クレイモア吸血鬼の旅行記51 ノヴィスワールド-世界でたったひとつの花-

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』



アネモネ「ヨウィンも変わりないであるなー」

ジル「そうですね、マスター。昔と変わらず、いつでも食べれるお野菜に。美味しそうな馬がいっぱいですです」 そう返事し。吸血鬼にべったりと抱きつく少年。

アネモネ「…」(悪夢の世界から帰ってきたから、ずっとジルが甘えてくるな~。…我が消えた後は泣きながら大暴れし。大変だったようだしな。しばらく好きにさせるか)

エリザ「…」*じー*

アネモネ(なにやら、視線を感じるのである。これは…)「ふふふっ。エリザもこの前、急に我がいなくなって寂しかったであろう。ジルのように抱きついても良いのだぞ」

エリザ「な…なにを言っていますの!私は住民が往来する場所で、そんなベタベタとくっついて歩いているなんて…迷惑じゃないかと思っただけですわ!」

アネモネ「そうかそうか。人目がない場所なら、いくらでも我に甘えたいとな」

エリザ「そんなこと言ってませんわよー!」
グウェン「あ…こんにちは。なんだかとっても久しぶりだね。えっと…今日はお姉ちゃんなんだね」

アネモネ「おお、久しいな。昔と変わらず愛らしいであるな~」 吸血鬼はグウェンの頭を*なでなで*した。

エリザ(”今日は”…?聞き間違いかしら…?)



アネモネ「むう…?そんなことがあったような…?」

エリザ「曖昧な言い方ですわね」

アネモネ「あの娘の美しいフトモモなら…おっと」

エリザ「聞こえましたわよ。今、フトモモと…!」
グウェン「え?よく覚えてないの?だったら、ここから北にあるアチュアンの樹海に行ったらみたらどうかな?今は危ない動物も見当たらないし、散策するのも特に問題ない筈だよ」

エリザ「まあ、素敵。行ってみましょう。ねえ、あなた」

アネモネ(ものすごい圧を感じるのである)「わかった。ふ、そんなに素晴らしくも麗しい我が活躍する伝説を聞きたいなら聞かせてやろう!」



エリザ「このお墓は…?」

アネモネ「花たちの墓だ。まあ、我の話を聞くがよい。…たしか旅行記のこのページに書いていたな。ええと、ラーネイレは…いや、これはいい。手料理はカレー。グウェンの頭は触り心地良い…?」

エリザ「なんですの?その雑多なメモみたいな内容は」

ジル「マスターはカレーが好きだと知っていますけど、メモするようなことが起きたのですか?」

アネモネ「う~む。過去の我は気になったことだけ書いたようだな。他には…特異な存在となった花。植物にも心が宿り、外部からの何らかの刺激でモンスターへ変じることが…ああ、思い出してきた。かつて、ここは生贄の森と呼ばれていたのだ」

エリザ「え…!?」


古代樹の群生するアチュアンの樹海最奥から、突如として出現した”呪いの花
大木をなぎ倒す巨体の魔獣は獲物を捕食する牙を持ち。人獣の区別なく次々と近傍の村落を襲い。幾多捧げられた娘たちを容赦なく喰らい続けたという。

初めて姿が確認されてから三月。
東方の地ヴィンデールから訪れたエレアの冒険者によって退治されるまで、魔獣はおよそヨウィン地区の三分の一を自らの縄張りとし。その恐怖はお伽噺として、シエラ・テールに至る現在まで語り継がれている。


アネモネ「そして、3年ほど前にその魔獣が甦り。無邪気な少女は己の意思で森へ行ってしまったのだ。ちょうど1人で夜の散歩していた我はグウェンの家族から事情を聞き。美人に成長する可能性がある幼女を生贄にするなんて…!と。急いで、森の奥へ向かったのである」

エリザ「あなたらしい理由ですわね…」



アネモネ「我はその道中で様々な者と出会ったような気がするが…そんなことはどうでもいい」


ーーーーその花は陽の当たらない木陰の中で生まれた。か細い茎と色の抜けた萌芽の弱々しい姿。それでも、生きようと光を求めて萎びた葉枝を伸ばしていると。
「こんにちは。あなたはとても優しい”声”をしているのね」と、銀髪の少女が話しかけてきた。その娘は自然の言葉を解する不思議な能力を持っていた。
毎日、花のもとへ訪れるようになった彼女は、鳥や木々の声を聞き、季節の移ろいを朗らかに歌った。光の中、少女はただただ美しく輝いていた。…花は人間の少女に恋をした。
花は変わりたいと思った。大きく丈夫に、どんな存在にも負けない存在になりたい。大地に根を張り、枝を伸ばし。葉を茂らせ、仲間から光を奪い。花はいつしか立派な若木へ成長していた。そんな花に、少女は寂しげな視線を向けた。
周囲の木々から糧を奪い。周りには草の根一つも残ってないことに、大木となった花は気づくと。更に根を伸ばし伸ばし、蜘蛛の巣のように海の溝まで根で覆った。やがて、大地の臨界…星の岩盤の境目にたどり着いた花は《厄災》と出会う。
ソレは、仲間たちから決して触れるなと教えられていた、星を蝕む猛毒の集積だった。試しに少しだけ吸い上げてみると、力が滾り。軋んでいく身体に構わず、花はソレを夢中になって食べ尽くした。
足を得た花は土を食み、木々を食み、鳥を食み、獣を食んだ。花は、花とすら呼べない異形へ変わっていた。…泣きながら自分の名を呼ぶ、とても綺麗なものの首を噛み砕いた時も、『花』はもう、何も感じることはできなかった…


アネモネ「最初は耳を疑ったが…古代樹と呼ばれる。古の魔力を宿した植物たちの言葉から、我は花の過去を知った。愛する者のために強くなりたい。その心は素晴らしいと思うが、相手の気持ちを… いや、もう過ぎたことだ。我が眠らせてやろうと、そう思ったのである」



アネモネ「森の奥へ進んでいくと、そこにはグウェンに襲いかかる魔獣。そして、彼女を庇うラーネイレの姿が見えた。足を負傷し、うまく動けない様子であった。我は駆け、大剣で魔獣の攻撃から彼女たちを守ったのである」

ジル「わぁ、マスターかっこいいですです♪」

アネモネ「ふふっ。そうであろう♪そうであろう♪」

エリザ「話盛ってません?」

アネモネ「なっ!?ホントであるぞー!」



アネモネ「そうだ…ラーネイレは助けられたお礼に手料理をしてくれると約束してくれたのだ。それで我はカレーが良い、と答えたのである」(…鮮血に彩られた白いフトモモに興奮するあまり、付き合ってくれぬか!と連呼したような気がするが、気のせいである)




アネモネ「ラーネイレにグウェンを任せ。我は禍々しい触手の猛攻をファイアボルトで焼き払い。哀れな獣を葬ったのだ。…だが、”花”はまだ生きていた。何かを求めるように枝を弱々しく伸ばしていた。グウェンは泣きながら、けれど穏やかに話しかけた。もう頑張らなくていい。おやすみ…と、優しく撫でる少女の腕の中で魔獣は眠り、朽ちていった。そして、その地から一輪の白い花が咲いたのだ」

エリザ「そんなことがありましたのね…」 少女は改めて、墓を見つめ。静かに祈りを捧げた。

アネモネ「ふふっ、乙女にまた想われるとは…幸せものめ」

ドラクル「長々と話されて、喉が渇いたでしょう。どこかでティータイムされませんか?お嬢様」

アネモネ「そうするか。たしか、途中で見かけた場所が良さげであったな。そこへ休息をするとしよう」

 

 


アネモネ「…」(どんなに弱くても、儚いものであろうと。その中で懸命に生きるこそ、美しい…か)

吸血鬼は星光りの下で見た。エレアの少女の双眸を思い出していた。下僕たちには話さなかった、最後の別れを。

アネモネ(何か追われるように、急いだ様子で去っていった彼女を…。いや、強く決意した瞳は揺らぐことはないだろうな。彼女は彼女の意思で、花のように短い命を散らした。だがな、いまだ納得いかぬのだ…)
そう思い耽りながら、歩いていくと…


ラーネイレ「あなたは…アネモネ?一体、なにが…。私、どうしてこんなところに…」

アネモネ「な…!?」

 


アネモネ「そなたは3年前に森と共に燃えた、と… 何が起こったのだ?」
ラーネイレ「私…よく覚えていないの…。どうして自分が此処にいるのか。一体今まで何をしていたのか…。ヴェンデールの森が包囲されたあの時、私も確かに里を焼く炎に巻き込まれた筈で…。なのに、そこから先の記憶が…、靄がかったように何も思い出せない…」

アネモネ(《常闇の瞳》に記されているところで、記憶が止まっている…?)
ラーネイレ「ただ…。私はずっと…長い、長い夢を見ていて…その中で、どうしてかあなたに名前を呼ばれた気がしたわ…」

アネモネ「我が…?」(夢…ううむ?何か、引っかかる感覚があるのだが…?)
ラーネイレ「ふふっ、ごめんなさい。変なことを言って。ただの夢の話なのに。きっと奇跡的に命が助かったということなのよね。…また会えて嬉しいわ、冒険者さん。随分と旅姿が堂に入っているけれど、あなたの目は初めてティリスを訪れたあの頃と何も変わっていないのね」

エリザ(私が知らない頃を知っていますのね…ちょっと羨ましいかも)
ラーネイレ「広がる世界への憧れと探求心を決して失わない、とても純粋で透き通った瞳…。この3年間で、あなたはあなたの求める何か見つけることが出来たのかしら?」
エレアの少女の言葉に、吸血鬼は下僕たちを一瞬見つめてからにやりと笑う。その様子に、ラーネイレは言葉が無くも理解したように、クスリと笑った。
ラーネイレ「…私も、旅を続けなければ。ヴェンデールの生き残りの一人として、私にはまだ出来ることが有る気がするの。それに、森を追われたエレアの民の行方が気がかりだから」

アネモネ「そうか。だが、3年の間に色々と変わっておる。とりあえず、ここら辺を拠点に旅すると良いかもしれんな」
ラーネイレ「…えぇ。もうしばらくはノースティリスに居るつもり。だから。これからは、同じ冒険者としてよろしくお願いするわね。冒険者さん」
そうエレアの少女は微笑んだ。あの日と変わらない姿に。花は枯れても、また美しく咲くのだと…吸血鬼は嬉しくなった。だが、

アネモネ(こうして話していて、本物だと思えるが…不明な点が多すぎるな。……様子を見るしかないか)

 

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