アネモネ「恐ろしい、恐ろしい話をしよう」 美しい茶器から甘い香りを纏った煙が立ち上がる、穏やかなティータイム。吸血鬼は急にそんなことを言いはじめた。
マリー「突然なんだ?」 困惑に染まった青い目に、吸血鬼は怪しげに紫の目を細めた。
アネモネ「優雅に啜るのも退屈だろう。なあに、ちょっとした雑談だ」
アネモネ「それはレシマス畑へ向かった矢先、階層に出現していた噴水の水を飲んでいる我にものすごい幸運が訪れた…ような気がしたが、それは妹だったのだ。現れた妹に…何が起こったのか、いまだわからぬ」
マリー「妹には毎度どういうことだ…と、疑問ばかり増えるな」
ドラクル「妹は妹でございますよ」
マリー「そういえば、探索中にお前に似た奴に遭遇したことも混乱したな…増えたのかと」
アネモネ「はははははは、我が増えたら愛らしさに気が狂うぞ。まあ、我のファッションセンスに憧れた吸血鬼であろう」
エリザ「随分と変わったご趣味ですこと。そうそう…ちょっと殴ったら、すぐミンチになるところもあなたとそっくりでしたわね」
アネモネ「ふふ…我は儚くも麗しい超絶美形吸血鬼だからな!」
エリザ「そのアホな決まり文句、飽きませんわね」
アネモネ「そうだ、レシマス畑改装中にエリザが突然マテリアルをひたすら採取しはじめた時は恐ろしかったな」
エリザ「あ、あれは身体が勝手に…」
アネモネ「いっそ我の入浴中に飛び込んでも良いぞ」
エリザ「しませんわ!」
mmahの更新でAI変更→する。で、ペットがマテリアル採取スポットの上にいてプレイヤーの近くで交戦状態でないとき対応するスキルを持っていれば自発的にマテリアルを採取するようになったわけだが、個人的に微妙かな。PC動き回っているので、紐でペットも移動で採取中断するし。
エリザ「急にあなたの種植えスウォームの範囲が広がったことも奇妙ですわよ」
アネモネ「収穫の神を倒すことによって、得られる能力だったのだがな。我の素晴らしさに神が祝福を……つまらぬ。我は神をミンチにする、そう決めているのだ」
マリー「…お前はこの世界の神を憎んでいるのか?」
アネモネ「ぬう?イルヴァの神々のことは好いておるぞ。エヘカトルの豊満、ルルウィの大胆さ、クミロミの種、ジュアは抱きた…いひゃっ!?エリザ、なぜ頬を伸ばし…いたたたたっ!!」
ドラクル「願いで神の御姿を呼び出し。鍛え上げた力を試そうとする冒険者はそれなりに居るのですよ」
マリー「改めてとんでもない世界だな…」
これは画像より動画で見た方がわかると思うので。ほんと前より広い範囲で種蒔きできるようになったものだ。
マリー「この前『古代竜』に遭遇して、ほぼ全滅したことも恐ろしかったな」
アネモネ「いや、それはとても愉快であったぞ」
エリザ「あなたの感性はおかしいわ…。私、よくギリギリ生き残りましたわね…どう考えても起死回生は無理ですけど」
ジル「次こそは全部ぼっこぼこのミンチにしてやるのですです!」
アネモネ「ふははははははっ!いずれ古代竜の大群が来ようが、我と素晴らしい下僕共がすべて殲滅してくれるわ!さて、最近で1番恐ろしい話をしてやろう…あの出来事だ」
アネモネ「増殖したスラッジビーストに囲まれたことだ。いくら増えようが、高LVドラゴンより大したことはないと、我はそう考えていたのだ…」
エリザ「ジュア信仰でしたのよね…。私もたまに使うことがありますけど、集団でジュアの祈りが発動するとあんなことになりますのね…」
マリー「どこを見てもドロドロした肉塊の壁。うう…。延々と続く回復行動と増殖は終わらない地獄だったな」
アネモネ「なんとか階段を降りて脱出したが。しばらく見たくないな…繰り返される戦いほど、徒労なものはない。…疲れた」
エリザ(つまり自宅に帰還した途端、ティータイムするぞー!と言い出したのは…。まあ、良い休みになっているかしら)
最後らへんで、なぜか食事行動してて…我ながら疲れていたのだろう。ちなみにリロードセーブを駆使して脱出した。その方法が無理そうだったら、うみゃああっ!!を呼んだかもしれない。昔、それでなんとかしたなぁ…
ガーンナ「ご主人様。長々と話されたひと休みに私の話を聞きませんか。最近、妹の館に妹団が襲撃したのでおじゃるよ」
アネモネ「なんだってー!それはとても気になるのである。聞かせよ」
エリザ「待って!嫌な予感しかありませんですわっ!」
お兄ちゃ~ん お兄ちゃ~ん
お兄ちゃん見てて お兄ちゃん見てる?
お兄ちゃん助けてー お兄ちゃんのためー!
お兄ちゃんどこ? お兄ちゃんそこ?
やったよ
ガーンナ「ということで、妹が勝利したのおじゃる」
アネモネ「………。なぜ我は聞いてしまったのだ…?」
エリザ「アホですの…?好奇心もほどほどしてちょうだい……私、部屋で休みますわ」
アネモネ「すまぬ。…うむ、茶も飲み干した。お開きとしよう。各自、好きにせよ。我も…寝るか」
ドラクル「そうでしたら、よく眠れるマッサージを」 そう言いかけたところで、老紳士は口を閉じた。深紅のマントを翻し、早足で歩く吸血鬼の先には少女の後ろ姿があった。また少し口喧嘩しながら、2人は並んで扉の向こうへ消えていった。
ジル「えへへっ、マスター楽しそうですです。僕、邪魔しないようにお外で散歩してきまーす」
マリー「…。私も」
ドラクル「マリーさん、私たちも仲良く寝所を共にしませんか」
マリー「…っ!?」 バンパイアハンターは衝撃のあまり、恐ろしい速さで後ろに飛び退いた。
ドラクル「ふ、ふふ…ぐ、ふふっ。…冗談でございますよ。私はお嬢様一筋ですので。マリーさんは我が主をどう思われているのですか」
マリー「どうって…友達だが」
ドラクル「そう思っているのですね。…それでは、良い休暇を」
マリー「あ、ああ…」(すごい笑われた…。……何か含みを感じたが…)
ふと、今までの出来事をたわいなく話す先刻のお茶会を振り返った。楽しいことも、大変なことも、これからもアネモネの隣で歩み。笑いあいたい。少しでも、長く……いや、すっかり離れがたい。と、マリーはそう思った。
マリー(……そうか、私は私のために。欲深くになったものだ)
自覚と共に色あせた記憶にある、灰へ散っていく女性の顔を思い出し。マリーは苦しげに目蓋を閉じた。
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