「キミはどんな魔導師になりたいの?」
そう聞かれた。
突然で、言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
「なぜそんなことを聞く?」
読んでいた本のページから視線を移して、シェゾはいつのまにか横に立っていた少女を見た。
午後の柔らかい光に淡く輝く茶色の髪。琥珀の瞳はじっとこちらの目をのぞきこんでいる。
俺の得物である女・・アルルだ。
「なぜって、聞きたいから・・言いたくない?」
「・・そんなことを聞こうとした?」
気になったのは、質問した理由だ。
なぜ急にそんな質問したのだろう?
お前にとって俺は・・・。
「ただ・・ボクは何にも負けない強い魔導師なりたいと思っているけど。シェゾはどんな魔導師を目指しているかなと思って・・」
「・・俺が闇の魔導師であることを忘れてないか。お前」
まったく、くだらない質問だ。
「俺が目指すものは、闇の魔導師としての運命を果たすことだ」
「運命って何?」
「・・・俺は・・」
返す言葉が浮かばない。喉に何かが引っ掛かっている。
そんなのわかっているならとっくの昔に行動を起こしている!内側に広がるじわりとした感情。ひどくいらついた。
「・・・・今はまだ時期ではないということだ。いずれ答えは見つけだすさ」
「ということは、今ははっきりとした目標がないってことだよね」
「あるさ」
「わっ」
ぐいっとアルルの腕を引くシェゾ。
「お前が欲しい」
「やーだよ!」
それをあっさり断るアルル。掴まられた手のひらに魔力が集中する波動を感じた。
アルルはシェゾの顔へ魔法を放つ。
「ファイアー!」
「フッ・・残念だな!」
感知していたシェゾは火の玉をスレスレに避ける。
「さぁ・・俺の一部となれ・・」
「ぶっぶー♪ダミーでしたー」
「はぁ!?」
アルルのもう片方の手を見ると冷気を纏うアイスブルーの光が・・・!
「じゃあね!」
そう言い残して、書庫から出ていくアルル。残されたのは下半身を椅子ごと氷漬けされたシェゾであった
「・・・・・・運命ってなんだろう・・」
運命どころか、自身の今までの人生すらなんだっただろう思いはじめるシェゾ。
それから数分後にカフェオーレを持ってきたアルルに謝ったのか、更にケンカになったのかはまた別のお話。
2010/3/7
ちょっとした会話と喧嘩と仲なおりです