クレイモア吸血鬼の旅行記84 ノヴィスワールド-妹の呼び声 後編-

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』


グレース「あはは。もうっ大袈裟なんだから、兄さんは…」
レントン「何が大袈裟なことがあるか。私の生徒たちも皆口々に褒めていたよ。流石、私の妹だと。お前の名前は今にルミエスト中に知れ渡るさ。将来、この街の画壇を背負って立つ、新進気鋭の画家としてね」
グレース「………」
心から称賛する兄の笑顔を、妹はどこか陰りがある目で見つめた。

若くして魔術師ギルドでの地位を得、将来を嘱望される兄は、私にとって幼いころからの憧れだった。
彼の周りを囲む景色は、全てが眩しく宝石のように煌めいていて、それが彼自身の放つ強烈な光によってもたらされるものだと理解するのに、そう長い時間はかからなかった。
私はある日、不意に恐くなった。いつか私という人間も、その光の中に埋もれ消え失せてしまうのではないかと。自分自身の光すら見失い、兄を飾る煌めきの一部になってしまうのではないかと…
その前に、私自身が周囲に光を分け与える存在にならなければ。”レントンの妹”ではなく”グレース”として。
———それは、私が画家を目指すただのきっかけにしか過ぎなかったけれど、しかし心に湧き出る情熱の源泉である事には違いはなかった。
私がレイチェルという絵本作家の創り出す世界に魅せられ、憧景と羨望を抱くのは1年後のこと。
彼女のようにありたい、私も彼女のように自らの手で美しいものを生み出したい…。その欲求は私の進む道となり、いつしか生きる意味そのものになった…。

だけど知っていた…。私、本当は知っていたの…。いくら手を伸ばしたところで…。
私がその場所に届くことは、決してないんだって。

 


グレース「…ねえ、兄さん。私、兄さんみたいになりたかった…」
そう静かに呟かれた言葉にレントンは不思議そうな顔をした。やっぱり兄にはわからないんだ…。
グレース「…急にごめんね。だけど魔術ギルドの顧問魔術師レントンは、今でも私の誇りなの。余りにも眩しすぎて、見ている方が少し困ってしまうくらい…」

だって、あなたの進む道は。背中越しに私が目にするその行き先には、いつだって機械と称賛が溢れていたから。否が応もなく、気付かされてしまうのだ。自分自身の才覚と、その限界に…。
ねえ、兄さん、其処から見えるのはどんな景色ですか。
他人には無い何かを持っているということは、きっとそれだけで特別なことなのでしょうね。私はあなたが羨ましいです。
兄さん…。あなたはとうとう気付きませんでしたね。私という人間の人生につきまとう仄暗い影の正体に。
ずっと近くに居てくれたのに。ずっと近くに居てくれたから。
私は、ソレが欲しかった。画家として、皆が期待してくれる自分でありたかった。あなたには当たり前すぎて決して理解できないことだったのでしょう。
それでも、“その景色”を目指すことは、私にとって生きる価値の全てだったのです…。

レントン「…」 吐き出された妹の言葉に、どう返したらわからないまま…兄は何も言えなかった。彼女が冷たい湖に飛び込むまで。それからも、ずっと———

 



アネモネ「あの男が呟いていたグレースという名は20年前ほどに亡くなった実の妹のことだ。14歳の若さで…生きていれば34歳ぐらいか。一見地味だが、整った顔立ちだったな。熟した食べ頃になっていただろうに、惜しいのである…」

マリー「そしたら、お前を鞭でしばく。…まるで見たことがあるような言い方だな?」

アネモネ「マリーには美しい蝶が見えなかったのか?本に絵が描かれた時、長い黒髪の乙女も現れたのだ。あの男に向かって、兄さん…兄さん…と呼びかけていたが、あの男は呆然とするばかりで動かぬ様子。ならば、我が向かうことにしたのだ」

エリザ「強い妹と戦ってみたい欲もあったのでしょう」

アネモネ「はははははっ!当然だ。我は闘争も乙女の願いも、すべてを満たすぞ!」

 



エリザ「おとおとで満たされていますわね…」

アネモネ「ぬわーーっ!?おとおとの侵略がここまで来ておるとは…」

マリー「おとおとって、一体なんなんだ…?」

アネモネ「この地では弟のことをそう呼ぶ風習があるらしい。…一応言っておくが、こやつらは血が繋がらない弟ではないぞ」

マリー「そ、そんな勘違いはしないぞ!」(ちょっとだけ、そう思ったが)

 


増えた後に撮りはじめたので途中から。どれくらい画面が埋まるのだろうと、殴り続けていたら3人でも殲滅できてしまった。

 


今度こそずっと一緒に居ようね、お兄ちゃん…♪
奈落へ向かっているような、深い階層へ降りた一行の前に満面の笑みを浮かべ、闇の中を浮遊する奇妙な童女が現れた。

マリー(妹…?この前と違って黒い影じゃなく女の子に見えるが…なんだ?この恐ろしい威圧感は)
妹をよく見ると…その周りにいくつもの”顔”があることにマリーは気づいた。男、女…子供から老人と、多数の人魂が妹を囲むように追従している。その表情は恍惚、恐怖、無気力と…様々だ。

エリザ「あまり見つめない方がいいですわよ。ねうねう状態になってしまいますわ…」

マリー「善処しよう…」

アネモネ「我はお兄ちゃんではない!お姉ちゃんである!」

マリー「お前はまったく平気そうだな」



マリー「あれ…さっきと姿が変わって…?増えてる…!?」

アネモネ「妹は増えると言ったであろう」

マリー「…。…あれこれ考えるのは得意じゃないんだ。襲うというのなら…私は滅するだけだ!」 バンパイアハンターは斧を片手に妹の群れへ走り出した。

アネモネ「元気であるな~ 我はゆるりと後方で魔法を放とう。エリザは回復と隙があったら首狩りを頼むぞ」

エリザ「うふふっ。のんびりすぎて、首が飛ばされても文句は聞けませんわよ!」


妹たちをミンチにしていくと、階段の奥から緑と赤色が混ざり合った巨体が降りてきた。目も鼻も口もない無貌から、まるで涙のように黒い液体を流し、歪に捻じれた手足を揺らしながら、吸血鬼たちに近づいていく。

アネモネ「アイヴァン……。…ここの妹たちを生み出しているのはこやつか。倒すぞ」

マリー(一瞬、あいつの空気が変わったような…。アイヴァンと呟いた、あの怪物は一体…?)
そう疑問に思いながら、バンパイアハンターは《アイヴァンの夢幻》を見つめてしまった。はじめは恐怖…無我夢中に武器を振るうと衝撃が走った。腹の亀裂から蛆虫が湧き出ている。それは目の前の怪物なのか、それとも己自身からか。混濁した意識に呼びかける声を聞いた気がする。それは誰なのか?黒髪の男がこちらを見ている…冷たい目ではなく、昔のように友として…。



アネモネ「マリー、マリー…!敵は眼前だ、寝るにはまだ早いぞ。それとも我が炎であっつあつに焼かれて、バンパイアハンターのこんがり肉になりたいのか?」

マリー「それは…食べたくないな」

アネモネ「無様な踊りは終わったか。エリザにあまり見るなと言われていただろうに…」

エリザ「うふ…うふふふふふふ…」 少女は狂気状態になっている。

アネモネ「大丈夫か、エリザ。…少し休ませてくる」

マリー「おい、私との対応があまりにも違うぞ」

アネモネ「当然だ」


*ブシュッ* エリザは《アイヴァンの夢幻》の首をちょんぎり 殺した。 「ヒドイ…こんなのお兄ちゃんじゃない!…コレもいらないよ。………つまらない絵」邪悪な気配が遠ざかっていく…。

エリザ「黒い影が消えていきますわ…終わったみたいね」

マリー「エリザにも黒い影に見えていたんだな…。あいつは愛らしい妹とか言っていたから、私だけおかしいのかと思っていたよ」

エリザ「あのひとは大雑把なところがありますから…同じく黒い影に見えていたと思いますわよ。マリーをまた振り回して、混乱させてしまったみたいですわね。ごめんなさい」

マリー「いや、私はまだまだこの世界のことを知らないことが多いから…」

エリザ「”妹”は理解しなくていいですわよ。妹の日記を30冊読んで正気を失った冒険者いるって話がありますから」

マリー「妹を30人も…!?なぜ、そんなことを…!」

アネモネ「妹を愛するお兄ちゃんなのだろう」

 


戦闘中だというのになぜか2人共食事する行動してて、???となったものだ。ネタにしようと思ったが、なんだか話のテンポが悪くなったのでやめた。
最愛の妹《レイチェル》は単体だと楽だが、複数いるとなかなか時間がかかるね。

 



エリザ「あの…この絵に覚えがあるかしら?」 少女は妹が置いていった風景画をレントンに見せた。
レントン「それは…。そうか、グレースが最後に描き上げた…」 レントンは差し出された絵を受け取ろうとして…止めた。「…いや、このまま君が持っていてくれ。私には彼女の絵を受け取る資格などない…。笑ってしまうだろう…。呪う神など初めから居はしなかったのだ。妹が———グレースが本当に目指していたものは…」
視界が滲み、レントンは驚いた。涙を流すなんて、いつぶりなんだろう。
レントン「彼女は私を恨んだだろうか。それすらも今となっては分からない。ただ言えるのは、これで死に逃げる道すらも閉ざされてしまったという事だけだ。持つ者と持たざる者、背を追う者と追われる者…。妹の憧れた夢の先に待つ未来が空虚な死だけだったなどと…そんな現実を認めてしまうのはあまりにも惨い」
ふと思い出す妹との記憶が胸を締め付ける。静かな声で、兄さん…と呼ぶグレース。真剣に悩ましげに、けれど生き生きとキャンバスに向き合う姿。…無感情な昏い顔のまま凍った湖に沈む彼女の最後。
レントン「結局私には生き続ける道しか残されていないのだ…。そこに価値などなくとも、歩くしかない。それが持たざる者から持つにかせられた十字架なのだから。君にはお礼を言うべきなのだろう。気付きたくはなかったが、これは恐らく、気付かなければならない事だった。どうか、謝礼を受け取って欲しい」
久しぶりに表情筋を動かし、きごちなく控えめな笑みを浮かべたレントンは、報酬を渡して去っていった。


アネモネ「さて、素晴らしい絵が手に入った。飾る場所を考えるとしよう」

マリー「…」(あの時、私が…また違った行動していれば、あいつは…)

アネモネ「…なにやら思うところがあるようだが、あの男は20年も悩み続けた。機会などいくらでもあった。生き続けると選んだのは、あの男の意思だ。今回の事が無くても、別の事が起こっても、結局生きようとしたかもしれん。我らが関わったから…など、自惚れた考えだ」

マリー「そう、だな……。うわっ!?」 柔らかく大きなものをふたつ持ち上げられ、揉まれる。バンパイアハンターは悲鳴を上げた。「な、なにをするんだー!」

アネモネ「うっとうしい顔されて、気分が沈んだのである。なので、これは癒しだ」

マリー「自分の乳でも揉め!」

アネモネ「変態か」

エリザ「あ・な・た。何をしていますの…!」

アネモネ「ハッ…しまっ」

 



マリー「私は芸術に詳しくないが…静かで落ち着く感じで、良い絵だよな」

エリザ「淡いタッチで描かれた水彩絵が綺麗ね、私も好きですわ。…ところで、気になっていたのですけど、その指輪」 少女が目を細めて見つめる先はバンパイアハンターの指。そこには金の指輪が輝いていた。

マリー「あ、いや…これは」(なぜ私が浮気相手かのような心境に…!)

エリザ「やっぱり、あのひとの指輪ね。そう…信用しているのね。良かったですわ。あのひと、友人が少ないから」

マリー(ひどい言われようだ。間違ってないけど…)

エリザ「すぐ仲良くなって、正直羨ましいですわ。…でも、私にはかっこつけて、なかなか素直に話してくれないから…。だから、あのひとが困っていたら助けてちょうだいね」

マリー「…任せてくれ」 そう答えたバンパイハンターの脳裏に”自惚れた考えだ”という吸血鬼の言葉が浮かんだ。(どう言われようが…私はお前も友であると、そう思っているんだ)
扉が開き、赤くなった頬を濡れタオルで押さえている吸血鬼が現れた。

アネモネ「はぁ…まだヒリヒリするぞ……ぬ?グレースの絵を鑑賞していたのか」

エリザ「ええ、あなたがろくでなしでお友達がいない話もしていましたわ」

アネモネ「ひどいのである!」

 

今回からアイコンを追加してみた。誰が話しているのかわかりやすくなった気がする。

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