アドニス「ジル兄、これは一体…?」
目の前で浮かぶ奇妙な光。その向こう側には、いつもどおり唐突に現れた赤髪の魔術師がにやりと笑んでいた。
ジル「僕とクリスの研究の成果…ホムンクルスの素ですよ。まだ手足も、脳みそも無い。要は卵の黄身ですです。さあ、羽化させるために、坊ちゃまの魔力を与え、頭の中にどんな姿にするかイメージするのです」
アドニス「急に言われても困るのだが…」
ジル「以前、僕から色々と教わりたいと言ったでしょう。これが、そう!坊ちゃまの命に従う忠実な使い魔が生まれますよ…きっと。クリスはスイカ頭のへーんなものを作りましたが」
アドニス「…スイカ??」
ジル「さあさあ、そんなことより。坊ちゃま、やってみてください♪」
アドニス「う、うむ…」
ものすごく気になったが、せっかく自分のために用意してくれたものだ。そう真面目に考えたアドニスは、ぎゅっと目蓋を閉じ。頭の中でイメージを作っていく。
アドニス(使い魔か…。大きさは小さいよな…?妖精とか、スイカ頭…いや違う。混ざるな)
まん丸い緑と黒の縞模様が思い浮かぶところで、慌てて左右に頭を振り。アドニスは必死に別のものを想像しようとする。
アドニス(スイカはその辺に置くんだ。俺はそう、そうだ。可愛い妖精を想像するんだ。母上みたいに美しく。明るく、芯が強い性格。心から頼れる存在の…ポニーテールが犬の尻尾みたいで……ぬ?)
浮かんできたイメージに、アドニスは何かが引っかかり———
ジル「坊ちゃま。もう出来ましたよ」
アドニス「…!」
??「…」
目蓋を開くと、光があった場所に子猫のように小さな人が浮いていた。背から4枚の輝く羽を生やし。緑色のポニーテールが空中でゆらゆらと揺れている。
ジル「素晴らしい。またスイカ頭が出てきたら、かち割ってやろうかと思っていましたよ。ひひひひひひひ」
アドニス(危なかった…?)
ジル「ところで、命名しないのですか?名を呼ばないと、ただの人形のままですよ」
アドニス「え…?」
そう言われてよく見ると、緑と黒の衣服から伸びる華奢な手足は力無くだらりと垂れ。僅かに開いた目蓋から覗く黄緑の瞳は虚ろだった。
ジル「思いつかないなら、僕が付けましょうか。……なんかスイカみたいな色の服を着ていますね。…ブッチャー」
アドニス「や、やめ…!この子は俺の…ミアだ!ミア!」
ミア「……卵の時から、この時を待っていました!ボク、ドニちゃんのために頑張ります♪」
アドニス「ドニちゃん???」
ジル「…くひっ」
アドニス「というわけで、新しい仲間のミアだ」
ミア「はーい!ドニちゃんの可愛い使い魔のミアでーす♪よろしくでーす♪」
ルシアン(色々とツッコミどころが多いが…まあ)「俺はルシアンだ。よろしくな!」
ミア「アンちゃんですね。覚えました♪」
ルシアン「アン!?」
ベアトリクス「ふふっ、可愛いね。私はベアトリクスだよ」
ミア「……ポッ。お姉さまって呼んでいいですか」
ベアトリクス「うん?いいよ」
ルシアン「ええー。俺もお姉さま♥って呼んでくれないの~?」
ミア「アンちゃんはアンちゃんですよ~」
デイビッド「確かにアニキをあんちゃんと呼ぶのは似合っていやすねー」
ルシアン「俺はお姉さまと呼ばれたいんだ~」(なんかデイブが言うと、別のニュアンスに聞こえるな…?)
アドニス「妙なことにこだわるな、お前…。あ、デイビッド。ジル兄にメンテナンス(?)してもらっていたようだけど、大丈夫か?」
デイビッド「…特に問題ないっすよ。アッシのあんなところから…そんなところまで…。パパに見てもらうのはドキドキでやしたけど」
ジル「やはり脳みそ取り替えてやりましょうか…。さて、坊ちゃまの手紙も預かりましたし。用事は終わったので、僕はもう帰りますね」
アドニス「いつもありがとう。ジル兄。お元気で」
ミア「ばいばーい!ジジちゃん♪」
ジル「ジジィッ!?」
まさか自分の短い名前に愛称を付けるとは欠片も思ってなかったジルは驚きの声を上げた。だが、その瞬間に移動魔法が発動し。困惑した表情のまま、魔術師は姿を消した。
ミア「じゃーん!これがボクのステータス表ですよ♪頑張って書きました~」
アドニス「うむ、よく出来ている。……半妖精?」
ミア「ボクは使い魔になったばかりのひよひよのひよっこ。な・の・で~、半妖精なんですよー」
アドニス「そう、なのか…?」(……生命力とマナが低いな…。俺がちゃんと集中してなかったのが原因なんじゃ…)
ミア「ドーニちゃん♪」
半妖精はふわりとアドニスの顔の前に飛び。少年の柔らかな白い頬を小さな手でむにりと掴んだ。
ミア「これからどんどん成長するキュートなボクをいっぱい見ててくださいね~」
アドニス「…ああ、しっかり見るよ」
ミア「まあ、ボクは賢いので。成長前から、知者の加護、幻影の矢、癒しの手、と色々な魔法が使えますけどね」
アドニス「なるほど…しかし、LV1は心配だ。ミア、この中に入ってくれ」
ミア「はー………い??」
元気よく返事しようとするミアだが、アドニスが指差す物を見て固まった。
奇妙な機械が付いた筒状の硝子容器。それは遺伝子複合機だ。無機質な中身は、進んで入りたいと思えない不気味な気配が漂っていた。
アドニス「大丈夫だ。ルシアンや他の皆にも”やった”から慣れている。うっかり阿修羅や馬に合成して、部位を増やしたりしないぞ」
ルシアン「そうだぞ~。抵抗なんて意味がないと悟るほど…一瞬で終わる」
デイビッド「アッシは思考を止めましたぜ」
ベアトリクス「…頑張って、ね」
ミア「ふええ…」(可愛い顔して、えげつないよー)
カスタム種族【半妖精】妖精の生命力とマナを半分にしたものです。半人前という意味でも有りだと思ったが、強力な魔法使いならベアが居るという理由で、HP・MPを弱めに設定しました。
職業を司書にしたのは魔法書+2、3とかの威力はどういうものか気になったので。それなら、攻撃魔法無しにするべきか悩みましたが…そういえば、CNPCならカスタムな魔法を設定できたことを思い出したので。妖精らしく、幻影の矢を使えるようにしました。
アドニス「次は装備だな。ミアに合いそうな物があっただろうか…?」
ミア「わぁ~…ごちゃごちゃしていますねー…」
ルシアン「ふっふっふっ…驚愕するといい。マメな俺ですら、どこに何があるのかわからねえ状態なんだぜ」
アドニス「まるで俺が片付けできないみたいじゃないか。ちゃんとわかって…………?」
少年は無言になり、黙々と散乱する物をひとつひとつ確認しはじめた。
デイビッド「こりゃ~長くなりそうでやすね…」
ミア「あ~~!ダメですーダメですー!困ります~~~~っ!!ボク、こういうの我慢できないんです~~~~~っ!!整理整頓しましょう!今すぐ!」
アドニス「ぬう…どれもこれも捨てるにはもったいないと思えてな」
ベアトリクス「それなら、その物品を必要としている人に渡るようにお店を作ったらどうかな?」
ミア「ナーイスアイデアでーす!お姉さま♪」
アドニス「店か…確かにそのうち設置しようと権利書は買っていたな。よし、建てるとしよう」
大海が見える平原、山脈の向こうには混沌の城。人々が行き来する街道など一切見えない、ノーティリス端にある小さな森の中に、突如として店が現れた。
アドニス「ここなら自宅から近いし。景観も素晴らしいな」
ミア「外出てから思いましたが、すごい僻地ですね…。でも、ボク。店員として頑張りますよー!」
アドニス「ミアが?」
ミア「ボクが言い出したことですからね。責任はしっかり取るのですー」
アドニス「ありがとう。それでは張り切って、内装を作ろう」
アドニス「と言っても、置ける家具が全然ないが…すまない」
ミア「わああああ~~~っすっごーい素敵ですよ~~~!こことかあそこに本棚をいっぱい並べたいですね♪」
アドニス「本?」
ミア「ボクの職業は司書ですので。ここを図書館にするのです!」
ルシアン「それなら本屋じゃねえのか?」
ミア「図書館って響きが良いんですよー!もー、わかってないですねえ」
アドニス「そうだな。ルシアンはわかってないな」
ルシアン「ええー…?」(…すっかり仲良しだな。あいつ…ジルが作ったホムンクルスの素から生まれたって話だけど、そんな気にする必要はないか)
突然だが新キャラ登場回でした。2つ建てた倉庫がいっぱいになってきて。そろそろお店を作ろう→店員ポジションの子が欲しいと思ったのでね。ミアはジルと同様裏表がないセリフをぽんぽん書ける子で、すごく動かしやすい子ですね。
おまけの動画習作。いい加減、編集を覚えようと作ったもの。とりあえずアイコンを使用しましたが、本格的に作成する場合は立ち絵を置きたいですね。
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