クレイモア吸血鬼の旅行記57


吸血鬼たちは血の匂いが充満する暗殺ギルドから出ていく。白銀のレファナが事を起こす前に捕縛あるいは討伐ーーーー… 女王に依頼されたことは達成できなかった。
情報屋としての顔を持つリアナがノースティリスに存在する暗殺ギルドを調べ出し。一度、命を狙われたラーネイレを守るためにヴェセルたちはパルミアに残り。隠されたその場所へ向かった冒険者たち… だが、どこにも彼女の姿は無く。ギルドの幹部から「貴様らは無駄足を踏んだのだよ。レファナ様も、彼女が所持する《支竜の水晶》も、今はこの場に存在しない」という話を聞く。

アネモネ「竜…水晶……宝石…」
エリザ「…何か心当たりがありますの?」
アネモネ「宝石になった竜の話を知ってるか?」
エリザ「知らないですわね」
アネモネ「そうか。なら、我が聞かせてやろう。急ぎではなければ、我の腕の中で夜明けまでベッドの上でゆっくり話してやったが」
エリザ「い・い・か・ら、早く話してくださる」*ぎゅむ~*
アネモネ「ぬわあっ!?はなひゅから、我の頬を伸ひゃふなー」

遥か昔々の昔話、神と神が争っていた時代。ポート・カプール北岸にある海底洞窟にとても大きな竜が棲んでいた。ヒトの生き血で己の喉を潤すことしか頭にない愚かな竜は、無謀にも大地の神オパートスに挑みかかり、瞬く間にその頭蓋を叩き割られた。死してなおのた打つ怪物の身体を封じるため、大地の神はその心臓を一欠片の美しい宝石に変えたと云う。

アネモネ「という伝承だが… 正確には、竜は負の神の尖兵だったのだ。神と戦うために作られたドラゴン…どれほど強いのか考えるだけでわくわく… いや、まあ《支竜の水晶》はその竜を封じているアーティファクトかもしれんな。なら、レファナが言っていた祭りというのは… ぬ?」
エリザ「なに…あれ… 海が割れて…!」
ジル「す、すごい…!ですです」
アネモネ「ふははははははははっ!!面白い、面白いではないかっ!!」


アネモネ「素晴らしいのである。遠目から眺めるのも良いが、割れた海の間から見る景色も愉快愉快愉快愉快愉快!ふははははははははははははっ!」
ドラクル「確かに絵に残したい光景でございますね。お嬢様」
エリザ「これが祭?まっっっったく楽しくないですわっ!」
断裂した水面の向こうに口を開けた、巨大な大穴。きっと海底洞窟の入り口なのだろう。見ているだけ飲み込まれそうな深い闇に少女は不安を覚えた。けれど、先頭を歩く吸血鬼の足取りは軽く。岩窟の内部へと向かっていく。
エリザ(ホントためらいがないわ… だから、私も行こうと思えるのですのよね)「こんなお祭り、中止にしてやりますわ!」

 


時は少し遡る。フレイは悩み苦しんでいた。吸血鬼から教えられた姉の現状。それはあまりにもショックなものであった。実際に見てないのもあって、冷酷な暗殺者、世界を呪う狂気に満ちた姉の姿など想像できず…思い浮かぶのは幼き頃の記憶。強き姉、憧れの姉、優しい姉、剣の才能など無いと泣いていた小さな自分。
「フレイは誰よりもひたむきに努力している。いつか私よりも父様より立派な剣士になる」「お前が大切な人を一人で守れるぐらい強くなるまで、お姉ちゃんが守ってあげる」「フレイもお姉ちゃんも一人前になったら、二人で一緒にギルドマスターを引き継ぐんだ。それは素敵なことだと思わないか?」「フレイ、私はーーーーー…」
次々と思い出す姉の言葉、けれど、なぜか思い出せない部分があった。あの時、姉はなんと言ったのだろう。とても大切なことだったような…
フレイ「…………っ!?…なんだ…!?」
足元が不安定に揺れ、部屋の中の物が音立てながら床へ転がっていく。地震だと思い、外へ出るフレイだが。その瞳に映ったのは逃げ惑い怯える人々、そして海が裂けた姿であった。
フレイ「…ああ、そうだった」
そう呟いた彼女は腰の剣を確認すると、海へ進んでいった。

 


アネモネ「だいぶ海水が引いているとはいえ、浸水している場所が多いな、うっかり深いところを歩かぬように気を付けよ。…ところで、肌がベタベタするのである。いますぐ風呂に入りたい」
エリザ「急にテンション低くなりましたわね。洞窟に入ったばかりですのに」
アネモネ「洞窟の中など、特に珍しくもないしなー」
ドラクル「髪も海水で濡れていますね。これはいけません…一本一本、お嬢様の髪の手入れをしませんと」
アネモネ「何時間やるつもりだ…?」
ジル「マスター、泳いでいる馬がいるのですです。とっても綺麗な毛並みですですー」
アネモネ「それは水棲馬… 海ならアハ・イシュケだったか?乗ると水中につれていかれて、肝臓以外を食べられてしまうぞ」
ジル「はわわっ!そんなの馬刺しにしてやるのですです!」
アネモネ「それは良いなー 耐久が上がりそうだ」
エリザ「いつまで呑気におしゃべりしていますの。レファナを捜しますわよ!」
アネモネ「うむ」(……竜は奥にいるのだろうか。戦ってみたい)

 


洞窟の奥へ進んでいくと古の神を模した神像が並ぶ道、エイス(名無し)の祭壇、ほとんど朽ちてない石造りの部屋、侵入者を惑わす罠など、かつて神々の戦争の砦として使われていた遺物が多く残されていた。
アネモネ「どれもこれも興味深いであるな。特に透明な床は我が城に欲しい。どのような素材で作られているのか、欠片を回収しておくか」
エリザ「もー!自宅におかしな仕掛けをするのはやめてちょうだいと、前に言ったでしょう」
アネモネ「透明の床で、空中を歩いているかのような庭園を作ろうと思ったのだがダメか?」
エリザ「そ、それは欲しいかも…」
アネモネ「ふふっ、そうであろうそうであろう♪ …ぬ?匂いがするな、これはフレイか」


フレイ「アネモネ…?そうか、君も洞窟に来ていたのか…。すまない、油断していたつもりはなかったのだが、不覚を取った…」
エリザ「今、回復魔法をかけますわね」
話すのも苦しそうに顔を歪める血に塗れた戦士ギルドマスター。エリザの魔法で徐々に塞がっていくが、その傷口は深いものであった。よほど激しい戦闘をしたのだろう、近くに転がっている剣の刃の一部が欠けていた。
フレイ「ありがとう…。出会ったばかりのあなたにこんな事を頼むのは心苦しいが、どうかレファナを…私の姉を止めてほしい…。海溝の竜が完全に目覚め、パルミアへと飛び立つ、その前に…」
フレイの瞳から一滴、涙が零れる。どんな言葉をぶつけても止まることがなかった姉。そしてギルドマスターとしての役目を果たせなかった悔しさに。
フレイ「姉は洞窟の最奥ーーー『竜の器』が沈められた、封印の間に留まっている筈だ。『竜の器』は《支竜の水晶》と共に王家から託され。代々の戦士ギルドマスターが管理するものだった…。8年前に姉が持ち出し。今現在、封印を解こうとしている…。ギルドや我が家系の因縁に巻き込んでしまったことを詫びさせてくれ。すまなかった…」
アネモネ「頭を上げよ。そなたは戦ったのだろう。その剣で、身体に傷を負いながら、姉から顔を背けずに向き合ったのだ。それに我は迷惑だと思ってないぞ」
フレイ「?」
アネモネ「そなたは美しいからな」
フレイ「…っ!!?」 吸血鬼の言葉にフレイはみるみる顔を赤く染めた。
エリザ「…」(治療に集中…集中。今は怒らないでおきましょう、私)

 


レファナ「お前はーーーー…そうか…。私の最後の相手は貴様か、常闇の眼を持つ冒険者」
アネモネ「我の麗しい顔を覚えてくれたのか。嬉しいであるぞ、刃のようなお嬢様」
レファナ「永遠の秘宝を手にした貴様ならば分かるだろう。この先、イルヴァに起こるであろう逃れえぬ破壊が…。神々の闘争の時代、イルヴァで暴虐の限りを尽くした腐泥の魔竜。その力を以て、私は再び地上を混乱に陥れる」
アネモネ「わからぬな」
レファナ「…私の行動が理解できないか。そうだろうな…。当の私自身ですら、もう分からなくなってしまった。今の私の中にあるのは行き場を無くした憎悪の念と、ひたすらに渇いた空虚ばかりだ」
アネモネ(ああ、この感じ…似ている)
レファナ「…お前に愛する者は居るか?己の命を賭しても良いと思えるほどに信じられるものは?それら全てが理不尽に奪われ、蹂躙される様を想像してみるがいい。私に立ち塞がる理由など、ただそれだけで十分だろう」
アネモネ(この娘も失ったのか)
レファナ「…妙な話をしたな。お互い語る言葉も尽きた。そろそろ始めようか」
アネモネ「ふふっ。この時を楽しみにしていたぞ。娘よ、我と踊ってくれるか。初めに見た時から思っていた、2人きりで激しく交わりたいと… 下僕共よ、手を出すな。下がれ」
ドラクル「はい。いってらっしゃいませ、お嬢様」
ジル「マスターの勇姿を眼に焼き付けるのですです!」
エリザ「ここでミンチになったら、かっこ悪いですわよ。…負けないでね」
アネモネ「ふはーはっはっはっ!我は最強無敵の超絶美形吸血鬼であるぞー!ティータイムの準備をしておれ」
レファナ「おかしな連中だ…本当に祭りかのように賑やかだな。----暗殺ギルドマスター、『白銀』のレファナ…参る…」

 


アネモネ「なかなか耐性を整えてるではないか。だがな、状態異常はどうだ?」


混沌が宿る魔力の矢によって、強烈な眠気が襲い。意識が混濁するレファナだが、それを振り切るように大剣を振るう。花びらのように飛び散る血液に吸血鬼はますます楽しい気分になった。
アネモネ「ふははははははははっ!もっと、もっと踊れぇ!我も真っ赤な花をくれてやろう!」


水しぶきを上げて爆発する炎の渦と風圧が白銀の女に襲い掛かる。だが、彼女はテレポートの呪文を唱え、それを逃れる。


アネモネ「魔力が無くなってきたな… なら、こいつの出番である!」
吸血鬼は愛用の銃を取り出し、すかさず発射する。だが、レファナはそれすらも避ける。水に濡れ、身体が重くなっているというのに。
アネモネ「ふはははははははっ!いいぞ!」
それでも、吸血鬼はますます楽しそうに高らかに笑う。
レファナ「フッ、お望み通りの一撃をやろう」


大剣が吸血鬼を貫いた。幼い少女の腹から胸まで裂けた傷から滝のような血が流れ落ちる。だが、その顔は相変わらず笑みを浮かべていた。
アネモネ「良い、良いぞ…真っ直ぐで美しい刃だ!そのまま切れ!裂け!我の身体を2つにしてみせよ!はははははははははははっ!!」
内臓が裂け、潰れているというのに。吸血鬼は平然と笑い続ける。狂気に染まっているのはどっちなのか…レファナは少しだけ恐怖を感じた。
アネモネ「先ほどのそなたの問いかけを答えてやろうか」


アネモネ「この世界がどうなろうが…そんなことはどうでもいい!我は欲深いのだ。欲しいのは我の幸いだ。愛しい存在が側にいることだ!」
吸血鬼は握ったまま、けして離さなかった銃の引き金を引く。至近距離から受けた銃弾はレファナに致命傷を与えた。
レファナ「くっ…!」
銀眼の女はとっさに酒や火炎瓶などを投げつける。だが、吸血鬼は頭から浴びた酒を血と一緒に舐めとり笑う。燃え広がる炎のせいか、薄紫の目が血のように赤く見えた気がした。それに魅せられたかのように体が動けず、再び放たれる弾丸を避けることが出来なかった。張りつめていた緊張の糸が切れたように、レファナの意識は暗転していく…
レファナ「フフッ…最後の賭けにも敗けてしまった、か…。申し訳ありません、サイモア様…」

 


最後、酒と火炎瓶を投げてきて驚いたわ。実際のプレイだと燃えた時のセリフでギャグになってしまった。