ミア「ふえぇぇぇっ!?きっも!なんですか、この血みどろスパゲッティは」
デイビッド「ミンチ肉の方が近くないっすか?」
ルシアン「食べ物に例えるのはやめようか…。もうイスの偉大なる種族が出てくるとはな。確か狂気の眼差し、という」
アドニス「……ねう」
ルシアン「アドニス?」
アドニス「ねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねう」
ルシアン「うわー!?SAN値減ってるーっ!?」
スウォーム!イスの偉大なる種族に触られた。アドニスは悲痛な叫び声をあげた。ルシアンはイスの偉大なる種族の攻撃を避けた。ベアトリクスはイスの偉大なる種族に触られた。ベアトリクスは悲痛な叫び声をあげた。
ベアトリクス「くぅっ…!大丈夫…まだ戦える」
アドニス「うう……すごく痛い。…なんだこのブラッドソーセージの化け物は」
ルシアン「良かった~正気に…いや、この状況は全然よくねえっ!!」
ルシアンはイスの偉大なる種族を殴って殺した。
ルシアン「う~ん…手にぐにゃ~ってした変な感触が残るぜ」
アドニス「流石だな、ルシアン。…ぬ?イスの偉大なる種族の死体が残っているな」
そう呟いた少年はバーベキューセットを取り出した。その鉄板に乗るのは採りたて新鮮!踊る肉!血が滴る…!イスの偉大なる種族の死体だ。
ルシアン「え?料理するの?」
アドニス「みんな、激戦でお腹空いているだろう。今、料理するから。楽しみにしてくれ」
ベアトリクス「確かにお腹が鳴るほど、空いたな…。いただくとするよ」
ルシアン(猛者だ…!でもまあ、ここは…)「あ、俺。すげえ死ぬほど腹減ったなー」
アドニス「それほどに…!?」
ベアトリクス「それは大変だ。ルシアンくんに譲るよ。…頑張ってね」
デイビッド「アニキ…!アッシはいつまでもアニキの生き様を忘れませんぜ!」
ルシアン(南無三…!!)
覚悟を決め、ルシアンは名状しがたいイスの偉大なる種族のピリ辛炒めを口にした…!
ルシアン「ぐわーっ!?胃に!胃に!…って、あれ?意外と味はイケる…?」
アドニス「ちゃんと味見したんだ。当たり前だろう」
ルシアン「いや、そういう意味じゃ…けど、確かに坊ちゃんの料理スキルは上がったな~。前は失敗料理を食べて餓死したのが嘘のようだぜ」
アドニス「それは忘れてくれ…」
ミア「そーですよー!ボクが知るドニちゃんの料理は素晴らしいんですよー」
ミア「人肉があんなにも美味しかったなんて…ボク、新しい世界に目覚めてしまいましたよ~」
アドニス「良かった。人間は素晴らしいからな」
ルシアン「…」
アドニス「どうしたんだルシアン?ああ、そういえば”まだ”人肉好きじゃなかったな。大丈夫だ、そのうち人肉の良さがわかる料理を作ってやる」
ルシアン「いいや、俺は遠慮するよ」
ベアトリクス「ルシアンくん、付き合ってくれないかな?」
ルシアン「…っ!!!!」
アドニス「…!」
あたたかな陽気を感じる、ある日の中庭。どこかミステリアスな雰囲気を纏う魔術師に呼び出されたルシアンは、彼女が放った一言に電撃が走り。”たまたま”その現場に居合わせたアドニスたちは固唾を飲んだ。
ルシアン(マジか…)
わりと…いや、けっこう嬉しい。まだまだ知り合ったばかりの関係だが、ここから熟していく果実のように知っていくものかもしれない。
ルシアン「…いいぜ」
ベアトリクス「良かった。君しか頼めなくてね…それじゃあ、行くよ!」
ルシアン「え?…ええっ!?」
何かおかしいような?そんなズレに気付き、ルシアンは尋ねようとしたが、目の前の彼女は既に、雰囲気が一変していた。いつも手に持っている杖を構えたのだ。魔力を込める補助的な道具ではなく、近接で戦う武器として。杖の先の枝木のような装飾はひとつに絡み合い、鋭く、一点を突く矛と変わる。まるで槍だ。そう理解する頭とは別に、ルシアンの身体は無意識に動く。振り落とされた槍を腕でガードし。片足に柄を引っ掛け、横へ蹴りつける。カラン。と、あっけなく武器はベアトリクスの手から転がり落ちた。
ベアトリクス「うーん。リーチが長い武器は強いというけど…扱えていないんじゃ。全然、ダメだね」
ルシアン「それで、ベアさん。なぜ急にこんなことをしたのかな…?」
ベアトリクス「驚かせたね、ごめん。…私も近接で戦いたいと思ってね。その練習に手加減なしで”付き合って”ほしくて…不意打ちを、ね。力量の違いを思い知らされたけど」
ルシアン「な、なんだぁ…そうだったのか~…いや待て、ベアさんが近接?」
ベアトリクス「うん。いつも1人で前衛を頑張ってるひとの背中を見てたら、私も頑張ってみたいと思ってね。幸い魔法戦士の適正があるし」
ルシアン「それって……誰の事ですか?」
ベアトリクス「内緒」
ミア「…急に喧嘩(?)をはじめたら、仲良しな雰囲気で…。つまりどういうことですか??」
デイビッド「くくく。ミア嬢にもそのうち分かると思いやすよ」
アドニス「…」
ベアトリクス「ということで、戦乙女に転職したよ」
ルシアン「詠唱と槍に成長ボーナスがあり。接近できない状況でも槍を投擲して、戦うことも出来る…うん、ベアさんがやりたい戦闘スタイルに合ってると思うぜ」
デイビッド「よくお似合いですぜ。姐さん」
ミア「わあ~。お姉さま、かっこいい~。ボクもドニちゃんをもっと守れるように職業を変えるべきでしょうか」
ベアトリクス「参考にされるのは嬉しいけど…私はこう決断するまで、けっこう悩んだんだ。だから、ミアくんも自分の中で納得するやり方を探してごらん」
ミア「そうなんですか?…う~~~ん……そう、ですね。ボクも、ボクなりに考えます!」
アドニス(己に合ったやり方を見つける、か…)
よく考えたら、PTバランスが悪い→ベアの戦闘スタイルを変えよう→こういう構成にしたい→CNPC作成に至る。今までのベアを育成するべきだろうと、かなり悩んだけど。ライトニングボルトを習得させた魔法使いタイプって、ジルと被っているし。カスタム魔法の雷の矢を使わせたい欲が強かった。しかし、ファンネルみたいに矢が追撃してくるイメージで、連続魔法持ちにした結果。混沌の瞳も矢系だった。やりすぎた感がある。
~戦場~
爆音が轟き、怒声と悲鳴が響く、そこはカミカゼ特攻隊とパルミア軍の命が散っていく戦場。そんな荒んだ場所に、1人の少年の姿があった。
アドニス(ここには天敵である爆発系モンスターが大量に出てくるという…俺の力だけで戦えば、何か活路を見つけられるかもしれない)
ミア「なーんか埃っぽくて、くっさいところですね~。でも、ボク。頑張りますよー!」
アドニス「ぬ?」
聞き覚えがある明るい声が聞こえる方向を見ると、空中に浮かぶ小さな半妖精の姿があった。アドニスはしばし驚いた様子で、ミアを見つめ。現実か確かめるように、指でツンと黄緑色の頭を撫でた。
ミア「ふぁ~、なでなでして~♥」
アドニス「ミア、どうしてここに?俺は1人で来たはずなんだが?」
ミア「ドニちゃんがいるところにボクはいるのですよー!」
アドニス「そ、そうなのか…?それはともかく…ここは危険な場所となる。俺から離れるな、ミア」
ミア「はーいでーす!」
ミア「わわっ!カミカゼイークじゃないですかー!?爆発するから、嫌いですー!」
アドニス「大丈夫だ。ファイアボルトで燃やせば…」
アドニス「後から現れた奴を起爆させることが出来る。こうすれば、接近されることがだいぶ減るだろう」
ミア「ど派手ですね!どんどん燃やしましょう、燃やし尽くしましょう!ドニちゃん♪」
アドニス「うむ。どんどん燃やすぞ」
まるで地獄の業火のように燃える地上。少年は緊張した面持ちで、額から汗を流す。それは熱さではなく、冷や汗だ。目の前に迫るのは地雷侍と爆弾岩。その2体が通る場所には誘爆させられる炎は無く。真っ直ぐと少年に接近する。
アドニス(このままでは…爆発に巻き込まれる範囲に入ってしまう。なんとか爆発させないと)
少年は後ろに下がりながら、炎の衝撃の杖を振るい…
爆弾岩は爆発した。爆風は地雷侍に命中し爆弾岩はバラバラになった。地雷侍は誘爆した。爆風はアドニスに命中した。アドニスは悲痛な叫び声をあげた。爆風がミアに命中した。ミアは苦痛にもだえた。地雷侍はバラバラになった。
アドニス「…な、なんとか耐えた……。ギリギリ爆弾岩の範囲に入らなかったみたいだ」
ミア「ふええ、ボクもドニちゃんも瀕死の虫の息ですよ~。あっ…!?いつの間にか、ドニちゃんに貰った魔法書が燃えちゃってる……ごめんなさい…」
アドニス「魔法書なんて、すぐ新しいのが手に入る。気にしないでくれ」
ミア「ドニちゃん…!ボク、幻影の矢だけでもガンガンやりますよー!」
ボルトは爆弾岩に命中し軽い傷を負わせた。ボルトはパルミア特殊部隊のボブダブイに命中し燃やし尽くした。
アドニス「あ」
ミア「どうしたのですか?」
アドニス「敵対してないひとをやってしまった…ごめんなさい」
ミア「それは気の毒ですね…。でも、時に身体に爆弾を巻いてカチコミするのは最高の瞬間であると。デーちゃんが言っていましたし。実は本望かもしれませんよ!」
アドニス「それは何かおかしいと思う…」
アドニス「ふぅ、危なかった…」
2体並んだ爆弾岩とその近くにいる半妖精。少年は慌てて、紐で引き寄せる。その直後。凄まじい爆音が響いた。爆弾岩が爆発し、もう一体も誘爆したのだ。
ミア「ドニちゃんありあちちちちありがあっちちちちちちち」
アドニス「ミア!?早くそこから移動するんだ!」
ミア「ふええ…あっちもこっちもアチチです。改めて、ドニちゃんありがとうです!」
アドニス「俺もミアを守れて嬉しいよ」
ミア「えへへ。ドニちゃんったら、ボクを殺しに来てます~」
アドニス「殺し…?」
パルミア特殊部隊「…」(微笑ましい2人だ。私もこの戦いが終わったら…)
爆風はパルミア特殊部隊のニルツィンに命中しミンチにした。
パルミア特殊部隊(やっぱりダメだったよ…!!)
アドニス(残っていた人が…。ここまで来たことを無駄にしたくない。俺たちは最後まで耐えきってみせる…!)
この先生き残れなかったか…
それは長いようで…唐突に終わりを告げた。パルミア軍の撤退は終わり、もう戦う必要は無いという、伝令。鼓膜を震わす爆音と、死と隣り合わせの緊張に、疲弊してきた少年は少し安堵感を覚えた。やっと帰れるのだと。
アドニス「……少しだけ、自爆攻撃に慣れた気がする。爆弾岩はまだ耐えられる自信は無いが」
ミア(ドニちゃん。爆発を克服しようとして、1人で挑もうとしたのですね…)「大丈夫ですよ。今日の事は素晴らしい経験になったはずです!放火!大炎上!忘れらない日になったと思いますー!」
アドニス「そのとおりだが。何か物騒なような…?」
~ポート・カプール~
脱出路の地下道を抜けると、そこは波の音が聞こえる港町ポート・カプールだ。先ほどまで立っていた荒野が嘘のようで、闇を照らす電灯の光に彩られた港町は、いつもと違う美しさがあった。
ミア「なんだか落ち着きますね~。波の音も心地良いです」
アドニス「…そうだな。せっかくだから、少し散歩しようか?」
ミア「男と女が2人きりで仲良く過ごす…つまりデートってことですか!」
アドニス「うん?まあ、そうだな」(ルシアンも大体そんなことを言っていた気がする…)
ミア「やったー!ドニちゃんとデートですー!本によれば…クレープを片手に腕組んで歩くのが常識っぽいのでやりましょう!」
アドニス「そうなのか?まだお店が開いているといいな」
そんなゆるい会話を広げる少年と半妖精。その光景は呑気で平和なもので。すっかり先ほどの戦いなど忘れているかのようだ。…本当に忘れているかもしれないが。そんな2人を歓迎するように、街からは人々の喧騒と穏やかな波音が響いた。
そういえば未クリアだったので、アドニスとミアだけで挑んでみました。なかなかギリギリな戦いで楽しかった…。またこういう縛りでクエストクリアを目指すのも良いかもしれない。
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