クレイモア吸血鬼の旅行記118 空即是色

elonaプレイ日記踊れ月光『アネモネ』


血と享楽で戯れる吸血鬼が住んでいるという噂の城の一室に響く…可愛らしい少女の鼻歌。

エリザ「ふんふんふ~ん♪」

マリー「順調に進んでいるみたいだな」
少女が操る2本の細い棒から伸びる赤い毛糸。首に巻くにはちょうどいいマフラーの形になっているが…所々穴が開いている箇所がある。

エリザ「ええ。ちょっぴり変なところあるけど…最後までやり遂げることが大事だから。手間取っている間に寒い季節は過ぎちゃったけど」

マリー「大丈夫さ。あいつなら、いつだって喜ぶだろう」

エリザ「ふふっ。今はマフラーですけど。いつかは靴下や帽子も作りたいですわね。自分が作ったものを子供に着せたいですわ」

マリー「え…?その…おめでとう?」

エリザ「あら…勘違いさせちゃいましたわね。”まだ”ですわよ」

マリー「そ、そうなんだ…はは。アネモネとエリザの子供か。いつか私の子に会わせてみたいな」

エリザ「うふふっ。マリーと同じように、すぐ親友になってしまうのかしら」

アネモネ「………。随分と楽しそうだな」
和気あいあいとした空気が流れる中、吸血鬼は現れた。ちょうどエリザとマリーの間から忽然と。

エリザ「きゃ!?普通にドアをノックして入って来てちょうだい!」
少女は慌てて、作りかけの編み物を横に置いていた紙袋にしまった。…僅かに赤いふわふわしたものが飛び出している。

アネモネ「…それはすまぬな。準備が終わってな。マリーに知らせようと急いでしまった」

マリー「そうか。じゃあ、今すぐ行こうか」

アネモネ「うむ」

エリザ「…」
慌ただしく去っていく2人の背を少女はジッと見つめる。何か言いたげに…きゅっと唇を噛んで。

 

~ダンジョン~


アネモネ「いつもどおりの強化ポーション+64。そして、舞台も馴染みの大聖堂。相手は…」

マリー「マニ」

アネモネ「そやつは手強いぞ。遠距離からのみだれうちが危険で…」

マリー「マニ」

アネモネ「やれやれ…お前はこう決めたら変えない頑固な奴であったな。良いだろう。気が済むまで、戦え」


願いの言葉にその名を唱えれば現れる、《機械の神マニ》。その手には新しく生成したオリジナル《ウィンチェスター・プレミアム》が握られている。綺麗に整った顔は、相変わらず無表情だが…「またこいつらか」という冷めた目にも見えた。

マニ「…」

アネモネ「今回もよろしくサンドバッグになってくれマニ」

マリー「よろしく頼むマニ」

マニ「貴様ら、わざとやっているだろう…」



アネモネ「強化ポーションは飲んだな?生命の杖と浄化の杖はしっかり持ち物にあるな。よし…我は最初の一撃だけを与える。後は契約が途絶えぬように鼓舞するだけだ。…本当にそれ以外、何もしないぞ」

マリー「ああ、わかった。見守っていてくれ」
そう言って、マリーは吸血鬼に微笑む。そこに恐れは無く、しかし不遜な自信でもない。ただ真っ直ぐと、勝利を求める戦士の瞳だ。

アネモネ「…」
マリーはなぜ挑むのか…理由はわからない。闘争心か、意地か、両方かもしれない。そう考えながら、アネモネは自分が口元に笑みを浮かべていることに気付く。これから始まる戦いはどんな結果になるのか…楽しみだと、心が躍っているのだ。…少しだけ、心配はあるけれど。


勇猛果敢に大斧を振るうマリー。付与された雷撃がビリビリと機械の身体に衝撃を与え、麻痺させる。しかしマニは冷淡な顔のまま、オリジナル《ウィンチェスター・プレミアム》のトリガーを引く。発射され、散乱した細かい弾丸がマリーに命中し。赤い絨毯に多量の血が飛び散った。

マリー「…っ!」
苦痛に顔を歪ませながら、マリーは生命の杖+1を振るう。瀕死から全快するが…


《機械のマニ》は時を止めた。
斧を振ろうとしたポーズのまま静止するマリー。まるで今にも動き出しそうな彫像だ。マニは何の感情もなく、ただの的に当てるように。マリーへ銃口を向け、射撃する。回避不可能の弾の豪雨を浴び、マリーは無残にも息絶え…いや、


マリーは回復した。マリーは回復した。マリーは回復した。マリーは回復した。


———時は再び動き出した。
幸運の女神の気まぐれか。マリーは立っていた。しっかり両足で、いくつも負った傷から血が流れようが、戦う意思を失うことなく《破壊の斧》を握りしめて。

マニ「なかなかやるじゃないか」

マリー「私は…負けないっ!絶対に…!」

マニ「気に入った。…その生身を捨て、機械にならないか?」


《機械のマニ》はマリーを分解した。

マリー「っ!?」
紺色のゆったりした袖が裂け、マリーの健康的な肌が露わになった。だが、それだけで終わらない。皮膚が剥がれていく…まるで林檎の皮を剥くように。引き締まった筋肉も解体されるように分離し…骨が見えてきた。生きながら分解される。あまりにも恐ろしい光景だ。気を失ってもおかしくないほどの激痛がマリーを襲う。

マリー「うっ…ぐぁ……ああああ……っ!!」

アネモネ「…」
吸血鬼は見るだけだ。そこに焦燥は無く。冷たいほどの表情で、友を見つめ…。一言発した。

アネモネ「マリーは…貴様のものにはならぬよ」

マニ「それは既に所有している物だと。そう言いたいのか」

アネモネ「話で聞くとおりのポンコツだな。…マリーは本当に強いからだ」
吸血鬼がそう言った時には、マリーは武器を手に、駆けていた。見るも無残な状態だった腕は、生命の杖で完全に治癒している。しかし傷は癒えようが、先刻の”マニの分解術”は常人なら恐怖を覚えるだろう。だが、マリーの瞳には恐れなど無かった。青い目は闘志に燃えている。

マニ「…見込み通りだ」

 

今までマニの分解術を使わないなぁ…と思っていたのに、使えるじゃないか。

 


機械の神の銃撃は容赦なく。何度も、何度もマリーをミンチにする。しかし、今日の幸運の女神は大変ご機嫌なのか。契約は発動し続けた。しかし運だけではない。マリー自身もまた強靭だ。どんなに追い詰められようが、心を乱すこともなく対処し。攻撃をする機会を見つけては《破壊の斧》を振るい、クリティカルで大ダメージを与えていく…!

アネモネ「…」
吸血鬼はそんな攻防を見るだけだ。その姿は冷酷に見えるが…表情をよく見ると、少し唇を噛んでいた。何度か唱えそうになった治癒の雨を抑えるために、堅く口を閉ざしているのだ。


*ブシュ* マリーは《機械のマニ》の首をちょんぎり 殺した。

マリー「はぁ…はぁ……やった…ぞ……は、ははは。………」
息を切らしながら、マリーは嬉しそうに笑い…ふっと糸が切れた人形のように、力無く倒れた。

アネモネ「…マリー!」
吸血鬼は慌ててマリーのもとに駆け寄る。先刻の冷たい顔が嘘のように、ひどく動揺した様子だ。安否を確かめようと、アネモネはマリーへ手を伸ばし…

マリー「………Zzz」

アネモネ「…寝ておる……はぁ~…」
一気に張りつめていた緊張の糸が解け。アネモネはマリーの隣に座る。顔を覗き見るが、驚くほど無防備に寝息を立てている。こんなにも近くに居るというのに。マリーは起きる気配がない。…いや、アネモネのひんやりとした身体に無意識に気づいてか、身を寄せてきている。

アネモネ(呑気なことだ)
激闘でマリーの肌は赤く上気しており。伝わる体温もひどく熱い。冷やしてやろうと、アネモネは手のひらをマリーの額に乗せた。ドクドク…と、皮膚の下で脈動する血液を感じる…。吸血鬼は落ち着かない様子で周囲を見るが、そこにあるのは飛び散ったマリーの血痕だ。食欲をそそる芳醇な匂いが鼻孔をくすぐる。

アネモネ「…」
誘惑の声が聞こえる…今なら噛めると。

 

マニ様はサンドバッグなので、マリーの相手になりました(?)
時止めが発動した時は終わったと思ったが…耐えきるとは驚きだ。細工籠手に付与されたルルウィの加護で銃弾を避け。《破壊の斧》に追加エンチャントされていた雷追加攻撃ダメージによる麻痺。でも、1番大きいところは契約発動だろうか。エヘ様にタラバガニをお供えしておこう。

 

 



マリー「…ハッ!ここは…私の部屋か?…ううぅ、痛い。身体中が痛い…」

アネモネ「やっと目覚めたか…マリーよ。良いか、落ち着いて聞け。お前は昏睡状態であった。ああ、わかっておる。どれくらい眠っていたか…10年だ」

マリー「嘘だ!?」

アネモネ「嘘だ。本当は1日ほどだ。なかなか起きないから、噛みついてやろうかと思ったぞ」

マリー「はぁ…寝起きの人間をおどかす冗談はやめてくれ」

アネモネ「目がよく覚めたであろう。後でエリザに礼を言うのだぞ。”世話”をしたのはエリザだからな」

マリー「それはその…きちんと言っておく。……アネモネもありがとうな。私の看病をしてくれていたのだろう」

アネモネ「…どうだろうなぁ。後少しでも目覚めるのが遅かったら、感謝ではなく怒りだったかもしれないぞ」

マリー「だが、私は人間だ。今ある事実が現実だ」
そう微笑んだマリーの胸元で、十字架が陽の光を浴びて輝いていた。信心深い者が吸血鬼になると、十字架に触れるだけで、その身が焼け爛れるという。

アネモネ「お前のそういうところが神に愛されるところかもな。80%の確率とはいえ、契約を何度も発動させ。神々の中でも厄介なマニを本当に1人で倒してしまうとは…素晴らしい戦いぶりであったぞ」

マリー「ははは、お前の協力があったこそさ。強化ポーションの用意、そして鼓舞の効果が切れないように、しっかり私を見てくれた。助けられたよ」

アネモネ「…それで。そろそろ聞いても良いよな?なぜこんな無茶をやろうと思ったのだ」

マリー「……私は強いと証明したかったんだ。きっとエリザとジルだって、勝てるはず。それはお前が築き上げたものだ。だから、その…何かあったら、頼ってほしい。私や他の皆にも」

アネモネ「そんなことを言うために神と戦ったのか…!?ふ、ははは…お前は本当に馬鹿だな」
吸血鬼はひとしきり笑い。マリーに言った。

アネモネ「お前の杞憂だ。我は順風満帆。愛する女と結ばれ、楽しい友と出会い、すべてを理解した。後は終着へ向かうだけだ。ははは、ふはーはははははははっ!」
それで話は終わりだと告げるように、吸血鬼は立とうとしたが…何かに引っ張られた。見ると、マリーは真紅のマントを掴んでいた。まだ病み上がりで弱っているというのに。青い目は真っ直ぐと力強く、アネモネを見ていた。

マリー「待ってくれ…その、お願いを聞いてくれないか」

アネモネ「願い?」

マリー「ご褒美さ。いつも言っているだろう。なんでも聞いてやると」

アネモネ「…良いだろう。言え」

マリー「お前の望みを叶えたい」

アネモネ「なに?」

マリー「なんでもは無理だけど。私はお前が望むことを叶えたいと、そう思っているんだ」

アネモネ「…お前はどうしても、我から”何か”を聞き出したいようだな」

マリー「あ、その…そうなんだ。私はお前のことが気になるんだ。友として」

アネモネ「友としてか…いいだろう。聞かせてやる」
そう言った吸血鬼はマリーに近寄ると、ベッドの端に足をかけ…そのままマリーの腹の上に跨った。すぐ近くでこちらを見る紫の瞳を呆然と見返す青い目。驚きの声を上げる前に、細い指がマリーの手を握り。アネモネは、マリーの手を己の胸元へ引き寄せた。

アネモネ「我の心臓を貫いてくれ。私はずっとそれを望んでいた」

 

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