クレイモア吸血鬼の旅行記101 ノヴィスワールド-シーナ100%-



マリー「そうか。シーナさんがいないのは残念だな」
シーナ「そ、そう言ってくれるなんて嬉しいです。…ところで、いつも一緒にいるアネモネさんは?」

マリー「私1人だ。あいつ…アネモネは。この前、初めて一緒に飲んだエリザに…ちょっと……いや、激しく。まあ、色々とあったせいか。寝込んでいる状態でな」
シーナ「そうなんですか。大変でしたね…」 酒場の看板娘として、様々な酔っ払いを見てきたシーナはなんとなく察した。

マリー「あ、すまない。引き止めてしまったな」
シーナ「…あの、良かったらですけど。買い物にお付き合いしてもらってもいいでしょうか。ちょうど気になっていたキャラバンの露店に行こうと思っていて。品揃えが良いって評判ですから、マリーさんにも興味が引くものがあるかもしれません」

マリー「ああ、構わない」
シーナ「ふふ、デートになりますね!……な、なーんて。はしゃぎすぎですよね」

マリー(確か…女性は仲良い友達との遊びをデートと、言うことがあるらしいな?)「…今日はシーナさんとデートできて嬉しいよ。行こうか」
シーナ「あ…は、はい!」
耳も頬も赤く染めたシーナは思わず緩む口元を抑えながら、マリーの隣を歩いた。いつもの買い物なのに、好きな人が隣にいるだけで、こんなにも違った世界が見える。なんてことない、ちょっとした会話すら、夢のようなひとときだ。

 

そうして、ふわふわと幸せな気分で帰路したシーナであったが。食材を待っていたはずの酒場のマスターはぐったりと横になっていた。樽を運搬しようとして、腰をやってしまったらしい。
酒場のマスター「いたた…いったぁ!?……はぁ。これじゃあ、厨房に立つことができないな。シーナちゃん、ごめんね。せっかく買い出しに行ってくれたのに」
シーナ「気にしないでください。マスターはしっかり休んでくださいね。今日はもう店じまいするしか……あの、マリーさん。料理できますか?」

マリー「料理?」



マリー(野戦食とか…後、保存食は作った経験があるが。求められているのは、そういうものじゃないよな…)
ここは素直に無理だと答えるべきかもしれない。だが、マリーの脳裏に何度か見た光景が思い浮かんだ。アネモネはいつも持ち歩いているバーベキューセットで、一瞬でリンゴパフェを作っていた。この不思議な世界では、調理器具を使用すれば、料理を作れるのが当たり前かもしれない?
しかし、アネモネは自宅でちゃんと揃えた食材と調理道具で、カレーをじっくり時間をかけて作っていることもあった。もしかしたら、旅の間は簡易で調理できる魔法を使っているだけかもしれない…。

マリー(だが、可能性にかけよう…!)
何を料理する?フードプロセッサーで死体を料理して、動物の肉のピリ辛炒めを作った。

マリー「うわ。どこからか野菜と調味料が入り込んで、ピリ辛炒めが出来た…!?」
シーナ「わぁ~美味しそう♪早速、いただきますね。もぐもぐ…すごいっ!何者ですか、マリーさん。マスターよりお料理上手じゃないですか!」

マリー「そ、そうなのか?ありがとう」
シーナ「これなら問題ないどころか、お客さんがどんどん来ちゃいそうですね。ふふ、頑張りますね!」

 

無事に店を閉めることなく、今日もヴェルニース酒場は賑やかで…

とても荒々しい光景となった。派手に足音を立てて、ほとんどの席を占領していくガラが悪い男たち。リーダー格らしき眼帯の大男の恰好はどう見ても盗賊団の頭だ。それでもシーナはたま~に、こういう職種の人たちが来る日もあるわね。と、怖気づくこともなく。彼らを客として接したのだが…
シーナ「お待ちどおさまでーす。ウィスキーと特製肉まんじゅうをお持ちしましたー」
盗賊団のお頭「おう!ありがとよ、べっぴんさん。どうだい、奢ってやるからよっ。俺たちにお酌してくれねえか!」
シーナ「あはは。すいません、うちはそういうサービスやってなくてー。お饅頭、ここに置いておきますね?それでは、ごゆっくりー」
盗賊団のお頭「なんだよ、つれねぇなっ!そう固いこと言わずに座れよおらっ。お!饅頭なら嬢ちゃんのケツにでかいのが2つ付いてるじゃねぇか!やわらけえなっ、ガハハハハァッ!」
シーナ「きゃー!…ちょっと、やめてくださいっ。ほんとに怒りますよ…!っ…やだ…もう、離して————…っ!?」
無遠慮に腰に手を回してくる男を振り払おうと抵抗するシーナの瞳に映ったのは、恐ろしい速さで飛んできた包丁だ。盗賊団のお頭の帽子を捕らえ、そのまま深々と壁に突き刺さる。

マリー「やめろ。彼女が嫌がっている」
盗賊団のお頭「ガフゥーッ!?…っと、なにしやがるこのクソアマ!!」 威嚇するように怒声を吐くが、その姿は驚きで椅子ごとひっくり返った情けないものだ。

マリー「確かに…調理する道具である包丁を投げるのはダメだな」
盗賊団の子分「気にするところがそこかよ!?こいつやべぇ!」
盗賊団のお頭「てめぇ上等だ…!2度と舐めた口を叩けねえように…うん?よく見ると、でけえ乳にツラも悪くないじゃないか!ガハッハッハッ!わからせてめちゃくちゃにしてやるぜえ!!」
盗賊団の子分「ヒャーハハハ!泣く子も黙る『血濡れの髑髏団』に逆らったこと、とくと後悔しやがれっ!」

マリー「…最低だな」
そう呟き。マリーは心底呆れた視線を向けた。そして拳を硬く握り…アイスボルトを放った。盗賊団一味は瞬く間に冷気の魔力に包まれ、頭部だけ残して凍りついた。
盗賊団のお頭「づ、づめだああぁああい…!!?」

マリー「殺しはしない。さあ、風に当たって頭も冷やすといい」 マリーは盗賊団一味を店の外へスライドした。
シーナ「…はー、びっくりした。無茶するんですからマリーさんは…。あの手の迷惑な手合いにいちいち腹を立ててたらキリがないのに」

マリー「すまない」
シーナ「………。でも、正直言って嬉しかったです。ありがとうございます、私の事庇ってくれて」 シーナははにかむように笑うと、そっとマリーに耳打ちした。

マリー「…っ」

 



アネモネ「…っ、ふっ」

ドラクル「お嬢様…ここがよろしいでしょうか」

アネモネ「あぁ、そ…こ……はぁ、もっと深く…」
ベッドの上から聞こえる艶めかしい幼い少女の喘ぎ声。覆い被さる黒い痩身。白い手袋に包まれた大きな手は、幼女の小さな肩から細い腰へと触れていき…。

マリー「……何をしているんだ」

アネモネ「ぬ?何を、とは。マッサージを受けていたのだが。ずっと寝転がっていると、身体が凝ってな~」
起き上がった吸血鬼からタオルが滑り落ちる。恥じらいもなく胸を張り、両腕を上げて伸ばす白い肢体が身に付けるのは、大人びた黒い紐パンツだ。

マリー「…その調子なら、二日酔いは治ったようだな。迎え酒でもするか?」

アネモネ「飲まぬよ。…しばらくはな」

マリー「懲りないな。まあ、私としては飲み仲間を失いたくないから、嬉しいが」

アネモネ「ははははははぐあっ!?まだ頭痛がっ……そうかそうか、我が居なくて寂しかったか~。ふふふ、ははぬぐああっ!?」

マリー「どうしてそこまで大笑いしようとするんだ。お前…」
そんな会話をする中。ドラクルは黙々と乱れたアネモネの髪を整え、腕にシャツの袖を通し、ボタンを留め。半ズボンを履かせようとし、

アネモネ「…ドラクルよ、着替えは手伝わなくてもいいと言っておるだろう」

ドラクル「申し訳ありません。つい、いつもの癖で」

アネモネ「そなたは…本当に我の世話をするのが好きだな」

ドラクル「はい、大好きでございますよ。お嬢様のお世話が」
老紳士は穏やかに笑みを浮かべながら、優雅に礼をし。退出していった。

マリー「…いつも?」

アネモネ「髪の手入れやマニキュアを塗ってもらうとか…細々としたことだけだぞ。油断するとたまに…いや、そんなことはどうでもいい。マリーよ、我に相談しに来たのだろう?」

マリー「……実はその…シーナさんと色々とあって…。気のせいかもしれないが…いや、やはり私の勘違い」

アネモネ「シーナはそなたに恋しているぞ。気づいてなかったのか」

マリー「…。…シーナさんは女性で。私の今の性別は女だ。そんな感情を持たれるなんて、考えもしなかったんだ…」

アネモネ「ここにいる暇があるなら、シーナに会ってきたらどうだ?彼女は今もきっと、そなたを恋い慕っているだろう」

マリー「…っ!」 マリーはアネモネに背を向けて、走り出した。最初から背中を押してほしかったかもしれない。

 



マリー「私に?…喜んで受けるよ」
シーナ「助かります!それじゃあ早速行ってみましょうか」

マリー(…人目がある場所より、2人きりの時に話した方がいいかもしれない)

 

~ヴェルニース街道~
シーナ「ふぅ…お疲れ様でした、マリーさん♪いやー、値引きも上手くいって大成功でしたね」

マリー「たまに店番を任されているからな。交渉スキル180以上を活かせて良かったよ」
シーナ「お店の交渉もできるなんて流石というか頼りになるというか…。いやだなぁ、おだててる訳じゃなくて、心からそう思っていますよ、心から!」

マリー「ありがとう」(…結局、話を切り出せてないな。彼女の楽しそうな笑顔を見ていると、躊躇ってしまう……けれど)
アネモネの厳しい視線を思い出し、マリーは話をしようとしたが———
盗賊団のお頭「やいやいっ!てめぇら、何時ぞやはよくもやってくれたなぁ。この顔を忘れたとは言わせぇぞ!?」 先日、見たような男が草むらから飛び出してきた。
シーナ「………。…あぁっ!たしか前にお店で迷惑行為を働いた挙句、氷像にされかけて逃げ帰った『瀕死のムクロ団』の皆さん!」
盗賊団のお頭「『血濡れの髑髏団』だ!わざと間違えてるだろ、このアマっ!?」
シーナ「何です、藪から棒に。まぁどうせ、ロクな要件じゃないんでしょうけど」
盗賊団のお頭「へへへ…察しが良くて助かるぜ。命が惜しけりゃ、後ろの馬車ごと積み荷をこっちに引き渡しなっ!出てこい、野郎共っ!」
盗賊団の子分「へへへへへ…」 「カモが来やがったぜぇ…」 「うわぁ…マジでやるのか。帰りてぇよ俺…」
シーナ「ちょっ…!何人いるんですか、あなたたち!卑怯ですよ!多勢に無勢!」
盗賊団のお頭「やかましぃっ!!数は力だ!俺様たちに逆らったこと、とくと後悔しやがれっ」

マリー「わかった…今度は本気で殴ろう」 青い目を細め、マリーは真っ赤な大斧を構えた。


盗賊団のお頭「すいませんでしたー!!」
盗賊団の子分「オノ女こわい!」
徹底的に追い詰められ、恐怖を叩き込まれた盗賊団たちは、蜘蛛の子を散らすかのように逃げていった。

マリー(オノ女…)
シーナ「ふぅ…盗賊団はなんとか撃退できましたけど、馬車からは大分距離が離れちゃいましたね…。早く引き返して、積み荷の無事を確認しないと…え…雨?うそ…」
ポツリとポツリと落ちてくる雨粒は大きく。空から重々しい轟音が響いてきた…雷雨だ。

マリー「シーナさん。とりあえず、あそこに避難しよう」 指差した先にはちょうど大人2人が入れそうな洞穴があった。
シーナ「は、はいっ!」

 


シーナ「…ごめんなさい、マリーさん。ご迷惑をかけてしまって……え!?」
申し訳なそうに隣にいるマリーを見たシーナは顔を赤く染めた。マリーは濡れた服を脱ぎ、純白の下着姿で服を絞っていたのだ。

マリー「気にしないでくれ。これも護衛の内…うん?」 様子がおかしいシーナに気付き。ふと、マリーはすっかり忘れていたことを思い出した。(しまった…)
シーナ「濡れた格好のままじゃ、風邪引きますよね~…私も……えいっ!」
恥じらいながら、シーナも服を脱いだ。露わになったそれはシルク製の、来たる決戦で用意されたものであった。白いフリルとリボンが付いた青い布地。まるで澄み渡る空のような、上下セットのシースルーだ。

マリー(…どうしてこうなった!?)
焚火を起こし、その近くに服を置いた2人は肩を並べて座った。触れた肌は温かく、冷えた身体には心地よい。とても気まずいが…マリーは寒がっている彼女から距離を取ることが出来ない真面目馬鹿であった。
シーナ「…白状してしまうとですね。私、正直言って今日はものすごーく浮かれてました。少し前に2人でキャラバンを見て回った続きみたいだな、って。軽口はポンポン出るのに、依頼にかこつけないと意中の人をお出かけにも誘えないような臆病者なんですよ?そんな私が看板娘だなんて、笑っちゃう…」

マリー「…」
シーナ「あ、はは…。勢いに任せて告白しちゃった…。締まらないなぁ…本当に。ほんとは、こんなつもりじゃ無かったんです…。夕暮れまでには2人で街に戻って、お店で乾杯して、色々とおしゃべりして…。今日のお礼にって、あなたに星が良く見える高台まで連れ出して…。それで———…私。………その、マリーさん…。私じゃ…ダメですか?」

マリー「………私には、私の帰りを待ってくれている人がいるんだ。守ることが出来なかった彼女を失ってから…もう一度、一生を誓おうと思えるほど、大切な妻が」
シーナ「……そっかぁ。………そんな気がしていましたよ。今日のマリーさん、少し変でしたから。それに、いつも同じ指輪を大事そうに身に着けてて…私、本当はわかっていたかもしれません」

マリー「…」 指輪はアネモネに貰ったものだったが、マリーは黙っていることにした。
シーナ「……ワガママ言っていいですか。今だけは…雨が止むまでは……。私の隣に居てくれませんか…?」 笑おうとして失敗する。中途半端な表情のまま、瞳から涙が零れてきた。

マリー「…うん」
雨音と焚火の音だけ聞こえる空間の中。夜明けまで、2人は静かに寄り添った。

 

 



マリー「…」

アネモネ「暗い。我が作っている料理が不味くなるだろうが」

マリー「すまない…」

アネモネ「マリーは真摯に答えたのだろう。嘘も、下手な優しさもなく。そなたの帰りを待っている妻と子にも裏切らなかった」

マリー「ああ…そうだけど。もっと別の言い方があったじゃないかと。何度も考えてしまってな……」

アネモネ「過ぎた時は永遠も戻らぬよ。やり直しが効かないのが人生だ。どんな行いであれ、自らが歩んだ足跡だ。それは消えはしない。どんなに間違っていると思っても…」

マリー「…」

アネモネ「それにシーナは強い女だ。次に会った時はいつもどおりの元気を見せるであろう。さあ、そなたも我の特製マーボーカレーを食して、元気を出すが良い。ほれ、あ~ん♪」

マリー「あ、あ~ん…もぐもぐ」
流されるまま差し出されたスプーンを口に含み。味わうマリー。…いつもどおりの調子だったら、少しは疑ったかもしれない。

マリー「うっ…ああああああああああああっ!?かっ、からあっ!!?」
口を押さえ、青い目からボロボロと涙を零し。マリーは凄まじい辛さに悶絶し。崩れるように膝をつく。滲む視界で映ったのは、コンロの上にある大鍋と小鍋。大きな物はよく使っている大人数用。そして、小さな物はアネモネが自分好みに味付けする時に使うものであった。

アネモネ「ふ、ふふふ。激辛マーボーと辛口カレーの超絶コラボレーション…!なんて素晴らしい、素晴らしい組み合わせなのだ。ふはーはははははははっ!」

マリー「み、水…死ぬ。辛さで死んでしまう……」

エリザ「すごい悲鳴が聞こえたのですけど…。マリー!?…お水?すぐに用意しますわ!」

マリー「…んぐんぐっ、はぁ~~~………」 受け取った水を一気に飲み干し。一息つくマリー。だが、あまりにもダメージが大きかったのか。ぐったりと座ったままだ。

アネモネ「はははははっ!我に油断するとはマヌケだな!ふはは」

エリザ「あなた」 近い。恐ろしいほどの速さで少女は吸血鬼に接近した。

アネモネ「は。エリザ、これはちょっとした発破という奴でな。それに美味しいのだぞ、超絶激辛マーボーカレーは」

エリザ「あなたの舌では、ね。なんてものを食べさせていますのっ!!この阿呆吸血鬼!」 少女の細指は、吸血鬼の柔らかな両頬を掴んだ。

アネモネ「いひゃ…やめぬぐわああああああああああああっ!!」
吸血鬼の小城で2度目の悲鳴が響くのであった。

 


 

秘密の恋人たち枠であるシーナさんだが、シナリオで活躍したり。デートイベント追加されていたりとメインヒロイン並みに掘り下げられていたね。よりシーナさんに思い入れを感じるようになったな。
RP上ああなりましたが…本来はシーナさんと恋人になる話です。結末を変えることに関して悩んだが…。マリーならこう答えるだろう、という私の考えは変わりません。ちなみに、アネモネでも同じような結果になります。本気の相手に対して遊ぶような真似はしないので。