クレイモア吸血鬼の旅行記95 ノヴィスワールド-賢者ウィルルの憂鬱 前編-

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』

それは突然、脳内に直接語りかけた女神が始まりであった…


マリー「え、誰?」
ビスバテン「あれー?間違い電話でした。すいま…って、あなた!踊る月光アネモネさんのお仲間じゃないですか。じゃあ、いっか。ルル…賢者さんとその従者が現在何やら厄介な状況に陥っているみたいなのですよ」

マリー「賢者…?ルル…??よくわからないが、一体何が…?」
ビスバテン「従者のレムリアさんが誘拐されて、賢者さんはそれを追いかけて、消息不明になった。と、知人から相談を受けましてね。…本当は、定命の者へのこういった干渉はあまりよろしくないんですけど、今回は私の元身内のようなのでー。特例として連絡した訳ですねー。や、間違えた時はどうしようと思ったけど。ちゃんと話を聞いてくれる優しい人で良かったー」
恋の女神はちょっぴり、前回アネモネにスルーされたことを根に持っているようだ。
???「ねぇ、ビスバテン!それは良いから、早く私の声もその人間の心象と繋げてよ」
ビスバテン「はいはい。分かっていますよー。すいません、どうしても事件の捜索に協力したいって知人が言ってましてね。ですけど、色々と事情があって大っぴらに動けない立場なので…。じゃーん!私が魂の依り代を用意しました。今からそちらに送りますねー」

マリー「え、送る…?うわあああっ!?」

 



???「…」

マリー「…」

アネモネ「…マリー。疲れているのか?」 吸血鬼はわりと心配した声音でそう尋ねた。寝室に入ってきたマリーがジュアの抱き枕を抱いている姿を見つめて。

マリー「そう思っているなら、無茶苦茶な行動は控えてほしい。エリザから聞いたぞ。この前、女の子と森で散歩してメテオを降らせたと」

アネモネ「我は冒険者の心得を教えただけだ。…まあ、少々遊んだが。それで?ジュアの抱き枕を持ちながら、説教にし来たのか」

ジュア人形「うう…。急いでルル…ウィルルの追いかけて、レムリアの行方を探さなきゃいけないのに…ああもう、他に依り代が無かったの~~!!話が進まないじゃないの!」 苛々とした若い女の声が響く。どうやらジュアの抱き枕から発せられているようだ。

アネモネ「…何やらおかしなことが起こっているようだな」

マリー「そうなんだ…」

 

ジュア人形にアイコン付きなのは、私が信者だからです。せっかくなので、素材として置いておく。

 



アネモネ「ミンチにすればいいじゃないか」
薄暗い洞窟の中でそう囁く黒髪の男。ジュア人形の神的な能力でウィルルの痕跡を辿り、神々の休戦地にあった転移装置でこの場所に到着した一行だが、奥の入り口には見張りの男が立っており。アネモネの幼女姿に「子供が来るところじゃねぇ帰れ帰れ」と、追い返されてしまった。渋々、吸血鬼は男の姿に変えていたが…明らかに機嫌が悪そうだ。

ジュア人形「ミン…本気で言ってる!?だめだめ、絶対だめだよ。そんな無暗に生き物を殺生するなんて…!恨まれても知らないよ?中に入れても、まともに相手されなくなるかもしれないし。ルル…いやウィルルたちの情報を集めるのを苦労すると思うよ」

マリー「…私も彼女と同じ考えだ。見張りの男になんとか入れてくれないか説得したらどうだ?」

アネモネ「冗談だ。生真面目な連中だな。説得か…先ほど子供は帰れと言われたが、今の美しい我の姿と交渉スキルなら、何も問題だろう。いざとなったら、マリーのお色気♥でどうにかしてもらうか」

マリー「ななな、何を言っているんだっ!!」

ジュア人形「はわわっ、破廉恥!破廉恥!」

 

~アルガーナ奴隷市場~


マリー「入り口で奴隷商の一団を見かけたが…ここまで大規模とはな。…許さないことだ」

ジュア人形「神々の休戦地から、こんな場所に繋がるなんて悪趣味だわ…。…街の人々から感じる、この禍々しい気配……フィアマンテ?奴はレムリアを奴隷に仕立てて、この市場で身も心も弄んで…あ、名前言ってもわからないか。《姦淫のフィアマンテ》、天の座から追放された邪神よ」

アネモネ「邪神…?いや、そんなことはどうでもいい。黒天使の奴隷か。確かに良い商品になるであろうな。…燃やすか」

マリー「また物騒なことを…。やっと穏便に侵入できたのに」

アネモネ「我のケツが狙われた平和だがな」
見張りの男に交渉スキルと魅力で説得した結果…男はアネモネに熱い視線を送った。それから、吸血鬼はひどくテンションが低かった。

マリー「お前は…その。かっこいいぞ!背はひょろ長くて…顔が好きだ!同性に1人や、2人、惚れられても仕方ない」

アネモネ「マリー…気持ちは嬉しいが、そなたには妻子がおるだろう」

マリー「ちが、違うっ!そんなつもりは!!」

アネモネ「ふ、はははははは!とても笑えたぞ。さて、ウィルルたちの手がかりを探すぞ」

マリー「お前なぁ!」

 



マリー「それで、なぜ娼館に…!?」

アネモネ「こういったところは身も心も油断するものだからな。1番良い女から話を聞く。外で待ってもいいんだぞ。…しばらく帰ってこないかもしれないが」

マリー「私はお前を逃がさない…!」

アネモネ「おお、怖い怖い。では、腕を組め。そなたは客を連れてきたフリをしろ」

マリー「娼婦に見えるのだろうか…」

アネモネ「えっちな恰好をしている奴が何を言っているのだ」 吸血鬼の視線の先には、大きさを強調するような胸元。長いスカートだが、歩くたびにスリットから黒いガータベルトを付けた美しい曲線の足が覗いていた。

マリー「お前が着せたんだろうがっ!!」

アネモネ(確かにそうだが、その後も着続けているのはマリーの意思なのだが…?)「いいから、行くぞ」 吸血鬼は有無を言わせず、マリーの腕を引いた。

マリー「あ、ああ…」

ジュア人形(なんだか私までドキドキしちゃう…)

 


アネモネ「やはり奥の部屋であろうな。ふふ、どんな美女がおるだろう~」

娼館主の老婆は、おもむろに服を脱ぎ始めた。

アネモネ「…」 吸血鬼は時が止まったように固まった。

マリー「ご、ご婦人。誤解なんです!私たちはその、話を聞きに来ただけで…!!」
イルタール「なんじゃ、怖気づいたのか。…ほっほ、冗談ざます。お前様がこの奴隷市場に来たことは知っておりましたぞ、踊れ月光アネモネ」

ジュア人形「ど、どうしてアネモネのこと知っているの…。お婆さん、一体何者?」
イルタール「おや、喋る人形とはこれまた珍しい…。なに、お婆はちょっとばかり、この奴隷市場では顔が利くざます。何かと有名人ですからの、お前様は」

アネモネ「…ハッ!そうだ。我こそが最強無敵の超絶美形きゅ」

マリー「少し前に市場に運ばれてきた黒天使と、その後を追ってきた女魔術師の行方を教えてほしい。どうしても彼女たちを助けたい」
イルタール「ええよ」

ジュア人形「いいの!?…いや、隠し立てしても始まらないから白状するけど、私たち、奴隷市場の為政者と敵対するかもしれないんだよ?」
イルタール「別に儂はフィアマンテの味方という訳ではないからのぉ…。長いこと、娼館を営んでいるが、これまで見てきた奴隷たちの末路は、それはもう惨いものざます。フィアマンテの支配にも、この街の狂気にも、もう飽いた…。そろそろ風穴を開けるきっかけが欲しくなったんじゃ。だから、この娼館に仇をなさない限りはお前様たちに協力するざます。なんなりとお聞きなさい」

アネモネ「そっちの姦淫はいくらでも貫いてくれよう。…マリー睨むな。ただの言葉遊びであろう」
イルタール「ほっほ、お前様のご立派なロンギヌスなら、儂も大歓迎ざますよ」

アネモネ「…そんなことより、彼女たちの行方について知っていることを教えてくれぬか」
イルタール「お前様方が探している2人は、ここから西にある【誘蛾の館】におる。黒天使のお嬢さんは捕らえられ、それを聞いた女魔術師は単身、館の中に乗り込んだそうじゃ」

マリー「誘蛾の館…街の奥に見える大きな建物か。やけに警備の数が多かったが…随分と無茶するなぁ」
イルタール「フィアマンテは狡猾で、恐ろしい呪術の使い手ざます。その女魔術師、危ないんじゃないかえ?」

ジュア人形「…ま、まさかぁ。彼女だって相当の凄腕なのよ、お婆ちゃん。早々遅れを取ったりしないわよ」
イルタール「ふむ…だったら良いがの…。ここから西に抜けた先には広大な砂漠が広がっているざます。その区画のどこかに、館の内部へと繋がる隠し通路があり、フィアマンテの部下たちが出入りしているという噂を何度か耳にしておる」

ジュア人形「じゃあ、その通路を使えば…!」
イルタール「じゃが、正確な場所までは分からん。砂漠地帯は危険な場所だが、それでも行くかね?当てもなく彷徨い、命を落とすことになるやもしれませんぞ」

アネモネ「こいつらの目を見たか?1人はぬいぐるみだが…そのような言葉では諦めんぞ」
イルタール「良いでしょう。西の門の見張り手に、お前様たちを通すよう伝えておくざます。くれぐれもお気を付けなされよ」

 

イルタールさん(20)なんだけど。まあ、よくあることか。

 

~砂漠~


マリー「想像以上に…広いな……はぁ…ぜぇぁ…暑い」

アネモネ「水分補給はしたか?水は貴重品だが…日射病になったら、元も子もない。遠慮するな」

マリー「すまない……そういうアネモネは?飲んでいる姿を見てない気がするんだが」

アネモネ「お優しいことだが、無用なものだ。我にとっては血以外の食事はただの娯楽だ。生き物のように栄養を摂取するわけではないのだ。我のことより己を気にしろ。…人間は病や疲弊にあっけなく死ぬからな」

マリー「はは、私は子供の頃から頑丈で健康なことが長所なんだ。そう簡単に死なないさ」

アネモネ「…今はな」

マリー「うん?」 小さく呟かれた吸血鬼の言葉をマリーは聞き取れなかった。

ジュア人形「…」(一瞬、すごく寂しそうな顔をしてたなぁ…。どこか危うさがある人だけど…ううん、定命に口出しするのは…)

アネモネ「さて、前方に随分とでかいトカゲがおるな。火まで吹いているぞ。我らを見逃す気はまったくないと見える」

マリー「多頭ドラゴンをトカゲ呼ばわりして、戦意に満ちた眼差しを向けている奴がいたら、逃がさないだろうな」

アネモネ「はははっ!それはそなたのことでは?楽しく暴れて、カラカラに干からびた阿呆が転がっていたら、我が優しく口移しで飲ませてやるぞ~」

マリー「やめろっ!!」

 

最新版ノヴィスワールドで追加されたレアモンスタークエスト。そのひとつである『ヒュドラ』。大砂漠の右下にいるね。既存のソーダ海『ダゴン』や『金鬼猫』などもレアモンスターに設定されているようだ。倒すとポイントが増えていき、ガロクのところで様々なものと交換できます。”あるイベント”で勝つための必須スキルを入手できるので…頑張って集めよう!

 

 

洞窟を発見し。隠し通路があるかもしれないと奥へ奥へ進むと、開けた場所に出た。大海原のような一面の砂。まるでアリ地獄のような大穴への傾斜があり。落ちないように、気をつけて歩いていると…地震のように地面が揺れ、それが現れた———


アネモネ「マリー、見てみろ。猛る大蛇が激しく狭い穴を出たり入ったりして、暴れているぞ」

マリー「お前…そろそろ、そういうのはいい加減にしろ」

アネモネ「我は見たままな光景について言っただけなのだが、そなたは何を想像したのだ。えっちであるな」

マリー「~~~っ!!!」

アネモネ「さて、このままでは我らは砂の大渦に飲み込まれてしまうだろう。耐性はなかなか高い、そなたの魔法…アイスボルトではあまりダメージを与えられないとアドバイスしておこう」

マリー「……。おお、神よ。私にギャルのパンティーを使えと…!」

ジュア人形「そ、そんなこと聞かれても困るよぅ…」

 

プレイヤーとボスNPCの移動範囲を狭くし。テレポート持ちボスの下に同じ色の魔法陣を置くことによって、まるで地面に潜って別の場所から姿を現したかのように演出していて、視覚的になかなか楽しかった。

 

 

難なく大蛇退治するアネモネとマリー。だが、疲弊したマリーの顔色を見た吸血鬼は休むぞ、と言いくるめ。一時キャンプすることになった一行だが————

ちょうどいいタイミングだと思ったのか。ジュア人形は語り始めた。今から遠い遠い、幾星霜を降る前の過去の時代…互いを疎み、憎悪する2柱の神の話を…

1人は、風を纏い、大いなる翼で空を駆ける若き女神。もう1人は、最も旧き神性として地中に棲まい、呪言と快楽を司る蛇の女神。
容貌も、気性も、趣向も、住まう場所さえも…。
全てが相容れない女神たちは事あるごとに衝突し、彼女らがぶつかるたび、空は荒れ、地は裂けたと云います。
取り分け、下界で生きる定命の種に対する立場の違いが、2人の確執を決定的なものにしました。
風の女神は言いました。「彼の者らは我が子…我が血を分けた写し身である。許しなくその命を摘む事は我が身に弓引く事と同義と思え」
蛇の女神は答えました。「これは異なことを。ヒトとは享楽。我が退屈と退廃を満たすための道具なり。玩具をどう扱おうと他者にとやかく云われる道理はない」
ヒトに肩入れし、たびたび盟約を違える風の女神と、ヒトを弄び、戯れに虐殺を繰り返す蛇の女神は、2柱とも当時の神々の爪弾き者でした。けれど2人の様子を見て、無の主神は微笑むのです。


「愛と欲望。例え理解しあえなくとも、その加護はイルヴァにそれぞれの形で繁栄をもたらすだろう。風に蛇よ…君たちは互いに手を取り合う事は出来なくても、互いに尊重する事を知らねばならない」
優しく、穏やかで、しかしどこか狂った凪ぐような声音で。拒絶というものを知らず、全てを受容する大いなる神は、幾度も両者に言い聞かせます。
彼を師と仰ぎ慕う風の女神は勿論、蛇の女神も表立って反発することはしませんでした。彼女たちは小競り合いと危うい均衡を保ちながら、それでも3つもの文明紀を共存という形で歩み続けたのです。

…あの忌まわしい出来事が起こるまでは。


そればかりではありません。大地には”厄災”が創り出した腐泥の竜が、”強欲”の率いる蟲の群れが押し寄せ、次々とか弱き定命の種を飲み込んでいきます。人の世に最も大きな国を構える、偉大な王が言いました。「暮れなずむこの世界にもはや未来は無い」と…。
それは人類が史上例を見なかった未曾有の脅威。世界を滅ぼす絶望の象徴。…負の神々の顕現でした。人と神に仇なし、自らの復権を望む彼らの奸計により、神々の盟主———無の男神は、深い深い眠りへと誘われ、タガの外れた蛇の女神に、夜を統べる神が歩み寄ります。「自らの望みに従え」と。
告げられたその一言の甘言が、蛇の女神のこれまでの歩み全てを狂わせたのです。負の神へと寝返り、自らを”姦淫”の邪神と名乗った荒ぶる魔性はついに、自らが引いた一線も踏み越えてしまいました。風の女神の寵愛する天使を捕らえ、恐ろしい仕打ちを彼女に強いたのです。
姦淫の邪神は配下に命じ、毎日1つ、風の女神の寝所へと樫の木の小箱を届けさせました。…箱の中には、女神の愛する天使の指が1本ずつ切り落とされ、収められていました。泣き崩れ、天使を解放するよう求める女神の懇願は、しかし聞き入れられることはありません。11日目————…これまでよりも、取り分け大きい黒木の箱に容れられていたモノは…。
……………。
…怒り狂い、自ら兵を率いて撃って出た風の女神は、地の底で“姦淫”の邪神と、地形を歪ませるほどの大きな戦を引き起こしました。千の夜を跨ぎ、熾烈を極めた2神の争いは…その後、目覚めたばかりの癒しの女神の介入によって、形勢を大きく風の女神の側に傾けることになります。ついに邪神を追い詰めた風の女神は、その弓矢で敵の両の眼を打ち抜きました。視力を失った”姦淫”はもがき苦しみ、そのまま深い深い地の底へと墜ちていきます。地獄へと縛られた彼女は、そのまま二度と天上へ戻る事は出来ませんでした…。


ジュア人形「ん…。話しておく事はこれでおしまい。長くなっちゃってごめんね。何てことのない、ただのよくある御伽噺だよ…」

マリー「すやぁ…」

ジュア人形「ね、寝てるぅ…!?」

アネモネ「すまんな。そやつには小難しい長話は子守歌になってしまうのだ。おまけに真夜中に起こされてからの砂漠強行に戦闘続きで、疲れていたようだからな」

ジュア人形「それはその…急に巻き込んで申し訳なく……」

アネモネ「長々と話さなくても、どういう状況になろうが、マリーは助けに行くだろう。我は”神殺し”を出来る機会を得たと心躍っているが」

ジュア人形「ぴゃぁ!?」

 

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