慣れあい

 その人の髪は銀色で、俺と同じ色。
 その人の瞳は鮮血ように赤く、その白い肌を血で染めたらとても綺麗だと思える。
 冷たい石畳みに散る絹糸のような髪に少年は血で塗れたで触れて、指に絡める。
 手のひらの中で、鈍く光る剣を踊らせる。
「あっ・・うぅっ」
 薄い唇から洩れる声。
 低い、けれど男らしさをあまり感じさせない声。
 顔立ちも柔和な印象で、神話の中性的な神のような美しい顔だ。
 けれど、その男は闇の魔導師だと名乗る。
 邪悪な、人々に忌み嫌われる悪の魔導師。
 そして、自分も同じ闇の魔導師だという。
 シェゾ=ウィグィィ・・神々を汚す華やかなる者。
 この世に生まれた瞬間から、闇の魔導師となる運命だという。
「なら、俺が貴様にこんなをするのも運命なのか・・?」
「そう・・ですね・・・シェゾ=ウィグィィ」
 疲れたように彼は答える。
 人形のような作り物の笑みを浮かべて、シェゾの頬に触れる。
 長い細く指、冷たい感触でますます人形のようだ。
 いや、死人か。
 遙か昔に勇者によって滅ぼされた悪の魔導師。
「勇者にも、こんな風にされたのか?」
「人の身体をこんなふうに床に縫い付けて、眺めてる変態ではなかったのは確かですが」
 ルーンロードの手のひら中心には深々と刺されたナイフがある。赤い血が溢れ、彼の銀の髪を赤く染めている。もう片方の手はシェゾの手に押さえつけられている。
「俺をおかしくしたのは、貴様だろう」
「ええ、そうですね」
 あきらかに不利状況だというのに、その男は微笑む。
 諦めたように、どうでもよさそうに、
「・・・・」
 その顔に、よけい腹が立つ。
 シェゾはもう片方の手で、その男の首をしめつける。
「・・・・!」
 小さく悲鳴がもれる。
 苦しげに歪む顔。
 苦しげに歪む顔。
 ああ・・まったく茶番だ。
「いい加減に演技をやめろ!死人のくせに!」
「・・・おや。つまらなかったですか?このような趣向がお好きかと、思ったですが」
 そう答えたルーンロードはシェゾの身体をすり抜けて、彼の背後に立つ。
「いいいっ、いきなりすり抜けるな!?寒気がするじゃないか!」
 実体がない亡霊だと理解してるとはいえ、心臓に悪い。
 振り返ると、ルーンロードはクスクスと笑っている。慌てるシェゾの様子がおかしいようだ。
 よけいに腹が立つ。
「年寄りに無茶させた罰ですよ。まったく実体化するのにどれほど力を使うと思っているのですか」
「知るか!俺はただ・・最近触ってくれないから・・」
「死人がべたべた触ってきて気色悪い、と言ったのは誰でしょうねぇ」
「うるさい!そんな言葉忘れろ!」
「なら、ちゃんとお願いしてくださいよ。いきなりナイフを刺されて、押し倒されてではわかりません」
「・・・・。え・・っと・・」
 頬を赤く染めるシェゾ。
「だか・・ら・・」
 たった一言、そのたった一言を言えば済むのになかなか言えない。
 プライド高い、というか素直ではないシェゾはなかなかその一言を言うことできなかった。
「恥ずかしいですか?・・私の中なら言えますか」
「は?」
 わけがわからず、間が抜けた声を出すシェゾ。
 本当に可愛らしい。
 ルーンロードはそう笑って、少し開いたシェゾの唇に自身の唇を重ねた。
「さぁ」
 口の中で囁く。
「ん・・」
 けれど、息をもらすだけで言葉を発することができないシェゾ。
 じれたくって、侵入させた舌を彼の柔らかい舌に触れさせる。
「・・・うぅん。は・・・」
 甘い息をもらすだけで、なかなか答えない。
 少し苛立ったので、舌を絡めさせて深く口付ける。
「・・・っ!!」
「おっと!」
 顔を真っ赤に染めたシェゾは、思い切りルーンロードを突き飛ばした。
「言えるかぁぁっ!!はぁはぁ・・」
 息を切らしながら、シェゾはそう怒鳴りつけた。
「遅いあなたが悪いのです。ごちそうさまでした♪」
 そう言い残して、ルーンロード消えてしまった。
「あ!・・・・」

 やり逃げ

 そんな単語が頭が思い浮かんだ。
「・・・たった一言なのにな」

 抱いてほしい。と、

 

2009/12/23