クレイモア吸血鬼の旅行記83 ノヴィスワールド-妹の呼び声 前編-



マリー「ルミエストは美しい街並みで、眺めるだけで楽しいが…どこを見ても全裸の女性の像があって、ちょっと落ち着かないな」

アネモネ「それは風の女神の麗しい裸身を見事に彫刻した芸術品であるぞ。…そのように思えるとは、えっちであるな」

マリー「お前にそんなことを言われたくない!」
そう騒がしく会話する吸血鬼とバンパイアハンターの前に陰気な顔をした男が歩み寄ってきた。
レントン「ああ…君か。何年ぶりになるかは覚えていないが、相変わらず元気そうだな」

マリー「知り合いか?」

アネモネ「…? ……ぬー…?」 紫の瞳を細め、しばし魔術師の男を見つめる吸血鬼。「…ビーリビリと言いながら本を破る男だったか?」
ぼんやりと数年前にレイチェルの絵本を渡した魔術士のことを思い出してきたが、名前が出てこなかった。だがレントンは気にする様子もなく、一方的に語り始める。
レントン「…私は……私には、よく分からなくなってしまった。何もかもが…ノースティリス北方に広がる雪原地帯には行ったことがあるか?そう”妹”たちの住む館があると云われるあの場所だよ。君が集めてくれた絵本のルーツを辿ろうと各地を巡っていた私は、あの場所で…。あの”城”の扉の向こうで—————…」
そこで起こったことを思い出してか、白い顔はますます青ざめ。興奮した様子で息が荒くなっていく。
レントン「———いや、やめておこう。…君も好奇心で足を踏み入れるような真似は控える事だ。さもなくば私のように、死よりも恐ろしいものを垣間見る事になるぞ」
そう言うとレントンは両手で頭を抱え、妹…妹とは一体…と、ブツブツと呟いている。異様な言動に居心地悪さを感じ、2人は少し離れた場所へ移動した。


マリー「妹って、どういうことなのかわからないんだが… この世界での経験から言葉どおりの意味じゃないと、わかるけど」

アネモネ「……説明が面倒だ。そうだな、見れば良い。妹たちが住まう北の地へ向かうぞ」

マリー「え?ルミエストを観光したら、そろそろ帰るとエリザたちに連絡しただろう。せめて遅くなると、もう一度伝書を送ってから…」

アネモネ「ふはははははははっ!行くぞー、マリー!」
吸血鬼は楽しそうに真紅のマントを翻し、聞く耳を持たずに飛んでいった。マリーは一瞬呆気にとらわれたが、すぐに慌てて走り出した。



アネモネ「やはり混沌の城であるか。なら、あやつが見たものはここに封じられた強大な存在…」 そう呟いて、吸血鬼は背後にいるバンパイアハンターに振り向いた。「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」

マリー「私はマリーなんだが?」

アネモネ「そういう怪談だ。妹も…そういうものに近いといえば近いな。殴ると増殖し、木から生え、畑から収穫でき、壁から現れ、釣れることもある」

マリー「本当にどういう存在なんだ…」

「オニイチャ~ン」

不気味な回廊に響く可憐な少女の声。マリーは唾を飲み、おそろおそろ聞こえた方を見た—————


「オニイチャン♪」

それは黒い煙に見えた。だが、よく見ると幼い少女のような形をしている。リボンで結んだツインテール、うさぎの耳のように可愛らしく跳ねている。その顔には…3つの穴があった。位置から両目と口だと思う。それはただただ黒く虚ろで、底が見えない井戸のように昏く、見ていると飲み込まれそうな…そんな恐怖を感じた。

マリー「………。これが妹…なのか…?」

アネモネ「そうだ。この少女が★妹の日記を読むと血が繋がらない妹になる”妹”だ。…我が城にいる妹は、護衛依頼を受けたら住みついた、であるが」

マリー「城にいる…って、たまに見かける緑髪の女の子のことか?…まったく違うぞっ!?」

アネモネ「違う…?確かに透けているが、城にいる妹と同じく愛らしい少女であるぞ。どこが違うのだ?」
吸血鬼は冗談を言っている様子はなく、真面目に話しているようだ。困惑したマリーはもう一度、妹だという目の前の存在を見てみるが…やはり黒い不気味な影にしか見えない。
「カエッテキタカエッテキタ…オニイチャン…ミツケタヨミツケタヨ……」
くすくすと可憐な笑い声が響く、何度も何度も繰り返し響き渡る声に、まるで何人もの少女が笑っているかのように錯覚する。

アネモネ「これ以上、我の妹を増やす気はない。ミンチにするぞ!」



マリー「うう…妹を見ると、眩暈がする…。アネモネ、どうす…」

アネモネ「ふははは、ふはーはははははははっ!美しい赤だ、よく燃える!」 高らかに哄笑する吸血鬼の周りには真っ赤な炎が渦巻いていた。

マリー「な、何をして…あっつっ!?おい、私まで燃やしているぞっ!」

アネモネ「そなたの火炎耐性は完璧だ、問題ない。この前は魔法をまったく使えなかったからな。今回は思い存分にファイアボルトを使うことにしたのだ!ぬわあああああああっアッツイのであるうううううううううっ!!」 やけにテンションが高い吸血鬼は炎を纏いながら飛び上がり、妹へ突撃直下していった。

マリー「帰っていいか」


ボールは最愛の妹《レイチェル》に命中し 燃やし尽くした。「ドウシテ…」レイチェルの幻影は霧散した…。

アネモネ「ふふっ、燃えたであろう?」

マリー「私は冷えきっているよ」

アネモネ「なら、ラーナで身体を温めに行くか。山頂にある観光地でな、そこにある天然温泉に浸かりながら眺める景色は素晴らしく。浴衣という異国の服を借りて散策するのは趣きがあって楽しいぞ」

マリー「へえ、それは行ってみたい… って、また寄り道する気か。いい加減に帰らないと、エリザが心配しているだろう」

アネモネ「わかったわかった。帰還するとしよう…ぬ?」
吸血鬼は怪訝そうに眉を寄せて、懐に手を入れる。すると、覚えがない1冊の本が出てきた。無意識に拾ったのか?そう思いながら捲ると、荘厳な墓標が描かれていた。寂しい気分になる風景だ…。別のページを見てみたが、他は白紙だった。本を閉じ、改めて表紙を見ると”第5巻目のレイチェルの絵本“という題名が書かれている。

アネモネ「4巻しか存在しないというレイチェルの絵本に5巻目?それが突然の我の手元にあるとは…面白いというより気味が悪いな。調べに行くぞ。このまま帰ったら、我が城の蔵書から妹が飛び出してきそうだ」

マリー「壁から妹のこんがり肉が出てきたら、嫌だなぁ…」

 

*RP会話ではドロップしたかのように書いていますが、第5巻目のレイチェル絵本はガロクのところで音楽チケット交換するアイテムです。

 


前回と比べて柔らかく、耐性も完璧じゃないので、ひたすら火遊びしました。

 


絵本について詳しいだろうレントンのもとに再び訪れる吸血鬼たち。経緯を話していると…急にレントンは落ち着きなく左右を見つめた。まるで誰かに声をかけられたように。
レントン「これは…この声には…聞き覚えが……。まさか…お前なのか…。グレース…」 彼がそう呟くと、手の平の上にあった絵本の表紙が捲れ上がり、開かれたページには雪原に霞む城の挿絵が描かれていた。吸血鬼とバンパイアハンターが見た時には無かった絵だ。

アネモネ「ここは…先ほど、熱き戦いをした場所だな。マリー、もう一度に調べに行くぞ!」

エリザ「もう一度、どこに行きますの?」


背後から伸びるたおやかな女の手が吸血鬼の胸元と腰に絡みつく。驚きに顔を見ようとしたが、思っていたより強い力で抱きしめられていて動けない。

アネモネ「エリザ…?なぜ、ここに…いや、自宅(古城の隣)からルミエストまで歩いてきたのか…!?」

エリザ「あなたたちの帰りを待っていて、暇で暇でしたから…カレーを作りましたの。たまたま材料があって、作りたいと思ったから…別に、あなたの好物だから作ったわけじゃないの」 少女の声はひどく淡々としており、冷たい。

アネモネ「そ、それはさぞかし素晴らしい…」

エリザ「もう無いですわ。帰るって連絡してから何日経ったと思っていますの? ……そうじゃない。私が言いたいのは……不安でしたのよ」 剣呑とした空気が消え、弱々しい雰囲気に変わった少女はアネモネだけに聞こえるように耳元で囁く。「マリーは優しく温かな人ですけど、バンパイアハンターですわ。彼女と出かけたきり消息不明になっているなんて…待っている時間が長いほど、嫌なことを考えてしまいますの」

アネモネ「…すまなかった、エリザ。我は…ぬわっ!?いひゃ、いたたたたたたたたっ!」 よく伸びる餅があった。それは吸血鬼の白く柔らかな頬だ。少女は不機嫌そうな半眼で、黙々とこねくりまわしていたが…ふと少し笑うように目を細めて、手を止めた。

エリザ「ふぅ…これで許してあげますわ。今は」

マリー(いつ見ても… もちもち伸びてて楽しそうだ)

アネモネ「マリー、そんな目で我を見るな。頬がヒリヒリするのだぞ。我の麗しくも愛らしい顔に優しくせよ」

エリザ「それで、どこへ向かうところでしたの?」

アネモネ「妹の城だ。そこで兄を求める妹と一戦を交えたのだが…どうやら隠された謎があるようだ。ふふ、より強力な妹と戦えるかもしれん。増殖するだろうか、すると良いなー 部屋を埋め尽くす強き妹との戦い…楽しみである」

エリザ「…ごめんなさい。そんな悪夢のような場所は遠慮しますわ」

マリー「私もそう思う」

アネモネ「なぜである…!?」

 

6/17追記
レントンさんの名前をレイトンに間違えていたのを修正。すまない、私まで曖昧に覚えていたわ。