クレイモア吸血鬼の旅行記82 ノヴィスワールド-袖振り合うも多生の縁-



アネモネ「ぬーう?…気のせいだと思えたが、この廃墟に吸血鬼が隠れているな」

マリー「本当か…?」
そう聞いたバンパイアハンターは青い目を鋭く細める。穏やかな雰囲気は消え、絶対に得物を逃がさないという殺意が溢れるマリーに、吸血鬼は再びその殺気を己に向けて欲しいと心躍った。その緊迫した空気に反応したのか、1匹の痩せた蝙蝠が朽ちた教会の中を飛び回った。

アネモネ「おお、可哀想に。満足に食事ができておらぬ様子だ。そなたに怯えて飛び回って、いずれ地に落ちてしまいそうだ」

マリー「あ、いや。そんなつもりは… 蝙蝠くん、何か食べるかい?」(蝙蝠って、何食べるんだろ…)
言葉を理解したのか、痩せた蝙蝠はマリーのもとへ弱った様子で羽ばたき、近づいてくる。あと少しところで、痩せた蝙蝠は口を大きく開けた。小さな身体には似合わない鋭く長い牙は、真っ直ぐと白く柔らかなマリーの首筋を狙う。


そう驚いた様子で呟く少女は景品として引き取られるという経緯で、アネモネの下僕(バイト)になったアナスタシアだ。お父様と呼ばれた痩せた蝙蝠は空中で硬直し、逃げるように向きを変え飛ぼうとしたが、それより速く移動したアナスタシアに鷲掴みにされた。
お父様?「ぎゃーっ!?何をする、我が娘、アナスタシアっ!!」
アナスタシア「何する、じゃないわよっ!?あなたこそ何のつもりよ!家に借金を残して高跳びしたかと思えば、こんなところで蝙蝠の真似事なんて…!」 両翼を掴んでいるところから、ミシミシと軋む音が聞こえてきた。
お父様?「ま、待て…!話せば分かる!」
アナスタシア「うるさい…!説明もなく屋敷を奪われ、周りに誰も居なくなって…これまでどれだけ心細かったと思っているの!?ケーキもザッハトルテも無い、道端に落ちている生麺と小麦粉をすすって生きる毎日。挙句、遊園地の景品として売り飛ばされたのよ…!闇の王の姫である筈のこの私が…!」
お父様?「おお…哀れなる我が娘、アナスタシアよ…。だが我とて、これまで何もせずにこのような姿に身をやつし過ごしてきたわけではない。借金返済の目途がようやく付いたのだ。安心するがよい、一族再興の日も近いぞ!」
アナスタシア「お、お父様…」 吸血姫は感動したように目を潤ませる。
お父様?「…なので、相談なのだが少しだけ我に金を貸してくれぬか。明日のスロット代がどうしても足りぬのだ。なぁに心配するな、倍にして返す」

アネモネ「…」

マリー「ええー…」
外野から見ていた吸血鬼とバンパイアハンターは呆れた視線を痩せた蝙蝠に向け。アナスタシアはその細腕に羽を千切らんばかりの力を込めた。可憐な顔は一切の感情が消えた無だ。
お父様?「ぎゃーっ!?痛い痛いっ!落ち着け、我が娘アナスタシアよっ!トータルでは勝ってる!トータルでは勝ってるから!」
アナスタシア「働けーーーーっ!!!」

 


娘の説教で心を入れ替えた?痩せた蝙蝠は自ら”闇の大公ブラムス”と名乗り、吸血鬼たちに挨拶した。
ブラムス「感謝の証として、お主には我が知る呪法の幾つかを授けよう。我も大量に魔力を消費するので、タダという訳にはいかんのだが…そうだな、お主が持つ翡翠の魔金属と引き換えというのはどうだろう。我は借金が返済でき、お主は冒険に有効な力を手中に出来る。まさに一石二鳥という奴だ」

アネモネ「良い考えだと思うが…我は貴様と同じくバンパイア・ロードであるぞ」
ブラムス「な、なにっ!?まさかの隣のご婦人も…」

マリー「私はただの人間だ。まあ、バンパイアハンターだが」
ブラムス「ぶるあああああああああああっ!?」

 

アナスタシア「…はぁ。お父様もこれで少しは更生してくれると良いのだけれど…」

アネモネ「ようやく再会できたというのに、別れてしまって良いのか?」
アナスタシア「…そ、それは…あなたにはこの闇の王姫の力が必要でしょう?ふふふ、仕方ないわね、最後までついて行ってあげるわ!」(給料が良くて、個室の寝床あって、1日に3食おやつ付き…それに美味い。俗っぽくないわ!これは利用しているのよ!)

アネモネ「そうか。そなたの好きのようにせよ。…だが、あまり寂しくさせるなよ」
アナスタシア「…たまに会ってあげるわ」

 



アネモネ「アナスタシアは聞いていたとおりの境遇でな、我が下僕(バイト)になった娘だ。普段は倉庫整理の仕事させておるから…そなたとは会った事が無かったか? この街に訪れた時から微弱ながらアナスタシアに似た魔力を感じ、伝書蝙蝠で連絡しておいたのだ」

マリー「それはつまり…お前は蝙蝠がアナスタシアの父だと気付いていたのか。彼女が出てくるのが少しでも遅かったら、私は鞭を振るうところだったのだぞ…!」

アネモネ「バンパイア・ロードは不死身だ。多少の傷ぐらい、阿呆には良い薬になったであろう。結局、娘が与えていたが」
怒れる吸血姫によって、ほぼ羽が千切れているように見えたが…しばらくすると元通りに再生していた。確かに大きなダメージを与えようが平気なのかもしれない。

アネモネ「その鞭が我らに与えられるのは、しばしの眠りだけだ。だから、安心せよ」 吸血鬼は嫌味を含んだ笑みを浮かべた。

マリー「…お前はこの鞭は無力だと、私を煽っているのだろう。…この鞭にバンパイア・ロードを完全に滅ぼす力が無いことは知っているさ」
バンパイアハンターは吸血鬼を見つめ、一度口を閉ざす。

マリー「私は滅びを望んでない。だが、復活は許さない。同じ過ちを繰り返すなど愚か者がすることだ、終わりは必要なことだ。と、…古い友人が言っていた。私は二度と目覚めることがない安息を祈る。その眠りが穏やかなものであれと」

アネモネ「そんなもの…」
挑発に乗らないことへの苛立ちと共に、マリーの言葉に妙な感覚がした。抑えきれないほどの激しい怒り、疲れ果てた虚しい絶望、今の己自身の感情とは別の何かが一瞬混ざり合い。正気を失いそうな混沌が吸血鬼の胸の中に渦巻いた。

マリー「アネモネ?」

アネモネ「……眠くなるような退屈な話だな。帰るぞ」 狩人の目に興奮した気持ちはどこかに消え、けれど戦いを求める火は燻っている。「…いや、少し寄り道をするか」

 



アネモネ「猫と戯れようとしたが…随分と模様替えをしたな」

マリー「前に来た時と比べて混沌の城が海近くに移動しているように見えたのだが…ここは本当に混沌の城《獣》なのか?」

アネモネ「違うであろうな。ここは混沌の神の暇つぶしの場だ。気まぐれに別のものへ変わっていることがあるらしい」

マリー「ということは中央にある恐ろしい気配がする巨象はやはり飾りじゃないんだな…」
そう話していると、普段聞くことがない、石がこすりあう耳障りな音が響いた。巨象を見ると、きごちない動作で大剣を振り上げていた。その動きは重々しく拳を振り下ろすゴーレムに似ている。

アネモネ「はははははっ!これは面白いな、額に文字が刻まれてないようだが、どのように動いて…」

マリー「お前って、こういうものにホント楽しそうな顔をするよな」

アネモネ「知るということは素晴らしいことだ。そうすれば、どう動くべきか瞬時に行動できる。わからないままというのは疲れるだけだぞ」
理解に至るまで苦労があるんだが…と、マリーは内心そう思った。

アネモネ「あの大剣は★アーティファクトのようだな、欲しい。そして、素晴らしい耐性を持っているようだな…ふむ、殴ろう」

マリー「知識とはまったく関係ない作戦じゃないか!」



マリー「うわ…白くてネバネバしたものが大量に…動きづらい」

アネモネ(恐ろしく無自覚だ)「接近すると移動を阻害されるな。マリー、そのまま引きつけてくれ。追加属性攻撃のダメージは通らぬが、雷に付与される麻痺は効いているようだ」

マリー「素早く動けば、なんとか糸を振り払えるが…またこういう役回りか」

アネモネ「愛らしくも麗しい幼女を守れて誇らしいであろう」

マリー「小憎たらしいの間違いじゃないか」


その衝撃にバンパイアハンターの身体がよろけた。切りつけられた石の刃は硬く重く、まるで鈍器だ。意識が朦朧とする…マリーはなんとか体勢を立て直そうとしたが、その僅かな隙にすら情け容赦ない巨象は、大剣を振り下ろした。

マリー「ぐっ…回復を…」

アネモネ「待て。朦朧状態で魔法を」
吸血鬼の言葉を最後まで聞かずにマリーは治癒の雨を唱えたが、舌がもつれ、うまく詠唱が出来なかった。正しく発動できず、行き場を失った魔力の渦はマリーを飲み込み、彼女の姿を消した。

アネモネ「……。…ランダムテレポートなら、少し離れたところにいるか。うむ、あのアホに紐を付けておいて良かった」
吸血鬼は努めて冷静に呟きながら、こちらに標的を定め、近づいてくる巨象の動きを見ながら、距離を保とうする。

アネモネ(射撃で足を止めたら、接近され、白くてネバネバなものにまみれ。おまけに石の大剣で殴られてクラクラするサービス付きだ。それに接近テレポート持ちのようだ。今使われたら、面倒だな…。攻撃魔法が効けば、もう少し牽制できるかもしれないが…現状、必要なのは……我に必要?)
そう思考する吸血鬼の瞳に淡く輝く月光のような髪が映った。

マリー「すまない…うっかりしていた」

アネモネ「ははは、まだまだ常識知らずのようだな。後で、じっくりと夜が明けるまで教えてやる。…嫌そうな顔をするな。今は戦いに集中せよ。こやつを倒すには…そなたが必要だ」

マリー「あ、ああ。私は全力でやるぞ!」 照れた様子で頬を少し赤く染め、バンパイアハンターは気を引き締めるように斧の柄を強く握った。


マリーは巨象兵《アラカツマ》を切り払い 殺した。 巨象兵は、守り神として再び眠りに就いた。

マリー「大きいが、よく見えると変わった形だな。片刃で、サーベルに似ているけど…違う。刃の部分に…波みたいな模様が?見れば見るほど面白いな」 パンバイアハンターは興味深そうに床に転がった大剣を見ている。

アネモネ「刀と呼ばれる異国の武器だ。…こやつは異国の戦士を象った像かもしれんな」

マリー「身に付けている鎧も、不思議な形だなぁ…」

アネモネ「そなたは本当に戦技、武具、うまい肉、にはやる気を出すよな」

マリー「う… お前の話はちゃんと聞いているよ。少しだけ忘れるだけで」

アネモネ「まあよい。興味を抱くのは良いことだ。…そうだ、どこにあるのかまったく情報がない異国を探してみないか。我とそなたで」

マリー「私が…?エリザたちは?」

アネモネ「下僕共も当然連れて行くぞ。今は混沌としているノースティリスを旅しているが…事が終わったら、また別の地へ旅行しようと考えているのだ」

マリー「素敵なお誘いだが、私は…」(迷ってるのか…もう離れた方が良いかもしれないな)

アネモネ「…そういえば、今回と前回で頑張った褒美をくれてなかったな。これをやろう」 そう言うと、吸血鬼は金色に輝く小さいものをマリーに投げ渡した。受け取ったものを見て、バンパイアハンターは困惑した。それは金の指輪だった。細やかな美しい装飾がされている。

アネモネ「結婚指輪ではないぞ。鍵というのが正しいな。それがあればいつでも我が城の扉は開かれる。客人としても、狩人としても、な」
それはいつでも吸血鬼のもとを離れても、戻ってきても、殺しに来ても良いという言葉だ。

マリー「…大事にするよ。我が友よ」

 


アネモネとマリーならサクッと倒せると考えていたが、思っていたより硬くて驚いた。公式混沌3神を倒した後のデータで挑んだ時は苦労しなかったはずなんだが…戦闘メンバーの違いか。ドラクルが高速射撃でヘイトを取り、回復はエリザが専念し、ジルは魔力の集積を連続魔法して削る火力役(魔法耐性だけが低い) HPが僅かになれば、エリザが首狩りする。で、楽に倒せた印象が残っていたのかもしれない。