アネモネ(…黙したまま…何も語らぬ…神は…)
ローブの女性「人間…?どうしてこの場所に…。いえ、それよりもオマエ、まさか…」
アネモネ「我のことを知ってるのか?」
ローブの女性「……。そうね…まだ決めつけるのか早計か。何でもないわ、忘れて頂戴」
アネモネ「…?」(フードの影でよく見えぬが、どこかで…?いや、まさかなー)
旅の賢者「そう。アネモネというのね。春の風に咲く花の名…フフッ、気に入ったわ。それではアネモネ、早速だけれどオマエに一つ頼みたいことがあるわ。先刻述べた通り、私は歴史と神話の研究のために、しばらくノースティリスに留まなければならないの」
アネモネ(よく通る綺麗な声。電波で聞いたことがあるような…)
旅の賢者「けれど、私自身はこの地を訪れてまだ日が浅く、周囲の地理にも明るくない…。そこでアナタに長期滞在用の宿の斡旋と、店までの道案内を頼みたい…」
アネモネ(ローブを纏っていてもわかる整った肢体である。後ろから見たら尻の形が見えるだろうか?)
旅の賢者「まさか嫌とは言わないわよね?この私じきじきの依頼なのよ。本来なら泣いて喜んでも良いくらい栄誉なことなんだから」
アネモネ「ヴェントが興奮しそうな…。いや、その依頼を受けよう。”女神”かのように麗しい御婦人のエスコートが出来るなど、光栄である」
旅の賢者「…それじゃあ、お願いね」
街の湖面に反射した陽光が噴水のように煌めき、大理石に刻まれた彫刻の陰を浮き彫りにする…。
ーーーールミエストの宿から覗くその景色は、どこか儚げで、幻想的な雰囲気に包まれていた。
旅の賢者「凄い、凄いわ…。地上にこんなに美しい場所があったなんて。それにこの活気…。生きとし生けるものの感情がさざめき、それぞれの個を主張している」
アネモネ「そなたなら、ここが気に入ると思ってな。どうやら正解であったようだな」
旅の賢者「空から眺めているだけでは全然気付かなかったわ…。これがイルヴァに息付く血潮…生命の鼓動…」
彼女の瞳が映し出していたものは、街並みを駆け抜けていく子供たちであり、あるいは二人連れで歩く老夫婦の姿…。緑の木々とそよぐ風…。
ーーーー何のことない…。それは、とてもありふれた日常の景色だった。そんな当たり前の光景を、彼女はひどく眩しげに、そして愛しげに見つめていた。
旅の賢者「ああ…世界はやはり美しかった…。私達が守り続けてきたこの箱庭には、素晴らしい可能性と未来を形作る意思がしっかりと根付いていた…。彼の者たちはこうしている今も限りある生命の灯を燃やし、輝いているのだから」
アネモネ「…」
旅の賢者「ーーー礼を言うわ。私はこの場所が気に入った…。実を言うと少し迷っていたのだけれど…オマエに依頼したのは正解だったみたいね。…オマエは、この世界のことが好き?」
アネモネ「ああ、好きだぞ。その地で生きる人々もな」(なぜ、そんなことを聞く?我に依頼したのは気まぐれでは無さそうだな)
旅の賢者「そう…それを知ることが出来ただけでも、今回の私の旅に価値はあった…。そういえば名乗るのが遅れてしまったわね。私は…そう、とりあいず今はウィルルと名乗っておきましょうか。オマエ達がよく知る、風の女神からあやかった名前よ」
アネモネ「ああ、美しいそなたに相応しい名であるな」(そのとおりだが…。まあ、ある意味愛らしいか)
ウィルル「世話になったお礼に、アナタは私の部屋に出入りすることを許してあげる、フフッ。光栄に思いなさい、冒険者さん?次に会う機会を楽しみにしているわ」
そう言って、ウィルルと名乗った賢者は輝く光の礫の中で小さく笑った。切れ長の視線が瞬きと共に不意に途切れ、淡く細められた双眸があなたを見つめる。その笑顔は、無垢な少女のように透き通り、ただただ美しく輝いていた…。
アネモネ「という経緯で知り合ったのである」
エリザ「しばらく姿を消していると思ったら…そう、そうでしたの」
アネモネ「寂しかったか?それはすまなかった。なら、エリザよ。我と2人きりで、デートしないか」
エリザ「な、何を言っていますの!別にあなたがいなくて静かで…寂しいとか思ってないんだから!勘違いしないで」
ジル「僕もマスターとデートしたいですですー」
ドラクル「ふふっ。私もしたいですね」
アネモネ「…それより、本題に移るとしよう。我がこの宿を紹介した数日後から、下から地鳴りのような音が聞こえるようになってな。地下といえば以前掃除した下水道。それで専門家に聞いたところ…」
エリザ「恐竜ですって!?」
アネモネ「あまり大声を出すのではない。住民に混乱を招くから、内密に退治してくれと頼まれてな」
エリザ「そうですの…。けど、ウィルルさんに私たちの会話が聞こえていると思うのですけど」
アネモネ「騒音に風で切り刻んでやると、嵐のように荒れていてな。くろてん…侍女が、街が吹っ飛ぶからやめてくださいと、なだめていたようだが…。事情を話し。やっと落ち着いたところなのだ」
ウィルル「私を怒らせるものなんて、風で消し飛ばしてやりたいところだけど… 私の力を下水道で使ったら地下が崩れる可能性があるわ。私からもお願いする。美しい街を壊す騒々しい無礼者をミンチにしてきなさい」
アネモネ「入って早々に恐竜がおるとはな。前はきのこ、スライム、塊の怪物などのモンスターが溢れていたが。…そういえば、本で読んだことがあるな。その下水道は地上にある街以前からあった古代都市であり、その深奥部には旧文明の遺物があると」
ドラクル「そして、丸い巨体に一つ目と口を持つの魔法生物が潜んでおり。10本の触手に付いた小さな眼から発せられる光線によって石化され、永遠に動かない石像となる。という話でしたね」
アネモネ「この下水道もネフィアに繋がっているかもしれんな。ふふっ、楽しみだ」
エリザ「キャー、でっかいトカゲですわ!」
アネモネ「トカゲにしてはゴツいと思うぞ。この場所にいるということは恐竜の一種なのだろうか?」
アネモネ「ぬわっ!?丈太郎っ!?…いや、違うな。丈太郎より弱い。そして、頭からかぶりついてこなそうである」
エリザ「たまに昔、旅を共にした仲間のお話を聞きますけど…その方(恐竜)は本当にお仲間ですの?」
アネモネ「…たぶん?」
アネモネ「これはロストランドで見た蛇より大きい… いや、太いのか。長さはヨルムンガンドが上であろうか?」
ドラクル「剥製にして見比べたら、よくわかりそうですね」
アネモネ「うむ。こやつも恐竜だろうし。見つけ次第ミンチ、サーチ&デストロイである。貴様も剥製にしてやろう」
ドラクルは『エンシェントサーペント』を射撃し ミンチにした。
アネモネ「ふはははははははははっ!恐竜は絶滅したのだ!」
古代生物の尻尾を切り落とし、頭部を潰し。勝利を確信した吸血鬼は高らかにそう宣言した。
エンシェントサーペントの胴体「………?!!!!!!」 残された胴体はくねらせながら、激しい体当たりをしてきた!
アネモネ「おおおっ!なんという生命力である」
エリザ「興味津々に見ている場合じゃないですわよ!」
*ブシュ* エリザは『エンシェントサーペント』の胴体の首をちょんぎり 殺した。
エリザ「…?自分でやったことなのに。とても不思議なことが起こったような気がしますわ」
アネモネ「エリザよ。何事もふかーく気にしないのが1番である。倒してやったー♪で、良いではないか。何もともあれ、騒音の元が消えたのである。報告に行くぞー」
エリザ「…ウィルルさんのもとへ?」
アネモネ「いや、掃除屋のもとにな。今は服がびしょ濡れに汚れているのである。彼女には後で報告へ行くが…。そのように気にしなくても、我はいつもエリザの傍にいるであろう」
エリザ「少し前、いなかったですわ」
アネモネ「それは…すまない。だがな、ずっと側にいることは無理だ。ここ最近、知ることや調べることが多くてな。またふらりと姿を消すだろう」
エリザ「…それはあなたにとって大切なことなんですね。わかりましたわ。私、あなたが急にいなくなっても、ずっと待ちますわ。…我慢できなかったら、あなたを殴りに探しますわ」
アネモネ「はは、頼もしいな。我はかならず帰る。それだけは約束しよう」
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