聖騎士吸血鬼の伝説29 今年の成長チェック(519年)と父と子

elonaプレイ日記月明かりの祝福『アドニス』

*今回、ほぼ小説みたいな内容になります。


????「よく眠れ…よく眠れ…私の可愛いアドニスよ…」
懐かしい声が聞こえ、ひんやりと冷たい手に頭を撫でられる。それに安心感を覚えた。このまま囁かれる言葉どおりに眠ってしまいたい…そう思えたが。この声の主と早く話したくてたまらない気持ちの方が勝ち。目蓋を開けると…紫色の瞳と目が合った。
寝ている少年を覗き込むように座っている、銀髪の幼い少女。黒服に真紅のマントを纏い、その恰好はアドニスとよく似ている。彼女はバンパイア・ロード、アネモネ。アドニスの”父親”だ。

アドニス「…父上?」

アネモネ「ぬ?起きてしまったか。せっかく久しぶりに我が子の寝顔を眺めていたというのに残念だ」

アドニス「…どうして、俺は布団で寝て…?」
困惑する。目覚める前の、ぼんやりと覚えている記憶では温泉に入っていたはずだ。今いる場所はタタミと呼ばれる床に布団が敷かれた、東洋風の一室だ。

アネモネ「覚えていないのか?お前は…」



アドニス「…父上?…え?ええっ??…どうしてここに!?」

アネモネ「ふふっ、驚いておるな。実はな…父にはお前の行き先が分かってしまうのだ」

アドニス「本当に!?……いや、そんな訳ないでしょう。久しぶりで、騙されそうになった」

アネモネ「はは、よくわかったな。偶然だ。予定より早くノースティリスに到着してな。せっかくだから、ラーナを観光していたのだ。実のところ、この遭遇には驚いたぞ」

アドニス「父上…あの」
偶然の出会いに喜びを感じながら、少年は仲間たちを紹介しようとしたが…いつの間にか、父はベアトリクスの隣に移動していた。

アネモネ「この麗しいお嬢さんは友達か?まるで光が反射する澄んだ水面のような瞳。目が離せなくなるな」

ベアトリクス「おや…そんな風に真っ直ぐ言われると、照れてしまうね」

アドニス「…父上」

アネモネ「ぬわ、我が子が恐ろしい顔をしておる」

アドニス「母上というひとがいながら、どうしていつもいつも」


ルシアン「アドニスの親父さん。変わんねえなぁ…」

ミア「あ、あの~。ボクの目と耳が正しいなら、ドニちゃんパパが女の子に見えるのですけど??」

ルシアン「うん、今は幼女だぞ。ダンディなおじさんの姿になっている時もあるけど」

ミア「ふええ…??」

デイビッド「ミア嬢、大丈夫すか?のぼせやした?」

ルシアン「それじゃあ、俺たちは先に上がろうぜ。感動の親子の再会、邪魔しちゃ悪いしな」

ベアトリクス「うん。そうしようか」

 


アネモネ「という訳で。父を説教するうちに、アドニスはのぼせてしまってな。気を失ったお前を宿に運び、介抱していたのだ」

アドニス「父上が原因じゃないですか…」

アネモネ「うむ。それは素直に謝ろう。すまない」

アドニス「ベア姉…ベアトリクスさんは俺の大事な仲間なんだから。変なことを言わないでください」

アネモネ「仲間?恋人ではないのか?」

アドニス「可愛がられているだけで、違いますよ…」

アネモネ「ああ、そうだったな。アドニスが昔から好きなのはルシアンだったな」

アドニス「あいつは幼馴染の友達ってだけです…!」

アネモネ「なんと…!我が子はメイドゾンビ♂に」

アドニス「父上…いい加減。遊ぶのはやめてくれませんか」

アネモネ「ふふ、楽しくてな。本当にアドニスは愛らしいな~」
わしゃわしゃと我が子の頭を父はなでる。アドニスが拗ねたように頬を膨らませると、次にぷにぷにと指の腹で頬を触りはじめる。

アドニス「…父上はお変わりが無く、騒がしいひとで安心しますね」

アネモネ「やれやれ、そんなところが母に似てしまうとは…それも可愛らしいが」

アドニス「…母上は元気ですか?」

アネモネ「……ああ、熱心なほど仕事を頑張っているぞ。エリザもアドニスに会いたいと寂しがっていたのだが…なかなか現場から離れることが出来ないようでな。…すまんな」
微笑む父の顔はどこか寂しげだ。父もまた、あまり母に会えていないのだろう。アドニスの母は医者の仕事をしている。吸血鬼が人間を治す仕事をしているなんて、知り合った頃のルシアンは不思議がっていたが、アドニスにとっては普通のことだった。

アドニス「大丈夫です。母上は人を救う立派なことをしているのです。それに…俺と父上、そして母上も永遠の時間を持つ吸血鬼。いつでも会って話すことが出来ますよ」

アネモネ「そう、そうだな。…アドニスは本当に素晴らしい子だな」
そう言って、アネモネはアドニスの隣に横たわり。抱きしめるように、柔らかな黒い後ろ髪を優しく撫でる。その感触に、傍に居る存在に、ひどく安心した心地になる…思わず弱音を吐きそうになるほど。

アドニス(帰り…いや、ダメだ。今の俺では…帰るわけにはいかない)

アネモネ「…。ついついおしゃべりしてしまったな。しっかり休むといい…アドニス」

アドニス「…っ!」
咄嗟の行動であった。離れようとした父の服の端を掴んでいた。アドニスは恥ずかしそうに、顔を背け。沈黙する。そんな我が子にアネモネは穏やかに笑い。再びアドニスの隣に横たわった。

アネモネ(少し前はもっと素直に甘えたというのに)「長旅で疲れたなぁ…私もここで休むとしよう。おやすみ、アドニス」

アドニス「はい…おやすみなさい、父上」

 

再会した親と子が穏やかな時間を過ごしている一方、外では剣吞とした空気が流れていた…


???「…元気そうだな、ルシアン」

ルシアン「なんで居るんだよ…。というか、なにその姿」
不機嫌そうに青い目を細めるルシアン。その視線の先に立つ金髪の女性は、困ったように同じ青い目を伏せた。彼女はルシアンの父。かつてアネモネの仲間として、ノースティリスの地を旅し。マリーと名乗っていた。

マリー「アネモネに…アドニスくんのお父さんに、旅行に誘われてな。せっかくのノースティリスだからと、当時の姿にされた訳で。けしてそういう趣味があるわけでは」

ルシアン「仲良しなことで。……俺は別に話すこと無いから。じゃあな」

マリー「待ちなさい。私の話を聞かなくてもいい…これを受け取りなさい」
呼び止め、マリーが差し出したのはムチであった。少し古びており、かつてマリー自身が使った武器なのだろう。

ルシアン「いらない…。そんな吸血鬼殺しの武器なんていらねえよ。俺はバンパイアハンターなんて絶対にならねえから…!」
拒絶するように叫び。ルシアンは足早に去っていった。追おうと、足を一歩踏み出そうとしたが…マリーは立ち止まった。

マリー「…」(無理には渡したくない…だが、吸血鬼に関わる以上。戦う力は必要なんだ)

 



アネモネ「ほう。ここが我が子のハウスか。…手紙で知っていたが、直で見るジュアの抱き枕群はインパクトあるな」

アドニス「はい。皆の思い出が詰まったジュアの抱き枕です」

アネモネ「なるほどな?」
我が子の家でゆっくり語らいたいというアネモネの希望もあり。ラーナから場所は変わり、一行は自宅へ移動していた。父に意気揚々と話すアドニスと、その様子を微笑ましく見守る仲間たち。そこには…マリーの姿だけ無かった。

アネモネ(あいつ…昨夜から、どこかに隠れおって。息子とのことで、場の空気が悪くなると気にした行動だろうが…阿呆め。…今頃は温泉でゆっくりできているだろうか)

アドニス「父上!この硝子製のストラディバリウスはネフィアで拾ったものなんです。見つけた時は本当に驚きました」

ルシアン「俺もびっくりしたぜ。坊ちゃんが弾くストラディバリウスの、まるで拷問器具のような音色に」

アドニス「あの時は演奏スキルが低かったから…!今はだいぶマシに…いえ、上達しましたよ」

アネモネ「アドニス。父の前でも友達に接するように、くだけていいのだぞ」

アドニス「そういう訳には…それにこれが素の俺です。ルシアンと話す俺はちょっと悪い影響を受けているだけです」

ルシアン「ええ~。俺色に染められているなんて…親父さんの前で堂々と言うとは。アドニスは大胆だな」

アドニス「何を言っているんだ…」

ルシアン「もっと素直になっていいのに~。恥ずかしがり屋さんだな~」

ミア「ドニちゃんはボクのですよー。恥ずかしいのはアンちゃんでーす!」

アネモネ「ふふっ。アドニスはモテモテだな。さすが私の子。誇らしいぞ」

アドニス「誇らないでください…」

 



アネモネ「そういえば…きちんと挨拶をしてなかったな。私の名はアネモネ。アドニスの父である。このようなあたたかい歓迎をして頂き。我が子は本当に良い友人たちを得たと、嬉しく思うぞ」

ミア「え、えっと。ボクもきょーえつごとくみたいな…?」

アネモネ「ぬ?すまんな。堅苦しかったな。私の口調は気にせず、気楽に話してくれ」

デイビッド「ぷはー、息が出来ますぜ。息止まったゾンビですけど。アッシ、こういう話し方しかできないんで。ボスの親父さんだけあって、なんか迫力がありますよね」

アネモネ「ボス?アドニスのことか?」

デイビッド「へい。アッシの全てを捧げられるボスでやすよ。その次にアニキを誰よりも慕っていますぜ」

アネモネ「熱い告白であるな…」

アドニス「そういう意味ではないと思います…」(多分)
メイドの熱い視線を感じた気がするが、それ以上は触れず。アドニスはカレーを一口食べた。舌にピリリと来るルーの辛み。そして、様々な食材と調味料が絶妙に絡んだまろやかな旨味。完成度は一言で表すなら…美味い!それもそのはず、父のためにじっくり時間をかけて作ったカレーだ。アドニスはそわそわと、食べているアネモネを見つめた。

アネモネ「このトマトカレー…美味であるな。さすがアドニス。私に似て、料理上手であるな」

アドニス「ありがとうございます。…最初の頃は失敗ばかりでしたけど。そう言われると頑張ったかいがあります。まだまだ父上には及ばないですけど」

ミア「ドニちゃんパパって、料理人なんですかー?」

アドニス「いいや、父上は領主をしている…あれ?ミアには言ってなかったか」

ミア「ふええっ!?」

デイビッド「アッシも初耳なんですけど…」

アネモネ「驚くのは当然であるな。私自身もいまだ不思議なものだ。ゆるりと片田舎で隠居生活をするつもりが…暇つぶしの農場が繁盛し。近隣で起こった問題を解決しているうちに、その土地の統治者を任されるとは」

ベアトリクス「でも、なんだか納得だね。アドニスくんとお父さんも、品があるから」

アネモネ「ほう。素敵な目を持つお嬢さんだ。私の気品溢れる姿をもっと近くで」

アドニス「父上はその席から絶対に動かないでください。動かなくても、母上への手紙に書いておきます」

アネモネ「ぬわっ!?我が子が容赦ない」

 

そんな他愛もない雑談を交わし、手紙でも伝えきれなかった旅の話も語り合い…そして、時間というのはあっという間に過ぎるもので。


アネモネ「すまんな。もっと滞在したかったのだが…」

アドニス「いいえ。こうして元気な父上の顔を見て話せただけで、とても嬉しかったです。どうかご自愛してください」

アネモネ「ふふっ、お前のその愛らしい姿を見るだけで、力がみなぎるぞ。アドニスも、お友達も、健やかであれ。また休暇を取れそうだったら、すぐに会いに来る。さらばだ」

アドニス「はい…楽しみにしています。父上」

遠ざかっていく父の背中。揺れる真紅のマントから目を離せず。アドニスはじっと立っていた。

アドニス「…」

ルシアン「…アドニス。後ろから抱きついて、親父さんを最後に驚かしてやろうぜ」

アドニス「…やらないよ。俺はお前と違って子供じゃないからな。年が明けたことだし。皆の成長記録を書いてくるよ。……ありがとな」

ルシアン「アドニスはホント真面目だな~…」

 

・アドニス
筋力:20 → 45
耐久:38 → 105
器用:13 → 39
感覚:19 → 55
習得:15 → 45
意思:8 → 25
魔力:18 → 41
魅力:5 → 29
速度:140 → 140

前回の成長記録から、ちょうど2年ぶりですね。このペースだといつ終わるのやら…。まあ、無理しないペースでやると決めているのでね。
採掘の影響で耐久が1番伸びていますね。次に感覚、銃メインで戦っているからな。

・ルシアン
筋力:38 → 101
耐久:48 → 135
器用:35 → 95
感覚:27 → 87
習得:31 → 78
意思:25 → 58
魔力:21 → 63
魅力:21 → 81
速度:95 → 139

耐久が高いな?合成したモンスターの影響かな。全体的に格闘家として、良い感じに育っていますね。

・デイビッド
筋力:32 → 61
耐久:24 → 70
器用:8 → 43
感覚:8 → 47
習得:7 → 34
意思:18 → 39
魔力:18 → 30
魅力:8 → 37
速度:62 → 78

銃使いとしては…低いな。種族と職業が一致してない、趣味構成だからな…。しかし、デイビッドが活躍できるように育てていきたいな。

・ベアトリクス
筋力:46 → 68
耐久:31 → 55
器用:36 → 46
感覚:30 → 49
習得:32 → 43
意思:40 → 57
魔力:57 → 76
魅力:32 → 47
速度:100 → 122

まだまだ魔法スキルLVが育ってない状態ですが。ステータスは魔法戦士らしいものになっていますね。

・ミア
筋力:10 → 70
耐久:4 → 78
器用:13 → 60
感覚:10 → 64
習得:15 → 49
意思:12 → 45
魔力:21 → 83
魅力:13 → 52
速度:100 → 178

筋力70、耐久78だと…?LV1から一気にLV上げするのに、遺伝子合成をやった影響でしょうか。アドニスより力があるぞ…。

 



アドニス(…ここまででいいか)
日記のページを閉じ。少年はベッドの上に座っていた姿勢から、後ろへ倒れた。ガーンナさんがふかふかにベッドメイクした白いシーツが身体を包み込む。眠気を感じ…自然と目蓋が落ちてくる。少し昼寝をしてもいいかもしれない、それぐらい父と再会してから…。いや…数日前から、はしゃいでいた気がする。

アドニス(ルシアンが…年明けてから見る夢が初夢になるって、言っていたけど。昼寝も含まれるんだろうか…)
そんなことを考えながら、アドニスはウトウトと眠りに落ちていった…

 

————血のように、真っ赤な絨毯が敷かれた大広間。一目で分かる、ここは父の城。物心ついた時から住んでいたアドニスの家だ。父のマントを勝手に持ち出し、身体に巻いて走り回って転び。ケガしたことより、マントを破いてしまったことに大泣きした日。立ち入り禁止にされている地下室に、ルシアンと一緒に入って探検し…結局、開かずの扉は謎のままだったけど、ドキドキした日。そんな思い出が沢山ある場所の中央に置かれた玉座に父が座っている…。

幼い少女ではない、男性の姿だ。アドニスと同じ黒髪。瞳は血のように赤く。すべてを見通すように鋭い眼で…しかし、その目は閉じられている。俯き、まるで眠るように力無く玉座の上にいる。いや、そうじゃない…アドニスは知っていた。”何度”も見ているのだから…。意図的に背けていたものを見る。父の胸に貫かれた赤い剣。元々そんな色なのか、血で深紅に染まったのか。わからない。それより重要なのは一体なぜ、こんな許されない光景があるのか。誰がこんな許されないことを…!視界が、溢れるものに沈んでいく。ああ、これは涙だ…。

 


アドニス「う、うう…はぁはぁ……」
少年は短い感覚で何度も呼吸する。酸素など必要としない身体だというのに、まるで人間のように。心理的なものがそういった行動をさせるのか。

アドニス(悪夢だ。悪夢。あんなもの、夢だと思いたいのに。また見てしまった…)
時々、見る夢。何度も見ようが、内容は同じだ…。初めて見た時は、ひどい悪夢だと忘れようとした。しかし、他にも見た悪夢が現実に起こることがあり。否定が出来なくなっていく。父に話したこともあったが、恐ろしい夢を見たんだと、子供扱いされるばかりだった。

アドニス(ルシアンたちは信じてくれると思うけれど…敵は父上を倒せるほど強大だ。もっと、もっと強くならなくては。早く早く早く、いつ起こるのか。怖い…。俺は父上を守るものになるんだ…!)

 

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