アネモネ「ぬ?いつのまにか、我の習得が1000になっておるな」
エリザ「あら、おめでとう。毎月、畑作業している成果が出てますわね」
アネモネ「ハーブと宝石はいくらあっても困らぬからな。だが、それだけではない。我は秘密の特訓もしているのだ」
エリザ「秘密の?」
アネモネ「その名は餓鬼浴!餓鬼の手をHPギリギリまで受け、治癒の雨で回復する。回復ポーションでも有りだが、MPが尽きたというキリが無くなるからな。我は治癒の雨を使用しておる」
マリー「私に店番を任せた後に、たまに隣の倉庫に1人でこもっていたが…こんなことをしていたのか」
アネモネ「他の者が居ては、攻撃が我に集中しないからな」
エリザ「自宅待機していたら、あなたが突然這い上がりで帰ってくるのもこういうことでしたのね」
アネモネ「そ、それは気のせいだ。…説明を続けるぞ」
HPギリギリまでスペースを押していると、よく事故るんだよね…。
アネモネ「MPが尽きたら、同色に染めた魔法陣からテレポートで餓鬼たちが居ぬ場所へ移動し。生ものに変化させた維持エンチャント付き装備を食すのだ。すると」
アネモネ「筋力の成長率が上昇し。更に耐久維持を食べたら、準備は終わりだ。後は効果が消えるまで、モージアを食べ続ける…!」
アネモネ「それによって、筋力588→602。つまり14も上がったのだ。地道な作業という奴だが、確実に上がっているであろう?…バブル工場より効率は良くないが」
マリー「工場?」
アネモネ「乳で山のように太らせたバブルを吊るし、狭い場所で増殖させたのをひたすらスウォームでミンチにする…冒険者たちの間に伝わる古の方法だな。地獄属性追加攻撃がエンチャントされた武器を装備していれば永遠と殴り続けられ。ステータス、スキルが鍛えることが出来る。そして、ドロップした物凄く重い肉を店に置けば金にもなる」
マリー「肉…!」
アネモネ「食べる気か?長時間の放置によって、腐ってることが多いのだぞ」
マリー「それは嫌だな…」
バブル工場は、昔のプレイデータで作ったことがある。シェルターより店の中で作る方が移動の手間が減ると書かれていたので、そのとおりにしたら…稼働中パソコン触れない&飾りに置いた家具が消えて悲しくなった。と、私には合わない方法だとよくわかりました。それ以外の育成方法を模索した結果、このやり方でPCのステータスを上げています。
アネモネ「ふ、ふふふふ…。我ながら素晴らしい。首狩り、ルルウィ憑依、スタミナ吸収がエンチャントされた細工籠手に合成してやったぞ!さあ、マリーよ。受け取るがよい。ああ、心躍るぞ。お前が駆け、金の髪を振り乱して、振う赤い大斧…首を刈る姿、正に風車。緋い花が咲き乱れて~♪」
マリー(何かの歌か…?)「ああ、任せてくれ。腕や首を落とすのは、昔の…戦場でもよくやっていたからな」
アネモネ「ははは、お前の場合」
アネモネ「素手でも出来そうだがな。手刀でスパっと。お前の回避と見切りスキルに150までBPを振っていたら、格闘スキルの高さに驚いたぞ」
マリー「暇な時に筋トレしていたのだが、そんなに伸びていたのか…」
アネモネ「いっそ殴った方が強いのではないか?」
マリー「接近するのは危険だろう。特に、吸血鬼の相手では。…私の後を継ぐ。あの子に戦い方を教えるために。武器の扱いを私自身が知っていなければいけない」
アネモネ「…あまり厳しくするなよ。嫌われるぞ」
マリー「う…そうなったら悲しいな…。気をつけるよ」
アネモネ(子供か…。我に子が出来たら…いや、馬鹿なことを考えたな)
マリーはLV110の怪盗バットをベースにしているのだが、それで格闘スキルが高いのかな?
~魔法LVを上げる修行場~
アネモネ「ぬわああああああああっ!?」
アネモネ「なんだ…?最近、ここでよくミンチになるぞ?」
吸血鬼は読み飛ばしていた死亡ログを確認する。そこにはシェルターでドラクルに殺された。という文字がいくつも並んでいた。
アネモネ「ドラクル…?」
ドラクル「申し訳ございません、お嬢様。ですが、どうしても抑えきれなかったのです」
アネモネ「そうか、そうだったのか…」
アネモネ「この前、そなたに渡した混沌の渦発動クロスボウが原因だったか」
ドラクル「いいえ、お嬢様に頂いた武器を扱えてない私の力不足です。魔力制御スキルをもっと鍛えませんと」
アネモネ「あまり気にするな。下僕共の強さは我の喜びだ。もっと使うと良い。そうだ、3本目となる矢束を用意したのだ。受け取れ」
アネモネ「弾数の種類が多い矢をベースに、毒と冷気の追加ダメージのエンチャントを合成したものだ。他の矢弾を合わせれば、時止弾が6発。…それで試してみたいと思ったことがあってな。付き合ってくれるか?」
ドラクル「はい。お嬢様が望まれるなら」
アネモネ「そういう訳だ。我はこやつと出かける。そなたたちは自宅で好きに過ごせ」
ジル「マスターと2人きりなんてうらやま…うう、いってらっしゃいですです」
エリザ「何をするつもりか、気になるのですけど。あなたに今聞いても言わないでしょうね…。はぁ…とにかく人様に迷惑かける行為はやめてちょうだいね」
アネモネ「安心せよ。人に害はない」
マリー「…」(行かせていいのだろうか。…どうも私はあの男を信用できない)
マリーは警戒するように青い目を細め、老紳士を睨む。その視線に気づいていないのか、ドラクルはいつもどおりの笑みを浮かべている。マリーが発する殺気に気付いたのか、アネモネは言った。
アネモネ「なあに、少し試すだけだ。すぐに帰る。必ずな」
~ルミエスト墓所~
寂れた墓場に立つ影が3つ。真紅のマントを纏った幼い少女の姿をした吸血鬼と、黒いスーツを着た老紳士。そして、機械の神。
マニ「私の記録が正しければ、お前たちと会うのは二度目だが」
アネモネ「貴様なら何度も殴っても良いと思ってな。だから呼んだ」
マニ「数が少ないようだが、それで私を倒す気か?どういう冗談だ?」
アネモネ「ふざけているのは貴様であろう。なぜマニの分解術を使わぬのだ。そのことに気付いた時、我は煮え湯を飲まされた気分になったぞ」
マニ「…答えは無い」
アネモネ「なら、我は準備するだけだ。貴様がミンチになる用意を、な」
マニ「…?」
アネモネ「貴様と戦うのはドラクルだけだ。我は少しだけ手伝うだけ。造り物には我が下僕1人だけで充分ではないかと、そう思ったのだ」
マニ「信者であろうが、言葉が過ぎる…後悔するがいい!」
アネモネ「ぬわっ!?相手をするのはドラクルだと言ったであろう」
ドラクル「幼い少女と遊びたい趣味をお持ちかもしれませんよ」
マニ「…飼い主に似て、ロクデナシのようだな」
ドラクル「お嬢様とお似合いだなんて、素晴らしいことをおっしゃいますね」
マニ「そんなことは言ってない」
アネモネ「はは…それより強化ポーションは飲んだな?我の下僕として、思い存分に戦え!ドラクルよ!」
ドラクル「はい。お嬢様のために粉骨砕身。神を壊してやりましょう」
機械の神は慇懃無礼な老紳士に狙いを定め。乱れ撃ちを放つ。だが、いくつかの銃弾が風によって逸れる。ルルウィの加護だ。かつてマニが人間から神になるために、裏切った女神の力。銃をメインに扱う機械神には相性最悪だ。そして———時が止まる。
電源が落ちたように停止するマニを囲むように撃たれたクロスボウの矢。機械弓は、弓を得意とする風の女神と恋人だった時に共同開発したという噂があるが…真偽は不明だ。ただ確かなことは、時が動き出せば、矢が機械の神を貫くということだ。———時は再び動き出した。
マニ「…っ!…またか」
全方位から襲ってくるクロスボウの矢の衝撃に、機械の身体が左右に揺れる。そして、エンチャントされた追加属性ダメージが、機械のマニを凍らせ、毒に侵し、生命を吸い取り、混沌の渦へ飲み込む。その攻撃は恐ろしい勢いで、HPを削っていく…!
マニ(前回より能力が向上されている…?しかし、これで弾は尽きたはずだ。時はもう)
アネモネ「止まらない。と、そう読もうとしたであろう?だがな、我は今。貴様の信者だ。つまり」
アネモネ「地雷を設置し。マニの分解術を発動…すると、罠は解除され。マテリアルを入手でき。そして、我と下僕の弾が補充されるのだ!素晴らしい加護だと称賛するぞ。マニよ…。ふははははははははははっ!」
マニ「………ふふ」
アネモネ「…笑ったのか?」
マニ「ああ、良いデータだ。私の加護を受けた者が反逆した時のな。前回も生命力10があそこまで戦えるというログも取れた。お前たちは本当に素晴らしいシモベだ」
アネモネ「神になるほどのマッドか…。まあ、我も他人事ではないか」
機械の神はけして一方的にやられている訳ではない。隙があれば、装填した炸裂弾を放ち。ドラクルに大きなダメージを与える場面もあった。
だが、時が止まっている間に、マニに地獄属性追加ダメージを与え。ドラクルは回復していく。血を啜る吸血鬼のように。生を奪っていく死神のように。白雪が降る沈黙の墓場に飛び交う矢と弾丸。冒涜的な騒々しさに文句を言う人間はいない。なぜなら、ここで踊っているのは悪魔と神だけだ。
何かは死んだ。
アネモネ「……終わったのか?ぬう…マニめ、また視界外でミンチになってるではないか」
ドラクル「綺麗な首にしてやりましたのに、その瞬間をお見せできないとは…申し訳ございません」
アネモネ「気にするな、誇れ。そなたは1人で神を討伐したのだぞ。ふははははははははっ!流石、我の下僕だ」
ドラクル「お嬢様の助力があってこそですよ」
アネモネ「…そうだ。褒美をくれてやろう。願いをなんでも聞いてやるぞ」
ドラクル「よろしいのですか。…それでは、お嬢様」
ふと思いつき。試してみたら、倒せてしまった。戦闘開始から討伐まで1分ほどで。ルルウィの加護による有利さと、時止めが強すぎたのか…?弾補充もあったしな。しかし能力的に合わせるとホント相性良いね。マニとルルウィは。
甘い香りが漂う湯気、美しい茶器たち。つやつやしたテーブルクロスがかかった丸机の上にはティーセットが並んでいる。しんしんと雪が降る、寂れた墓場に不似合いな華やかさだ。それを囲んでいる、どこか人を寄せ付けない雰囲気が漂う、黒髪の青年と老年の男が2人。アネモネとドラクルだ。
アネモネ「この姿の我とティータイムしたい。など、また変わったお願いをする奴だな」
ドラクル「レアでございますから。じっくり見たいと思ったのです」
アネモネ「確かに珍しい…か。幼女の姿だと色々と気楽でな~。背が高いと、ドアの上に頭をぶつける時があるからな」
ドラクル「旦那様の気持ち、わかりますね。私もこの風体のせいか、怪しまれることがあって…」
アネモネ(それは外見だけではないと思うぞ…)「はは…。それにしても…そなたと2人きりで茶を飲むなんて、久しぶりであるな」
ドラクル「エリザさん、ジルさん、そしてマリーさんと…本当に賑やかになりましたからね」
アネモネ「そうだな。この墓場からエリザとジル。店で行き倒れたマリーを拾い。今を、共にいる……ドラクルは、我がドラクルと名付けたコウモリはどこかへ消えてしまったようだがな」
ドラクル「…」
初めから違和感があった。”この”ドラクルの姿になった時から。あまりにも違うのだ。無邪気な子供のようにアネモネの周りを飛び回った、あのコウモリとは。人の言葉が無くても喜怒哀楽が溢れ。少し生意気で可愛らしい、初めの下僕。そんな思い出が薄らと記憶の片隅にある。
アネモネ「今更な話だ。我は、変わったことを大したことではないと、どうでもいいと思った。その程度だったのだ。あの頃の我は」
ドラクル「私のことを殺したいですか?」
アネモネ「いいや…怒りはない。…お前とは長い付き合いだ。人間だった頃から」
朧気な古い記憶…愛する妻を失い、あらゆることに憎しみを向け、絶望し。死を願ったアネモネの目の前に現れた黒い影。妻の形見のペンダントに付いた赤い石に宿っていたというそれは、魂を刈り取りに来た死神に見えた。それは不変の象徴。救いの神はおらず、死は絶対に存在する。失うことはない、永遠に。
アネモネ「私が願ったことだ。ずっと傍にいてくれ…と」
ドラクル「はい。私は誓ったのです。貴方に仕え。我が主として、お傍にいると」
アネモネ「ふ、ふふっ…そうだったのだ。私は死を選んだ。その選択は確かに私が選んだことなのだ。…今後ともよろしく頼むぞ。ドラクルよ」
ドラクル「仰せのままに…」
老紳士は口の端を上げる。笑う形をした顔のまま、跪き。座する吸血鬼に真っ直ぐと、淀んだ虚ろな瞳を向ける。アネモネはそれに手を差し出した。血のように赤い爪で彩られた白い指を、ドラクルは大切そうにそっと掴み。忠誠を捧げるように、手の甲に口づけた。
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