…!」
獣の周囲から蒼く煌めく呪言の鬼火が立ち昇る。明確な敵意とともに振りかざされた掌。それを合図に、無数の火球が雨となって祭儀所へと降り注いだ。

アネモネ「ははは、ははははははははははははっ!貴様が、神が、我を試す?傲慢なことだなっ!!


…横たわる獣は無機質に、しかしどこか満ち足りた様子で塔の天井を見上げていた。太古の門番は満身創痍となりながら、自らの運命とその役割の終わりを悟ったのだ。
追想と鏡の獣「我は絶望という名の”蓋”を隠匿する鍵として自らの生を与えられた…」
その声は虚ろで、伽藍洞で、砂の器のように渇いている。
追想と鏡の獣「多くの追憶をこの目にしたが、我はついぞ人間の心というものが理解出来なかった。…教えてくれ。何ゆえ、汝たちはこの塔の幻影を跳ね除けられたのか…。幾千もの探索者の侵入を阻止した我が呪法が、何故汝には通用しなかったのか…」

エリザ「私が探していたあのひとでしたけど…。でも、私が探していたあのひとではなかったですの。…上手く説明できないですけど、”何か”違うと思いましたの」

マリー「…そう、違うんだ。あれは私が欲しかったものだけど。それは、今まで私が歩んだ人生で得たものを否定された気がしたんだ」

アネモネ「…」

エリステア「………」


脳裏に浮かぶ。それは過去との対峙…。かつて想い合っていた人の幻は、現身のように、3年前と寸分違わず其処に居た。

エリステア「…カラム。そこに、居るのですね…」
今でも昨日の事のように思い出せる。少し憂いを含んだ横顔。低く、しかし優しい声。哀しげに夜風が木の葉を鳴らす。…エリステアは静かに目蓋を閉じた。

エリステア「変わりませんね、この場所は…」
『…全てはあの頃のままだ。思い出は色褪せず、万華鏡のように鮮やかに輝いている』

エリステア「貴方は私にたくさんのものをくれました…。それは今でも私の宝物です。私が私で居られるのは、貴方が私の一部をこうして形作ってくれたから…」
『………』
だけど。寸分違わぬ声。寸分違わぬ気配————…だからこそ分かってしまう。目の前の光景が決して現実ではないのだと。風が吹く。星が瞬く。静寂に包まれた在りし日の王宮。…空が高い。
時が移ろうと決して変わらないものがあった。—————…同時に変わっていくものも。それがきっと、生きていくという事だから。
『—————ああ…そうか…もう良いんだな…エリステア—————…』
過去が遠ざかる。どこか苦しく切なげな響きを残して…。彼女は一度だけ立ち止まった。自ら決別した面影を懐かしむように…。…それでも。彼女は最後まで、決して後ろを振り返ることはしなかった。

 


エリステア「貴方の納得に足る答えなのかは分かりませんが…。かつて追憶の塔に挑んだ者たちは皆、幾多の苦難と死線を潜り抜けた歴戦の強者だったのではありませんか?彼らは数奇な運命に導かれ、独りでは支えきれない重い過去を背負い、痛みを抱え、貴方の元へと辿り着いた。
…其処に行くと、私はただの、愛する人を失いたくなかっただけの平凡な女です。誰しもが持ち合わせているような後悔や感情を抱えて生きる、ちっぽけでつまらない人間です。物語の主人公にはなれない…。世界を左右するような業も宿命も持ち合わせてはいない。だけど…だからこそ、貴方の幻影を打ち破る事が出来た」
何も特別な事をした訳ではないのだ。平凡な人間は誰しもがそうやって生きている。身の丈に収まる小さな悲劇と戦い、乗り越え、前を向く。それが人間というものの在り方なのだと…。そう言って微笑む女の顔を、不思議そうに眺め…やがて、追憶の獣は得心がいったように頷いた。
追想と鏡の獣「成る…程…」
崩壊する自身の存在を見つめ、思う。…彼女は示したのだ、ヒトが内包する可能性を。太古よりいかなる強者の侵入を阻んできた呪法が、無辜の人間によって打ち破られた。太陽への道を切り開いたのが彼女だというなら、これ以上の証明が他にあるだろうか。何故なら未来を作り出すのは英雄ではない。いつだって、時代を生きる市井の民なのだから。
追想と鏡の獣「フフ…ハ…ハハハ…」
湧き上がる歓喜の中、ひとしきり笑い、…やがて、獣は静かに事切れた。一瞬の無音の後、古の塔が滅びの鳴動を引き起こす。蒼く渦巻く人々の追憶が次々と床面へと零れ落ち…彼が守護する水瓶も、次の瞬間、甲高い音を上げて砕け散ったのだった—————…


エリステア「…これで、ナーク・ヴァーラへの道が開けたのでしょうか?見たところ、手がかりになりそうな物が無いですが」

アネモネ「きっと開けたであろう。素晴らしい答えであったぞ」

エリステア「ああ言えたのは貴方のおかげで…その、ありがとうございます」(私が前に進めたのは…再び塔へ向かった時にハッキリ自覚した私の気持ちがあったから。アネモネを心から愛していると…)


エリザ(どう見ても、そういうことですわよね…。まったく…でも、こんな風に好かれるようになるなんて、本当に昔と変わりましたわね)

マリー「…」

 


ちょうどいいぐらいの強さで挑んでみたが、やはり3人だと一方的な攻撃になってしまうな…。ちなみに道中はアネモネのみで攻略しています(ボス前までソロでやり、ボス戦のために2人を連れた状態でもう一度登りました)
ノヴィスワールドが更新されましたね。ラーネイレメインクエストのEDまで追加されたようです。プレイしてみて、ここで…?なところで終わったので、ノヴィスさんが以前ブログに書かれていたようにワールドを分けるつもりで、ここでEDにしたのかもしれませんね。アネモネで記事にするには、広げたRPをちゃんと畳んでからにしようと思います。

 

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