クレイモア吸血鬼の旅行記111 ノヴィスワールド-傀儡の魔女 後編-

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』



エリザ「あ…このぬいぐるみ……」
闇の中から1体2体と現れる大きなぬいぐるみ。とてとて、と歩く姿は可愛らしく。けれど、どこか不気味で…それもそのはず、この哀れな玩具は人間だったのだ。魂を囚われ、永遠と思えるほどの月日の間、魔女の玩具として弄ばれ続けられた人間。

アネモネ「憐れむなら戦うことだな。魔女の呪いが解けぬかぎり、我らに攻撃し続けるだろう」

エリザ「そう…ですわね」

アネモネ「さあ、行くぞ!我が下僕共!」


「ぎゃああああっ」
断末魔を上げ、ミンチになる反逆の民。だが、瞬く間に綿と布で出来た身体は再生した。

エリザ「…っ!」

マリー「…」

アネモネ「そんな気がしたが…やはりか」

ドラクル「以前戦った沼地の妖精と同じでございますね」

ジル「ずるいですよー。僕もマスターのために無限復活したいですです」

アネモネ「そのようなことを必要にならぬ方が良い。我はそなたたちのことが大事だ」

ジル「はわぁ…マスターにそんなこと言ってもらえるなんて…。うぇひ、ふひひひひひひひひ」

アネモネ「それでは、作戦開始であるぞ!虚構の魔女と同じ作戦をな」

エリザ「…それって、あなたがまた壁生成し続けるってことですわよね」

アネモネ「そうである」

エリザ「わかりましたわよ。しっかり私たちに守られてちょうだいね」

アネモネ「ははは…」



マリー「…すまないが。お前の準備まで待てない」
魔女の仕打ちに義憤に駆られたのか。マリーは1人で傀儡の魔女に接近し。真っ赤な大斧を振り落とした。
ルゥルゥ「クスクス。お可愛いこと」


マリーは《傀儡子のルゥルゥ》に《フォノン・メザー》で攻撃された。マリーは痛手を負った。ボールがマリーに命中した。マリーは悲痛な叫び声をあげた。

マリー「くっ…!まだまだ私は戦える!」
ルゥルゥ「まあ、素敵なナイトさんね」

アネモネ「お前まで玩具されているではないか…。まあよい、火蓋は既に切られているのだ。我は準備中だが、そなたたちは戦うとよい!」*鼓舞*

ジル「はーいですです!ド派手にぶちかましてやりまーす!」


少年が唱えた槍のように鋭い魔力の集積は魔女の巨体を3度も貫き。大きなダメージを与える。

ジル「くひ、くひひひひひひひっ!」
ルゥルゥ「あらあら…お上手ね。坊や。じゃあ、私の魔法も見せてあげるわ」



ジル「ぐえっ!!」
少年は血反吐を吐き。事切れる寸前だ。しかし、ジルは唾を吐き。血に濡れた唇を袖で拭い、次の魔法の詠唱をはじめようとする。

ジル「はっ…。僕を見くびらないでくださいよ。マスターのおかげで”この程度”のダメージなんて、平気へっちゃらなんですよ!」
ルゥルゥ「そう…。愛されているのね」

ジル「はぁ?当然ですが」
ルゥルゥ「…」


マリーは《傀儡子のルゥルゥ》に『傀儡の王槌』で打たれた マリーはミンチにされた。
ルゥルゥ「こんなにも貴方を想ってくれる人がいる。…なら、1人くらいもらってもいいよね」
そう囁いた魔女は倒れたマリーの身体に黒い触手を絡め、その巨体の中へ引きずり込もうとする。だが、その間に入る影があった。

アネモネ「触るな」
短いながら、激しい怒りを込め。マリーを片腕で抱き、素早く魔女から離れる。安全だと思う場所でマリーの身体を放り投げ、アネモネは復活の書を読んだ。

マリー「いたた…なんだ?腰を打ち身した覚えがないんだが」

アネモネ「お前が眠っている間に、我がやった。柔らかな抱き心地であったぞ」

マリー「なっ!?」

エリザ「…あなた。ふざけたことを言っていますと、刺しますわよ」

アネモネ「ひえっ」


ボールがドラクルに命中した。 ドラクルは朦朧となって死んだ。
ルゥルゥ「仕方ないわね。じゃあ、この人を……ああ…その、やめておくわ」

アネモネ「…?」
魔女の反応が気になったが、吸血鬼は復活の書を読み。ドラクルを復活させた。

ドラクル「ありがとうございます。お嬢様」

アネモネ「うむ、まだまだ戦え。…ところで魔女に魂を返されたが、そなたに何を見たのだろうな?」

ドラクル「お嬢様を何よりも大切に想う…私に感動し。ルゥルゥさんは遠慮してしまったのでしょうね。ふふっ」

アネモネ「そ、そうか…」



アネモネ「ふははははっ!時間はかかったが、これで邪魔は入らぬ。まるで囚われの蝶のように美しいぞ」
ルゥルゥ「くす…それはどうかしら」


目の前で魔女が笑い。吸血鬼の背後には巨大なぬいぐるみが立っていた。綿が詰まった両腕は、驚くほどの力で、アネモネを背から抱きしめる。
「やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ」
そんな呟きを繰り返しながら———


反逆の民は爆発した。反逆の民はバラバラになった。
ルゥルゥ「うふふっ…こんな事で死ねると思っているの?」

マリー「なんてことを…!」

アネモネ「はは…我には効果抜群ではないか。やるな」
すぐさま復活した反逆の民をテレポートの杖で飛ばし。回復を唱え、崩れかけた体勢を整える。先ほどの爆発に、一行はより緊張する…生命力10には高LVの爆破は恐ろしいものだ。
ルゥルゥ「お褒めの言葉ありがとう」

アネモネ「ははははははっ!だがな、我は倒れていない。舞台は終わってないのだ!貴様が幕引きするまでな!」

エリザ「そうですわ。ここであなたが力尽きて、終わったら。私、許さないですわよ」

アネモネ「ははは…エリザは激しくも美しい、我の女王様だな」

エリザ「や、やめてちょうだい…そんなことを堂々と」

アネモネ「今夜も眠れなそうだ」

エリザ「…っ!ば、馬鹿ーーーっ!!」
ルゥルゥ(本当に…羨ましいほど)


*ブシュ* エリザは《傀儡子のルゥルゥ》の首をちょんぎり 殺した。

エリザ「これで終わり…ですわ」
ルゥルゥ「そう…そういう結末も…ある、か…」
熱が籠らない、がらんとうのような視線。魔力の喪失により、ボロボロと崩れ去る自身の肉体を見つめながら、人形は無機質にぽつりと呟いた。ああ、この体は所詮、どこまでいっても傀儡なのか。

アネモネ「…」

魔女だった人形は最後に想う…。

ルゥルゥ「ごめんなさいね…」
全能に近い力を有する筈の自分が、幾多の生命を玩具のように弄んできた自分が、すでに風化し灰になりかけたその屍に新たな命を吹き込むことだけは、何百年かけても叶えられなかった。しかし、それも終わり。今日で終わり。
ルゥルゥ「随分、永く待たせてしまったわ…。だけど、ね?安心して…。今もこれからも、私だけはあなたの味方だよ…。愛してる…ずっと…」
ずっと…そばにいるから…。


エリザ「…」
少女は静かに涙を流した。ただの1人の人間を愛する人形に戻ったルゥルゥを哀悼するように沈黙が降りる。喝采などない幕引きだ。

 

 


人形爆弾を壁生成で閉じ込める以外は鍛え上げたステータスで殴るって感じになりました。それでも傀儡の魔女の火力は本当に高かった。虚構の魔女に挑んだ頃のデータだとミンチ率が高く、復活の書が無くなるほどでしたが。アネモネとマリー以外のLVを100以上にしたり、回避・見切りスキル150ぐらい上げる…など、色々と準備したかいがありますね。時間も15分超えではなく6分ほどになっていて、成長を感じます。
ところで、傀儡の魔女イベントにはミシュスルートと呼ばれるものがあり。本気の彼女と戦えなくなりますが、また違った一面を見れたり、アルハザードさんからルゥルゥのエピソードを聞けたり、彼女への好感がより上がりました。気になるお兄ちゃんは遊んでね!

 

 


淡い光が見え隠れする朧月の下、アネモネとマリーは同じ席に座っていた。特に会話はなく、黙々と酒を飲む空間であったが…いまだ暗い表情を浮かべるマリーに、アネモネは困ったように小さく溜息をつき、呟いた。

アネモネ「…そんな顔をするなら、何か言え」

マリー「いや、その…ルゥルゥさんのことを考えてしまってな。私は自分がした選択を間違っていないと思うが、それでも彼女の最後に胸が苦しくなる…」

アネモネ「…。…彼女の本当の望みを叶えたと、我はそう思うのだ。魔女ではない本当の己に戻れたと。しかし、そんなに心苦しいなら泣けばいい。我はそんなお前の情けない姿を目に焼き付けよう」

マリー「お前なぁ…」

アネモネ「いずれ、それを懐かしむ時が来るだろう」

マリー「こんな風にまた飲み交わしながらか?」

アネモネ「それは無理だなぁ…お前はいずれ老いて死ぬ。私はそれを1人懐かしむのだから」

マリー「またそんな寂しいことを…。確かにずっと傍に居ることは無理だが、私が生きているかぎりは」

アネモネ「阿呆め。いい加減、家族の元へ帰れ。方法なら見つけた」

マリー「…本当か!?」
アネモネの言葉に衝撃を受け、マリーの手の中にあった盃は滑り落ち、地面に零れてしまった。しかし、それを気にする余裕もなく。驚きに大きく開いた青い目をアネモネに向ける。

アネモネ「酒の席の冗談に聞こえたのか?…ふ、やはり帰りたい気持ちはあったようだな。あまりにも我に熱烈で…忘れたと思えたわ」

マリー「な、何を言っているんだ…そうか、帰れるんだな」
連絡ができないまま。一体どれほどの間、心配させているのか…。マリーの脳裏に妻と子の姿が思い浮かぶ。抑えていた寂しさ、そして喜びが込み上げ、自然と涙が溢れていた。

マリー「ありがとう。アネモネ」

アネモネ「そうかそうか。それは良かった。だがな、まだ準備中でな。時が来たら、元の世界に帰してやろう」

マリー「頼むよ」(…本当に懐かしいとすら思える。久しぶりに会ったら、何と話そう。異世界で旅をしていたなんて!)
本当に嬉しそうに笑い、マリーの青い目はまだ遠くにいる家族へ向いていく。吸血鬼は静かにその様子を見つめていた。その顔はどんな表情なのか…ちょうど月は雲に覆われ。闇に隠れてしまった。

アネモネ(…これでいい)

 

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