クレイモア吸血鬼の旅行記121 踊れ月光(終)

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』


机の上に置かれた分厚い本。表紙の皮は所々ひび割れており、かなり使い込まれていることがわかる。これはアネモネが旅の出来事をずっと書き綴っていた旅行記だ。ペンを手に取った吸血鬼は、残り少ない白紙ページを見つめ…何か思い耽るように、紫の瞳を細めた。

アネモネ「………さて、書くか」

 


墓石が並ぶ静かな場所。瑞々しい草花が植栽され。美しい神の彫像が安らかに眠る死者たちを見守っている。そこに吸血鬼と少女が立っていた。

アネモネ「…。随分と強引なお誘いだったが、そんなに我とデートしたかったのか?」

エリザ「墓を楽しむ趣味はないですわよ…。あなたのことでお話をしたいと思ったのですわ」

アネモネ「ほう?我のことを?」
吸血鬼は笑みを浮かべている。だが、その声音は威圧的だ。下手なことを言えば逆鱗に触れてしまいそうな…そんな雰囲気だ。しかし、少女は怯まずに言った。

エリザ「あなたのその癖…よくないですわよ。そうすれば、自分の思いどおりになると思っているのかしら?」

アネモネ「…」

エリザ「私は退かないですわよ。…あなたのことが気になるのだから。きっとマリーも同じ気持ちよ。どんな態度を取ろうが、恐ろしくしつこいでしょうね。だから、向き合って話をするしかないのですのよ」

アネモネ「…そんなこと理解しておるわ。だがな、我は昔からこういう性分なのだ。正すことは無いだろう」

エリザ「別に、あなたの性格の悪さはよく知っていますわよ。変えるなんて骨が折れるどころか粉みじんになりますわ。そう…人でなしで良いのですの。ワガママに、身勝手に、隠さずに…言ってほしいの」

アネモネ「とんでもない言い様だな…。……エリザ。我を愛せるか?」

エリザ「えっ…そ、そんなことを言われましても…」

アネモネ「そうか…我は遠いどこかへに雲隠れしよう…」

エリザ「…わかりましたわよ!!」
少女は頬を赤く染め、恥じらうように少し沈黙し。そして、軽く咳払いしてから、やっと言葉にする。

エリザ「愛していますわ」

アネモネ「…ふふっ」

エリザ「なに笑っていますの…!もう…!あなたも言ってみたらどうですの」

アネモネ「我も?……私は君を愛している。君が私を愛すように。朝も夜も、1日欠けることなく。私たちは憂いを分かち合う。君と共に分かち合う。君は私の苦悩を慰め。私は君の嘆きに泣く。君に神の祝福あれ。君は私の命の喜び。神は君を守り、私を救う。私たちに神の加護があらんことを……という詩のように、夢想していた頃があったなぁ」

エリザ「…びっくりしましたわ。急にそんなことを言うなんて。お肌がぞわぞわしましたわ」

アネモネ「そこまで言うほどか…。まあ、今の我の愛とは…我の物であり。我が寵愛を受けるものは我の物。我の物を傷つけるものは死を持って、わからせてやろう。エリザよ、喜ぶといい」

エリザ「凄くあなたらしいですわね…。でも、私はあなたの物ではないですわよ。私は私の意思を持って、あなたの傍にいますの」

アネモネ「エリザは自由だな。初めから、我に噛み付いた時から…。そなたは特別な女だ。これからもずっとな」
吸血鬼は微笑んで、少女に顔を近づける。エリザは耳まで紅潮し。受け入れるように目蓋を閉じた。触れ合う…その柔らかさに心が満たされる温かさを感じる。口づけで呪いが解け、ハッピーエンドになる物語があるが、確かにそんな力を秘めているような…全てが上手くいくと思える。

アネモネ「…マリーに会ってくる。安心せよ、ちゃんと話す」

エリザ「…」

アネモネ「…ぬ?」
袖を引かれ、アネモネは進もうとした足を止める。どうしたのだろう?と、エリザの顔を見ようとしたが…そのまま強く引っ張られ。吸血鬼は茂みの中に転がされていた。

エリザ「キスだけで満足ですの?」

 



マリー「…」
色鮮やかなステンドグラスの光が注ぐ、静かな大聖堂で。マリーは1人佇んでいた。幸運の女神との激闘を終えた後。アネモネは話をしようと言っていたが…どうも威圧的で、とても穏やかな話し合いになると思えなかった。そこにエリザが間に入り。アネモネを強引に連れて行ってしまった。2人が消えてから、まあまあ時間が経過しているが…

マリー(…大丈夫だ。私は待つだけだ)
不安など無かった。アネモネを想うエリザを心から信頼しているのだ。そうしていると…背後から扉が開く音が響き、足跡が近づいてきた。

アネモネ「待たせたな。すまんな。麗しい女王様がなかなか離してくれなくてな」

マリー「構わないよ。お祈りをするのは好きだからな。この場所は特に落ち着くよ」

アネモネ「おかしな奴だな~。血とゲロゲロに塗れた場所が好きとは」

マリー「今は綺麗に掃除されているから…。それで…私に話したいことってなんだ?」

アネモネ「……マリーよ。家族は大事か?」

マリー「うん?もちろん大切だが…?」

アネモネ「我の事を…どう思っている?」

マリー「……友だと思っているが」

アネモネ「うむ。そう答えると思ったぞ」

マリー「さっきからどうしたんだ?」

アネモネ「重要な質問だぞ。元の世界に帰りたいよな?」

マリー「ああ。帰りたい。……もしかして、私がお前に付き合って帰ろうとしないから。気になってるのか?」

アネモネ「わかってるじゃないか。…私は。今度こそは正しくありたいと、そうあるべきだと考えていたんだ。言ってしまったら、お前を迷わせてしまうだろうと…そう思い。冷たい態度をしてしまった」

マリー「…」

アネモネ「それでも聞きたいか?」
その問いを最後に吸血鬼は口を閉ざした。流れる沈黙。反応を観察するような、紫の瞳の視線をマリーは感じた。やけにうるさく聞こえる鼓動は緊張だろうか。

マリー「私は…ここにいる。お前の傍に。それが答えだ」

アネモネ「いいだろう。……ムーンゲートを知ってるだろう?今の世界とは異なる場所へ行ける不思議な物だ。我はそれを応用し、お前が元の世界に帰れる装置を作ったのだが…使えるのは1度きり。一方通行だ。マリーよ、どうする?」

マリー「帰れない…?この世界に?……どうにも出来ないのか?」

アネモネ「どうにも。いっそ夢だと思えば良い。醒めたら泡となる夢だと」

マリー「そんなこと出来るわけないだろう…!」
反射的に荒い声を出してしまった。それほど嫌だと思えたのだ。愛する人を、友を、全て失った夜から。あてもなく彷徨い…家族という安らぎを得ても。去っていく友の寂しい後ろ姿を忘れられなくて、探し続けて…やっとこの世界で見つけたのだ。目の前にいる吸血鬼を。

アネモネ「選べ。大事なものを、な」

マリー「………お前なら、作れるんじゃないか?この世界に行ける道を」

アネモネ「言っただろう。一方通行なものしか作れなかったと」

マリー「だから作ればいい。この世界へ戻れるゲートを。”私たち”がいた世界で。…一緒に行こう。アネモネ」

アネモネ「…」
名案が浮かんだと笑うマリーとは正反対に、アネモネは沈黙する。その瞳には暗い闇が澱む。

マリー「アネモネ…?」

アネモネ「…私は行けない。先ほど、この世界を夢だと言っただろう。私はどこかそう思うのだ。愛する女性、我を慕う者、居心地良い場所。再会した友は、私を友だと言ってくれた。恐ろしく幸福で、恐ろしい。本当の私は…棺桶の中で眠っていて。目覚めたら、狂うのだ。何も無い真実に」

マリー「……もう一度言うが、私はここにいる。確かな私自身の意思を持って、お前の友として、目の前にいる。私を信じてくれ」

アネモネ「…。私は…お前にはなれない」
冷たい感触がマリーの頬を撫でる。アネモネの手だ。下へ落ちていき、服の襟の中へ潜り込み。硬い爪が首筋の皮膚に少し刺さった瞬間。マリーは本能的に後退り。大斧を手に強く握ると、青い目に赤い炎が映った。

 


真紅の炎が踊る。まるで風になびくマントのように揺らめき。辺りを火の海に沈める。赤々と輝くステンドグラスを背に、吸血鬼は幼い少女から黒髪の男へと姿を変じていた。

アネモネ「戦え。我の意思を変えたいのなら」

マリー「…っ」
屈服させる方法で、相手の意見を変えるなんて間違っている。しかし、今のアネモネは話が通じるように思えなかった。

マリー「…わかった」
答えたマリーの声は低く。普段の穏やかさは消えていた。一切の手加減などしない。覚悟をした顔に変わっていた。

アネモネ「ふふっ…ふはははははははははっ!ふはーはははははははははっ!!」
大聖堂に歓喜の声が高らかに響く。待ち望んでいたことが叶ったというように。吸血鬼は抱擁を求めるように両腕を広げて、マリーに向かって笑う。こちらが動くまで待っているようだ。…どこか既視感を覚える。そうだ…再会した時の戦いの光景を思い出すのだ。

マリー(なら…)
マリーは隠し持っていた鞭を握りしめた。随分と久しぶりだが、よく手に馴染む。ずっと共に居たのだ。言葉が無くても、武器に宿る愛した女性の魂は。

マリー(不幸は繰り返さない。私はそう誓ったのだ…!)
決意を胸に、マリーは動き出した。片手で握った大斧を投擲する。円を描くように、恐ろしい速さで回転する《破壊の斧》を吸血鬼は優雅にマントを翻して回避する。しかし、その動きは僅かな隙が生まれる…。それがマリーの本命だ。中距離攻撃に適した鞭がしなり。速度によって硬化された先の部分が、吸血鬼の頭部を強打する。衝撃によって、アネモネの身体がふらつく。その姿にズキリと胸が痛む…けれど、マリーは次の攻撃の手を止めなかった。太もものベルトから銀のナイフを抜き、投げる。鋭い刃は吸血鬼の胸部に深々と刺さった。

アネモネ「…はっ。ははは…」
吸血鬼は笑いながら、胸に刺さった銀のナイフを抜き。投げ捨てる。金属音が鳴り響き。零れたワインのように血が流れ落ちる。

アネモネ「心臓はここだぞ?」
赤い爪に彩られた指先は胸の中心を飾る深紅の石を撫でる。ナイフの傷口はそこから数ミリほど、ずれた箇所にあった。ミスではなく、意識的に外したのだ。アネモネも理解しているらしく。不機嫌そうに赤い目を細めていた。

アネモネ「ああ、凍えてしまうよ。お前との熱く激しい一夜を楽しみたいというのに。仕方ないなぁ…温めてやろう」
熱を感じる。だが、どこに逃げるべきか。わからなかった。それは上空から迫っていた。いくつもの岩の塊。人間に逃れる術など無い、空からの災厄…メテオ。ステンドグラスは無残に砕け散り。美しかった大聖堂は半壊した。床と天井だった瓦礫の下から、紺色のシスター服を纏った肢体が見え。粉塵で薄汚れ。乱れた金の髪は破片で切ったのか、血に濡れている。気を失っているのか。それとも…。吸血鬼は無言で何もせず、ただマリーを見つめていた。

アネモネ「…」

マリー「………うっ。……なんてことを…」
運良く瓦礫の隙間に倒れていたマリーは気をつけながら這い出る。その姿に吸血鬼は笑う。

アネモネ「はははっ。本気でやらぬと死んでしまうぞ」

マリー「…」
からかうような言葉だが、その声音には一切の友愛はなく。ひどく残酷だ。…息苦しい。胸の痛みに折れそうな己がいることに気付く。

マリー(まだ…まだ足りないというのなら)
マリーは立ち上がる。鞭の柄を強く握りしめ。青い目に決意を灯していた。その顔に吸血鬼は心から嬉しそうに微笑んだ。やっと思いが通じ合った恋人を見るように…。マリーは懐から瓶を取り出し。空中へ放り投げ、鞭の先で打つ。砕けた瓶から溢れ出る水の塊に、赤い炎の光が反射する中。マリーが聖なる言葉を紡ぐと。空中を漂っていた液体は、大粒の球となって広がり、燃える大聖堂に降り注いだ。浄化の雨を浴びた吸血鬼は呻き声を上げる…。見ると、霧に変じた白い影があった。かつての戦いと同じだ。いや、あの時の続きだろうか。十字架を胸に、マリーは全力を解放する。眩しい聖なるオーラが全身から溢れ。光の柱となり、周辺を照らす。吹き消されるように、吸血鬼の霧化が解け。元の姿に戻ったアネモネは苦しそうに膝をついた。

 


一歩一歩、マリーは崩れた足場を進んでいく。吸血鬼はひどく疲弊した様子で、動く気配がない。聖水を浴び、聖なる光をまともに受けたダメージは大きかったのだろう。伏せたアネモネの視界にブーツが映り。次の瞬間には蹴られていた。呆気ないほど吸血鬼の身体は地面に転がる。投げ出された手足は力無く、起き上がろうとする気配がなかった。マリーはアネモネの前に立っていた。濡れた髪は目元を隠し。青い目は見えない。頬を伝う雫はまるで涙のように見える。…その手には杭が握られていた。

アネモネ「…」
僅かに唇が開いたが、すぐに閉ざし。吸血鬼は眠るように目蓋を閉じた。マリーも無言のまま、近づくとアネモネの上に被さり。動かないように左手で身体を抑え、杭を持った右手を振り上げた。衝撃の後に飛び散る…金の欠片。それは千切れたペンダントの鎖だ。杭は吸血鬼の首の隣に刺さっていた。目蓋を開き、吸血鬼は眼前にある友の顔を見つめた。

アネモネ「……お前の勝ちだ」

マリー「勝ちとか負けとか…そんなことはどうでもいい…っ!!」

アネモネ「…すまなかった」

マリー「お前は私の友だ。昔から今も、これからも…!」

アネモネ「マリーは本当に、人間だなぁ…。わかった…共に行ってやろう。本当にあの世界に繋がっているか。不確定だったしな…。だが、これだけは約束してほしい。もし夢から醒めた先が地獄なら……私を救ってほしい」

マリー「っ…。約束する。たとえ夢で忘れようが、私はお前を探す。それだけは絶対に変わらない」
吸血鬼が言ったことの意味することは…死かもしれない。それでも、やっと聞けた友の本音に答えるべきだと…マリーはそう思ったのだ。

アネモネ「約束だぞ」
微笑み。安堵したように吸血鬼は目蓋を閉じ…眠った。

 


マリーはアネモネを背負って歩いていた。戦いによって壊れた天井はいつ落下するか不安定で、あのまま寝かせるのは危険だと判断したのだ。しかし…

マリー(重い…。いつもの姿だったら、運びやすかったんだが。起きる気配がないな…)

ドラクル「手伝いますよ」

マリー「…っ!?」
驚くマリーの視線の先に、それは当然のような顔をして立っていた。穏やかな微笑を浮かべた老紳士…ドラクルだ。ジルと共に自宅に帰ったと思っていたが…もしかして、ずっと居たのだろうか?

マリー「…こちら側を持ってほしい」
一瞬、反射的に拒否の言葉が出そうになったが。脱出を優先した方が良いと考え。マリーは協力を受け入れた。

ドラクル「はい。わかりました。あ、その前に回収したい物がありまして…少しお待ちください」
そう言った老紳士は、先刻までアネモネが倒れていた場所から…鎖が切れて落ちていた深紅の石が付いたペンダントを拾い上げていた。

マリー「…。そのペンダント。見た覚えがあるんだ。このイルヴァの地に来る前の、ずっと昔に」

ドラクル「それは驚きでございますね。これはエリザさんが洞窟で拾った原石を、職人に依頼して加工してもらったペンダントなんですよ。それにしても、良かったです。すぐ見つかる場所にあって」

マリー「確かにそうだな…。エリザに謝っておかないとな」
話が途切れた。これ以上、聞いても答えはしないだろう。雑談を交わす間柄でもない。しかし、ずっと気になっている。ドラクルから感じる嫌な気配。安心も信頼もしてはいけない忌避。それなりに生きていれば、馬が合わない人間と出会うことはある。けれど、ドラクルへの嫌悪感は殺意と言ってもいいほどだ。

マリー(この…どうしても許せない感覚…。あの吸血鬼への怒りを思い出す)
愛する婚約者を穢し、バンパイアに変えた男。あんなにも激しい憎悪を抱いたのは初めてだった。そんな因縁はないはずなのに、こいつは…滅ぼさなければいけないと、勘が告げるのだ。ドラクルはそんなマリーの殺意に気付いているだろうが、その顔に浮かぶのはいつもどおりの笑みだった。

ドラクル「…マリーさん。”向こうでも”、長い付き合いになると良いですね」

マリー「…。そうなることを願う」

 

 

ペンを置き。吸血鬼は疲れたように、小さく息を吐く。気を失って、3日ほど経っていたらしいが…意外と覚えているものだ。

アネモネ「こうなるとはな…うぐぅっ、いたた…身体がまだ痛いである。容赦なく殴りおって……いや、それほど本気でやったのか」
マリーも3日ほど眠っていたらしい。聖なる力を顕現し、広範囲で不浄なる者を滅する大技は、魔力も生命力もかなり消費する最終手段だったようだ。

アネモネ「…もう少し書くか」

・アネモネ
筋力:360 → 575
耐久:378 → 553
器用:387 → 602
感覚:433 → 657
習得:727 → 976
意思:421 → 698
魔力:368 → 595
魅力:427 → 659
速度:200 → 265

幸運のエヘカトル戦後のステータスになります。餓鬼浴ハーブ食でかなり上がっているなぁ。根気が必要になるけど。スキル欄も最終回なので、記載しました。…もったいない精神で、BPがけっこう余っていますね。下落ポで稼げるけど、マテリアル採取めんどうだからな。

・ドラクル
筋力:805 → 1144
耐久:807 → 1159
器用:925 → 1241
感覚:842 → 1190
習得:921 → 1259
意思:797 → 1157
魔力:920 → 1229
魅力:813 → 1162
速度:303 → 487

1000超えましたね。これが神を強化ポーション無しで殴れるステータスか…。まだ中の神を倒すには難しいようだが。

・エリザ
筋力:806 → 1151
耐久:810 → 1152
器用:918 → 1238
感覚:837 → 1174
習得:926 → 1236
意思:796 → 1126
魔力:930 → 1230
魅力:803 → 1135
速度:292 → 466

・ジル
筋力:799 → 1276
耐久:810 → 1161
器用:907 → 1228
感覚:834 → 1180
習得:927 → 1238
意思:799 → 1148
魔力:934 → 1269
魅力:801 → 1147
速度:297 → 465

・マリー
筋力:576 → 1095
耐久:583 → 1113
器用:601 → 1106
感覚:610 → 1123
習得:638 → 1122
意思:580 → 1089
魔力:593 → 1106
魅力:578 → 1098
速度:542 → 746

思わず本当に?確認したくなるほどの成長ぶりだ。このまま育てたら、1番ステータスが高くなったりしてね。

 


アネモネ「…この記録も最後か」
物思いに耽るように、吸血鬼は目蓋を閉じ。座り心地が良い書斎の椅子に深々と沈む。脳裏に浮かぶイルヴァの地での記憶。チンピラ顔のエレア…愛らしいコウモリ…黒い老紳士…

ドラクル「お嬢様」

アネモネ「…。驚いたぞ。ちょうどお前のことを思い浮かべていた」

ドラクル「ふふっ。それは大変嬉しいでございますね。お食事の準備が終わりましたので、知らせに来たのですよ」

アネモネ「…いらぬ。このまま休むつもりだ」

ドラクル「おや、そうでございますか。エリザさんが張り切って台所に行っていたのですが…そう伝えてきますね」

アネモネ「ものすごく腹が減った。今行くぞ」

 


食堂に入ると、鼻孔を刺激する良い匂いが漂っていた。テーブルクロスの上で並べられた皿には、脂が滴る肉、サクサクな焼きたてパン、優しい味がしそうなスープ、そして…アネモネの好物であるカレーなど、様々な料理が並べられていた。

アネモネ「おお、美味そうであるな」

エリザ「うふふっ。そうでしょう。私とガーンナさん…と、ジルも頑張りましたのよ」

アネモネ「なんと…!?」

ジル「マスターのお口に合うといいのですけど」

アネモネ「凄いぞ。よくやったな」

ジル「うぇひひっ」

エリザ(ファイアボルドで調理しようとするから大変でしたわね…なんとか食材を切らせることに留めることが出来ましたわ)
吸血鬼が知らないところで事件が起こっていたらしいが…無事に完成した料理たちは素晴らしく美味かった。

アネモネ「…。ああ、そうだ。大事な話があるのだ。マリーと話し合った結果…我はこのイルヴァの地から去る。2度と帰ってこないかもしれない。…そなたたちはどうする?」

エリザ「…は?」

ジル「はわ?」

エリザ「その…どういう話でそうなりましたの?」

アネモネ「実はな…マリーが言うとおりにしろと、我を組み敷き…」

マリー「ま、待て…!そうなったのはお前のせいで…ああ、何か誤解を招く。違うんだ、その…」

エリザ「…わかりましたわ。後でちゃんと聞き出すから、マリーは落ち着いてちょうだい。……イルヴァから去るという話は冗談ではないみたいから、答えを言いますわよ。私も行きますわ」

アネモネ「…そうか」

ジル「僕も!マスターに一生ついていきますよ!」

アネモネ「ふふっ。嬉しいぞ」

ドラクル「お嬢様。私は永遠にお傍にいます」

アネモネ「うむ、そうだろうな。今後ともよろしく頼むぞ。……ああ、そうだ。エリザよ。これを受け取ってくれないか?」

エリザ「はい?」

 


それは3種アーティファクト合成によって、強化された結婚指輪だ。

エリザ「………」

アネモネ「…」
こっそり作ったものの、ずっと渡せなかった。…かつて、愛する妻がいた。彼女は病弱で、子供を望むのは難しく。戦場へ向かい、数ヶ月も帰ってこないアネモネを待つことが多かった。亡き妻は幸せだったか…知るすべは無い。こんな自分に資格はあるのだろうか。エリザを幸せに出来るだろうか。そう、迷っていた。マリーと殺し合いをするまでは。

アネモネ(エリザの顔が思い浮かび…後悔したのだ。…我が思っている以上に、未練があったのだ)

エリザ「…ばか。こんなムードもない。食卓でプロポーズするなんて……うふふっ。もう指輪は返さないですわよ。絶対に」

アネモネ「結婚してくれるか?」

エリザ「はい」
頬を赤く染め、返事をするエリザは心底幸せそうで。アネモネに顔を寄せ。結婚の証として、口づけをしようとして…止めた。

エリザ「あ…やっぱり私、雰囲気があるところでやりたいですわ。ねえ、あなた。式は猫の大聖堂でしましょう」

アネモネ「ぬ?そこは廃墟だぞ」

エリザ「え?」

アネモネ「マリーと話し合った結果。完膚なきまで無惨に破壊されたのだ」

エリザ「なんで…?」

マリー「すまない…。だが、ほとんど破壊したのはアネモネだぞ」

エリザ「私の…猫の大聖堂を……!」

アネモネ「いや、その…我の話をぬわああああああああああっ!?」
恐ろしい速さで頬を掴まれたアネモネは逃げられなかった。いつもどおりに吸血鬼の城に悲鳴が響くのであった。

 


エントランスの中央に置かれたルーンから出現する、青白い炎が揺らめくような奇妙な光。それはムーンゲートと呼ばれる。異世界、あるいは別の時空に移動できるエネルギー物質だ。このムーンゲートはアネモネが手を加えた特殊なもので、行き先は…イルヴァではない別世界だ。

アネモネ「…」
通ったら、2度と戻れないかもしれない。吸血鬼はもう一度行く覚悟があるのか、確認しようとし…止めた。視界に映る、皆の顔には迷いも不安も無く。そんな質問は無粋だと、そう思えたのだ。

アネモネ「行くぞ。我の愛しき下僕共よ」
アネモネの一言と共に一行は歩み出し。ムーンゲートの中へ姿を消した。

 

 


……
………
吸血鬼は覚醒し。薄っすらと目蓋を開いた。そこは真っ暗な闇が広がり。長い間、誰も来てないような…澱んだ空気が漂っていた。起き上がって、周りを見ると。石の壁にいくつもの穴が作られており。そこに朽ちた屍が横たわっていた。この場所は…カタコンベだろうか?…なぜ、こんな所で独りで眠っていたのだろう。そう不思議に思える。すぐ傍に居たはずだ。とても大事な存在が…。霞みかかっていた頭がはっきりしていき、艶やかな緑髪の少女の顔が思い浮かぶ。エリザ…それが彼女の名前。そう呼んでいたのだ。あの世界で、イルヴァで。……転移が不安定で、離れ離れになってしまったのか…それとも…?
暗い海に沈んでいくような喪失感が吸血鬼を襲う。息苦しい。急に笑い出したくなる。身体の内側から衝動が暴れる。無意識に首を掴む指の爪が食い込んだ所で…細い鎖に気付く。深紅の石が付いたペンダント。エリザからの贈り物だ。吸血鬼は安心したように、一息つこうとしたが…亡き妻の形見にそっくりだったことを思い出した。
やはり夢だと思え、再びやってくる絶望に為す術もなく。吸血鬼は諦めるように力無く、後ろから倒れた。すると、懐から古びた本が飛び出してきた。何度も手に取ったのか。表紙はひび割れており。縁もボロボロになっている。この本は、アネモネが旅の思い出を書き続けていた旅行記だ。…きっと中身を見れば、わかるはずだ。吸血鬼は恐る恐る手を伸ばし…

 

…見上げると、暗い空だ。
月は雲に覆い隠され。人々は蝋燭の火を消して寝静まり、森からは獣たちの息づかいがよく聞こえる。そんな朧月夜に、容赦なく骸を踏みつぶす音が響く。寂れた墓所から、黒い人影が躍り出る。ふわりと広がるマントは踊るようで…。刹那、雲の合間から月の光が地上を照らし、その影を露わにした。白銀の髪を揺らす幼き少女。その愛らしい顔に浮かぶのは、傲慢なほど自信に満ちた笑いだった。

アネモネ「…良い月だ」

 

 

 

長かった。軽い気持ちではじめたプレイ日記がここまで長くなるなんて。あと、創作要素が強くなったりね。最初の頃と変わったよ。本当に。書きたいと思ったことを書けたと思います。しかし、エヘカトルの中の神討伐やノヴィスワールドの更新と心残りがありますので。番外編という感じで、書く予定です。そして、アネモネたちをElinで動かすのも有りかな~と思っているので。イルヴァの地にはすぐ帰ってくるかも?
我ながら好き放題に書いたものを最後まで読んで頂き、心から感謝しています。本当にありがとうございました!

 

コメント