もうひとつのED

ぷよ魔導

声が聞こえた。
低く穏やかそうな、感情がこもってない冷たい男の声。
「200年前・・私の肉体は勇者に砕かれ、そして魂は今あなたに・・。
ですが、これで終わりではありませんよ!
すでにあなたの魂には闇の種が植えられ、芽が顔を出しました。  私にはわかりますよ・・いずれ咲く花の色が美しい闇の黒であるというのが・・・!」
それは呪いの言葉。
自分を永遠に縛り付けることになるだろう、呪いの言葉だ。
「さぁ、疲れたでしょう?眠りなさい・・・シェゾ=ウィグィィよ」
「・・・・」
眠くないはずなのに、目蓋が重く落ちていく。
暗い闇。
暗い闇に、
落ちていく。

「・・・!」
ひどく眩しかった。
あまりにも眩しくて、目蓋を開く。
少年の蒼い目に映ったのは、青空だ。
眩しいほど明るく。
眠る前までシェゾが迷い込んでいた暗い地下の迷宮の闇が嘘のようだ。
あれは夢だったのか?
変なおっさんの声に導かれて、
変なネズミ顔の老婆に、お前は変態になる運命なのじゃ。と言われ、
変なクジラみたいなモンスターにキスを奪われそうになって、必死に逃げ回って、
変なしゃべる剣に、一生そなたについていくぞ。と強制的に主にされ、
変な仮面の男に喉乾いただろうと、強引にあやしい水を飲まされ、
最後にルーンロードと名乗る男に、無理やり闇の魔導師の資格を継承させられ・・・。
それで、どうなった?
見たかぎりここは地下迷宮ではなく、元の地上のラーナ遺跡のようだ。
いつ移動したのだろう自分は?
誰かが?ルーンロードという男は滅ぼしのだから、自分をここに運べるわけがない。
迷宮で何度か、姿を現した仮面の男か?
まぁいいや。
とりあいず宿に戻るか。

「?」
わけがわからなかった。
どうしてこうなっているのか。
わけがわからなかった。
「・・なんだよ。これ・・!!?」
泊っていたはずの宿は、まるで長い年月が経ったように荒れ果て廃墟と化していた。
道を間違えたのか?
いや、間違えるわけがない。
あの大きな木を目印して・・けれど、あの木この前見た時はもう少し小さかったような・・・。
胸にざわざわと嫌な感じ。
理解できないことが起こっている。
シェゾは走る。
ひたすら走る。
辿りつくにはまだ距離があることはわかっている。
けれど、走る。
家族が、友人が、自分が知るはずの、自分が住んでいた町へ、走る。
何か取り返しが効かない何かを追いかけるように。坂へ転がった石はもう止まらないのに。

 

2010/3/9
公式の平和なエンドも良いけど、こんな展開も