波打つ小麦色の髪、柔らかな青空の双眸、儚げな印象を受ける華奢な身体。特徴的な緑の帽子を被り。長い上衣をひらめかせながら、身長以上の大きな鎌を携えている。収穫のクミロミ。愛らしい容姿はまるで少女のようだが、ほとんどの伝承において少年であると伝わっている。
クミロミ「…」
もの憂げに少し伏せた青い瞳は長い金色の睫毛に陰り。僅かな沈黙の後、その唇は開き…
クミロミ「…君たちは」
オパートス「フハハーン!!」
轟く笑い声。発したのはクミロミの隣に立つ山のような大男。その名は地のオパートス。岩石や泥、木材などの様々な物質が混じる巨大な翼を広げ。隆々と引き締まった体躯は一糸纏わぬ姿だ。…一応、足元から隆起した岩石が絶妙に大事な所を隠している。遥か昔、大空を飛んだオパートスを追った大地が山脈となった伝説どおり…意思があるのだろうか。
エリザ「きゃ!見え…てないですわ。…ギリギリに」
ドラクル「安心してください履いてません。でございますね」
アネモネ「つまり、動くと揺れるぞ。覚悟せよ」
エリザ「そんな覚悟したくないですわよ!!」
アネモネ「大丈夫だ。我のと比べて……ぬぬっ、でかいであるな」
エリザ「何の話をしてますのー!馬鹿ーーっ!!」
マリー「…」
オパートス「お前たちのことは聞いているっ!フハーン!戦うぞ!!」
クミロミ「…エヘカトルと一緒が良かったな」
アネモネ「すまんが、エヘカトルは次だ。終わりを飾るには相応しい…美しくも危険な女神だからな」
クミロミ「…イツパロトルは?」
アネモネ「奇妙なことにキウイが降臨するのでな。除外だ」
クミロミ「キウイ…?それなら仕方ないね。彼は寂しがるかもしれないけど…」
オパートス「フハハハハハハハハ!フハハハハハン!」
クミロミ「ふふ…満足するまで付き合ってあげるだなんて…君たちは本当に親友だね」
オパートスは大笑いするだけだったが、クミロミには理解できるらしく。穏やかに微笑んでいる。
アネモネ「…。素晴らしい話は終わったか?そろそろ本番をはじめようではないか」
アネモネ(オパートスは戦士らしい高いHPと火力の持ち主だ。下手に近づかぬ方が良いな。クミロミもまた離れた方が良いだろう。《クミロミサイズ》には当然、首狩りエンチャントが付いておる。我のHPでは即狩られるだろうな)
アネモネ(そう思考している内に、ドラクルの時止めが発動しているな。以前と同じく一方的…いや、混沌属性追加ダメージがクミロミには無効化されているな)
アネモネ(…。ドラクルの攻撃で、他の者は状態異常になってしまっているな。特に酷いのは麻痺状態の……まあ、どうでもよいか)
アネモネは弾を補充するために、地雷を設置し。罠解除する。そして、再び時止めが発動し。ドラクルによって、あっという間に神々のHPは削られていった。
アネモネ(もう半分か……なんだ?この感慨無さは)
神と戦うのは今回で6度目。一応、初めての相手だが…緊張は無く。気分は高揚とせず、落ち着いている…いや、退屈しているのか。
アネモネ(あやつの…ギリギリな戦いぶりは面白かったな。時止めが無くても、我が育ててきた下僕共は戦えると、そんなことを言っていた気がする…)
エリザ「あなた!接近されていますわよ!」
アネモネ「…っ!」
少女の呼びかけに、ぼんやりとしていた吸血鬼はやっと近づいている収穫の神の姿に気付いた。可憐な顔は無慈悲なほど冷たく、鋭く弧を描く大鎌の刃を振り落とそうとしている。
クミロミ「…」
アネモネ「そなたには我の首をやらぬよ」
オパートス「フハハーン!!」
アネモネ「ぐっ…!」
地の神が振り落とした大槌によって、地面が、建物が上下に大きく揺れる。足元が不安定になったところに、更にオパートスは大槌を振り回し。周辺にいたアネモネたちは強力な一撃をくらう…!
エリザ「さっきから何ぼけっとしていますの!」
アネモネ「…」
ドラクル「お嬢様。そろそろ弾を補充されないのですか?」
アネモネ「……必要ない。今、そう考えた。時止めが無くても、そなたたちは充分戦えるだろう。我はそれを見たい」
ドラクル「そうですか。私はお嬢様が望まれるとおりにするだけです」
ジル「くひひっ。神なんて…サクッとドーンっと、僕がやってやりますよ♪」
アネモネ「うむ。信頼しておるぞ」
我ながら、気まぐれで傲慢な言い分だ。だがしかし、下僕共はそれに答えてくれると心からそう思えるのだ
アネモネ(この方が面白い…)
時止めで一気に削っていくより、時間はかかり。契約が発動するほどのダメージを受ける激戦であったが、一行はじわじわと2柱を追い詰めていく…。オパートスは最初と変わらず大笑いしているが、クミロミは恐怖状態によるパニックで…どこかへ姿を消してしまった。
アネモネ(壁が破壊される音が聞こえる…収穫の神の仕業か)
大聖堂を耕してないか、気になるが…好都合かもしれない。分散していた下僕共の攻撃が集中すれば、一気にトドメを刺せるだろう。…そう考えていると、麻痺状態になったままのマリーの姿が視界に入った。戦いに参加できてないことがもどかしいのか、ひどく悔しそうな顔をしていた。
アネモネ「…」
吸血鬼は何か言いたげだったが、沈黙し。再び無関心そうに、マリーから目を逸らした。
*ブシュッ*ドラクルは《地のオパートス》の首をちょんぎり 殺した。
アネモネ「よくやった!だが、クミロミがまだどこかに潜んでおる。油断するな」
ジル「はーいですです!」
エリザ(さっきまで集中してないというか、やる気がない様子でしたのに。…楽しそうですわね)
クミロミ「…気がついたら、採掘をしていた…オパートスはどこ?」
アネモネ「我らがミンチにしたぞ」
クミロミ「君が望んだ…結果になれた?」
アネモネ「さて…少なくとも、そなたとの戦いはまだ終わっておらぬ」
クミロミ「そう…足りないなら、僕が満足させてあげる」
どこか艶っぽい響きを含ませて、収穫の神は武器を構える。ひらひらと揺れるスカートと長い袖、その背には白い翼…まさに御伽噺で出てくる麗しい神だ。けれど、その手に持つのは大鎌だ。重傷状態で一撃をくらえば、一瞬で首を刈り取られる。しかし、クミロミもまた瀕死だ。こちらも首狩りエンチャントが付与された武器がある。どちらかの首が先に落ちるのか…建物内に鋭く切り裂く音が響いた———
*ブシュッ*エリザは《収穫のクミロミ》の首をちょんぎり 殺した。
エリザ「ほーほっほっほっ!やりましたわ!」
アネモネ「そういえば、エリザが神にトドメを刺すのは初めてであるな…。そうだ、エリザも神を1人で討伐してみないか?」
エリザ「嫌ですわよ。私、そういうの興味ないの」
ジル「僕はやりたいですよ!」
アネモネ「ほう、ジルは果敢だな」(マニを殴らせるにも、沈黙の霧は相性が悪すぎるな…)「いずれに…そのうちにな」
ジル「えへへっ。マスターのために、全力でぶっ殺してやりますよ♪」
ずんだもんにクミロミのセリフを言わせてみた
本編とまったく関係ない。お試しで作成したショート動画。最初はきりたんに読み上げてもらおうとしたが、ずんだもんの囁き声がイメージに近くてずんだもんに。改めて可愛い声だな、そりゃ人気は出るわ。
アネモネ「次はもっとも凶悪とされるエヘカトル。神との戦いもついに最終決戦だが…しばし、また強化ポーションを作る準備期間だ。我は地下室に籠る。そなたたちは自由にすると良い」
マリー「あ…アネモネ!」
アネモネ「…どうした」
立ち止まり、アネモネは一言だけ発する。…その声音は、どうも冷たく感じる。重苦しい空気に怯みそうになりながら、マリーは言った。
マリー「話をしたいんだが…私も地下室に」
アネモネ「すまんが、錬金術というのは細心な作業なのだ。後にしてくれ」
マリー「…なら、いつ」
アネモネ「マリー。戦闘中、麻痺で困っていただろう。次回までに調整しておこう。最後の大舞台…後悔なきよう、全力で戦おうではないか」
遮るように、そう言い放ったアネモネはマリーに背を向け。足早に地下への階段を降りて行ってしまった。
マリー「…」
エリザ「しけた面ですわね。でも、お暇のようですから借りて良いですわよね」
マリー「…え?」
エリザ「私、興味がありますの。この前、あなたとあのひとがベッドの上で…」
アネモネ「手を離せっ!」
マリー「嫌だ。お前の言う事なんて聞けない…!」
アネモネ「くだらぬことを…!」
ベッドの上でもつれ合う幼い少女とシスター服の女。そう書くと秘めやかな花園に聞こえるが、現実は子供のような喧嘩だ。マリーは片手に深紅の石が付いたペンダントを掴んで高々と上げ。アネモネはそれを取り返そうと手を伸ばしている。そんな光景に、様子を見に来たエリザは目を丸くした。
エリザ「あなたたち、何をやっていますの…」
アネモネ「マリーがひどいことをするのだ」
マリー「アネモネがひどいことを言うんだ」
エリザ「…。とりあえず、あなたは部屋を出ましょうか」
アネモネ「なっ…!?なぜ、我が…!」
エリザ「マリーは1日も寝込んでいたのですよ。それにこの部屋はマリーの部屋ですわ。…休みが必要ですわよ、お互いに」
アネモネ「…わかった。だが、ペンダントは返せ」
マリー「……すまなかった」
吸血鬼は不機嫌そうに顔を逸らしたまま、ペンダントを受け取り。すぐに部屋から去っていった。
マリー「…今もずっと大事なんだな」
エリザ「…?」
エリザ「そんな騒ぎの後だったから。あの時は深く聞かなかったけど…今なら聞いてもよいかしら?」
マリー「…すまないが、話す気はないんだ」
エリザ「へぇ~…お口は堅いようですけど。友情には随分と亀裂が入っていると思いますわよ?」
マリー「うっ…。……エリザが私たちのことを心配していることは分かっている」
エリザ「そう、分かっていますの…。あの時、私が贈ったペンダントを奪っていることに…首狩りエンチャントされた忍刀をぶっ刺してやろうと思ったことも分かっていますのね?」
マリー「ひえ…!?そ、それは本当にすまないっ!ついカッとなってしまって…。…そうか、エリザの贈り物だったんだな」
エリザ「なんだと思っていましたの?」
マリー「…すまないが、言えない。アネモネが言ってないことを、私から話すのは良くないと思うんだ」
エリザ「はぁ…本当にあなたたちって、呆れるほど似てますわよ。でも、だからこそ理解し合えるのかしら」
マリー「…どうだろうな。わからなくて。あの時、あいつを怒らせてしまった。私もあんなことをしてしまって…」
エリザ「充分、努力していますわよ。私よりずっと恐れずに。だから。チャンスをあげますわよ」
マリー「チャンス?」
エリザ「そう!のらりくらりと逃げるあのひとと、きちんと話をする機会を。私がなんとかしてやりますわ!」
戸惑っているマリーに向かって、エリザは自信が満ちた様子で、唇に笑みを浮かべた。
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