クレイモア吸血鬼の旅行記100 ノヴィスワールド-伝説の魔王の伝説-



エリザ「あなた…あ・な・た。起きて、起きてちょうだい」

アネモネ「…」
*ぶ~ん*

エリザ「起きないと…首根っこ掴んで、引きずり回しますわよ」

アネモネ「…」
*ぶ~~ん*

エリザ「…お酒じゃなくて、私にもっと…その、甘えていいのですわよ」

アネモネ「…」
エリザの言葉にアネモネの目蓋が少し動いたように見えたが…*ぶ~~~ん*という大きな音と共に、ダンジョンクリーナーがテーブルの上の酒瓶を片付けていく。彼?はかたつむりに優しい紳士であり、掃除熱心であった。

エリザ「…。ごめんなさい。少し、静かにしてくださる?」
ちょっとだけ苛立った様子でダンジョンクリーナーを見た少女は、その機体に停止ボタンらしいものを見つけ。つい、押してしまった。1000近くある筋力で。加減もなく。


ダンジョンクリーナー「深刻ナエラーガ発生シマシタ、深刻ナエラーガ発生シマシタ」

エリザ「え、ええっ!?ど、どうすれば…!」

マリー「この騒ぎは一体…?」
パニックで涙目になっている少女の耳に馴染みある声が聞こえた。入り口の方を見ると、心配そうにこちらを見るマリー。そして、隣には様子がおかしいダンジョンクリーナーに困惑しているシーナが立っていた。

エリザ「マリー?どうして…ここに?」

マリー「帰りにシーナさんと、色々と話してな。せっかくだから、2人きりで飲もうと誘われたんだ」

エリザ「まあ…そういうことですの」(マリーはまったく意図に気付いてないようですけど)
シーナ「あはは…。そ、それより~、ダンジョンクリーナーの調子が悪いみたいですね。えっと…いつもはこう叩けば…。えいっえいっ!」
トントンと、可愛らしい音が響くが。ダンジョンクリーナーは変わらず、警告音を出し続けている。

アネモネ(叩いて直るわけがないだろう…そうだ、分解して中身を。いや、我が修理を) 吸血鬼は内心わくわくしながら、身を起こそうとしたが…

エリザ「叩けばいいですのね!」

マリー「叩けばいいんだな!」
そう発した2人は、同じタイミングで叩いた。ちょうどダンジョンクリーナーを挟むように左右から。その衝撃でクルクルと、機体は高速で回り出す。止まらない止まらない。空気を切り、風が生まれ。ひとつの渦が産声を上げる。

アネモネ(まるで…トルネード!) 人力で発生した脅威に、吸血鬼はただ呆然と、その光景を見るしかなかった。

 

ダンジョンクリーナー「ぴ…ぴ…が…」*シュウゥゥ* ダンジョンクリーナーは回転を停止…壊れたのだ。


エリザ「ごめんなさい。こんなことになるなんて…」

マリー「本当にすまない…。もう少し加減をするべきだった…」
シーナ「いいんですよ。私も調子が悪くなるたびに、けっこう叩いていましたし…。この機会にしっかり修理してもらった方がいいかもしれません」

アネモネ「なら、修理代を出そう。いくらかかりそうだ?」(我も悪いしな)
シーナ「いえいえ、アネモネさんたちは街を救ってくれた英雄ですから。気にしないでください」

アネモネ「だが…」
酒場のマスター「おーい、シーナちゃん。ダンジョンクリーナーをちょっと借りてもいいかい?また、街の近辺に魔物が増えてきてるみたいなんだ」
シーナ「えええ…。このタイミングでですか?ど、どうしよう…」
酒場のマスター「どうしたんだい?またダンジョンクリーナーの調子が……なんだこりゃ!?」 店内に入った酒場のマスターは人力竜巻で滅茶苦茶になった惨状に驚いた。

マリー「本当に申し訳ない…。魔物と言っていたが、何か力になれるだろうか?」
酒場のマスター「…まあ、あんた達の評判を知ってる。反省しているようだし、あれこれ聞かないでおくよ。それより、問題は魔物だ。うちのダンジョンクリーナーは、もともと私が冒険者時代にネフィアから回収したものでね。工房ミラル・ガロクで修理・改造された後は、長らく酒場のマスコット兼、用心棒として活躍してきたんだが…」
シーナ「普段は店内のお掃除なんかを担当してくれてるんですが、昔の特性も記憶してるみたいで、時々、街の外に出かけて行ってはネフィア内のモンスターを駆除して回っているの。なんでもモンスターが迷宮から溢れ返って外に出ないよう、古代の知恵者が設計したプログラムなんじゃないかって、ミラルさんが」

アネモネ「たまにネフィアで見かけていたが、あれはモンスター清掃をしていたのか」(ついミンチにしていたな)
シーナ「ティリス内の魔物の数は増える一方…。最近では街道にたむろする大規模な群れなんかも目撃されていて、かなり困った状況なの」

エリザ「モンスターの首を刎ねるのなら得意ですわよ!私たちに任せてちょうだい。いえ、是非そうさせてくださると助かりますわ」
酒場のマスター「はは、それは頼もしい!魔物が湧き出している場所はノースティリス南方にあるお城でね。…うん?吸血鬼が住んでいるって噂の城とは違うよ。確か…石の巨像が目印になっている古城だったかな?」

マリーそこなら知ってるぞ!アネモネと一緒に白くてネバネバしたものを出す、硬くて巨大な…エリザ?顔がすごい真っ赤だぞ。体調が悪いのか?」

アネモネ「そなたは本当に無邪気だな…」

マリー「?」

 

~奈落の城《巨像》の地下ダンジョン~


アネモネ「以前は気付かなかったが、このような空間が広がっていたとは…驚嘆であるな。なにやら先客が居るようだが?」
アレックス「目覚めよという声が聴こえる…。僕は行かなければいけない…。この世界を闇から解き放つために…!」
ウルズ「——勇者よ…。勇者アレックスよ…。私は光の精霊ウルズ…。さぁ、伝承の剣を引き抜くのです」
新たな伝説が始まろうとしている…

アネモネ「フィギア『伝説の剣』の前で何をしているのだ?」
ウルズ「な…!?これは伝説の剣なんです!邪魔しないでください」

アネモネ「どう見てもフィギア『伝説の剣』であるぞ?貴様らこそ、掃除の邪魔だ。去れ」
ウルズ「うう…ひどい暴言。おまけにこんな禍々しい魔力を放っていて…お前、魔王の手先ね!アレックス、まずはこの邪悪を倒すのです…!」
アレックス「えっ?」

アネモネ「ほう。我と遊びたいのか。なら、本気でミンチにするぞ!」
アレックス「ええっ!?」


ダンジョン掃除の時間だ。マリーは光の妖精『ウルズ』を切り払い ミンチにした。「こいつやばい!」マリーは選ばれし少年『アレックス』を切り払い 殺した。「話を聞いてくれ!」

マリー「あ、反射的にやってしまった…」

アネモネ「安心せよ。気絶しているだけだ。そのうち這い上がってくるであろう」

エリザ「勇者とか、魔王とか言っていましたけど…魔物が増えている原因と関係があったのかしら?」

アネモネ「そんなことはどうでもいい。我らは依頼を受けてやってきた冒険者だ。それに、下手に関わるとめんどくさそうだしな。…まったく、我を魔王の手先扱いしおって」

エリザ「あなたって、たまに大人げないですわね…」

アネモネ「ふふっ。我は愛らしい幼女であるからな」

エリザ「マリーより年上って言ってませんでした?」

アネモネ「ふはははは!我は年上の幼女である!」

マリー「何を言っているんだ…?」


オーガロード「グフフ…来たか勇者よ。飛んで火に入る、とはまさにこの事よ。このオーガロードの前に立った事を後悔し、絶望の中朽ち果てるが良い。さあ!叩き潰してやる!」

アネモネ「…」 吸血鬼は無言でマリーを見た。

マリー「…」 マリーは違うと言わんばかりに目を逸らすと、たまたまエリザと目が合った。

エリザ「…」 少女は困った顔で、オーガロードを見つめた。
オーガロード「…普通に傷付いたわ!貴様ら、許さんっ!!」 悲しき戦いがはじまった…!

 

そして、マリーの容赦ない大斧でオーガロードは討伐され。先に進むと——

ヘルモース「そこまでだ、勇者よ」
ガント「我らは妖魔四天王」
ノルネド「このカタコンベの最奥が、闇の王の玉座と知っての狼藉か」
イースギル「我らが悲願。《奈落の王》の復活は誰にも邪魔をさせぬぞ」

アネモネ「知らぬ。失せろ」
妖魔四天王「「「「え」」」」

 

なんかぞろぞろ出てきた奴らもばっさり一掃し——

一行は最奥に辿り着くが、部屋の中央に玉座があるだけで。おかしな連中が言っていた魔王の姿は無く。ただただ静寂が広がっていた。

エリザ「誰もいない…?でも、何か気配がありますわね」 不気味な雰囲気に少女は警戒した様子で辺りを見回す。

アネモネ「散々魔王魔王と名を出して居ないとは、つまらぬ話だからな。探索するぞ。我はこっちを見る」 そう言って、吸血鬼は気になった所へ向かい。少女も黙々と別方向を調べはじめる。

マリー(私は…やはり、この玉座が気になるな)
触ると硬く冷たい。石を削って作られているようだ。クッション部分はなんだか肉っぽいが…感触は革だ。背もたれには目玉のレリーフ。ドラゴンの牙のような飾りがより禍々しさを演出している。マリーは玉座の裏側に隠し階段が無いか、肘掛けに何かスイッチでも無いか、調べてみるが…何も無い。
ハズレか…?諦めて別の場所を見ようと思ったが。ふと、アネモネが玉座に座っている姿が思い浮かぶ。少し寄りかかるように肘掛けに片腕を置き。その掌の上に顎を乗せて、不遜に足を組む。細めた紫の瞳はすべてを見下しているかのようだ。

マリー「…」
他2人に見られてないか確認し…。マリーはこっそりと玉座に座った。先ほど思い浮かべたアネモネと同じポーズで。実はやってみたいと思っていたのだ。

マリー(楽しい…。いや、今はこんな事をしている場合ではない) 少し頬を染めて玉座から降りようとしたが…


ウルズ「伝説の剣をこの短期間で使いこなせるようになるなんて、素晴らしいわアレックス」
アレックス「なんの、なんの。…ん?やや、そこに座っているのは…。入り口で僕をミンチにした胸が大きいお姉さん!?何故、お前が魔王の玉座に!」
ウルズ「…そうか。奴こそが全ての元凶。今世に復活したおっぱい大魔王に違いありません。まだ成長してない勇者に不意打ちするとはなんて姑息な…!」

マリー「ち、違う…っ!?私は…!」

アネモネ「なんと驚いた。マリーがおっぱい大魔王だったとは…ぐふっ!ふふふふふふふふふっ…」

エリザ「あなた、笑っては……くす、うふふふふふ…」

マリー「エリザまで…!?」
アレックス「おのれ!何を笑っているんだっ!僕を以前の僕と思うな!この手に掲げるは雷の刃…胸に抱きしは人々の希望。我こそは光の勇者アレックスだ!」
ウルズ「やっておしまいなさい、アレックス!」

 

宿命(?)の魔王と勇者の戦いの火蓋は切られ———

マリーは聖剣の勇者『アレックス』を切り払い ミンチにした。「台無しだよ!」

アネモネ「ふははははははははっ!我らがおっぱい大魔王の勝利であるぞ!ふはーははははははははははははっ!は、はははははははははははははっ!!」

マリー「やめてくれ…」

エリザ「ふふ…ごめんなさい。私が止めておきますから」

アネモネ「ぬ?我は真実を言って…なぜ我の頬を掴もうとぬぐわあああああああああっ!?」

 


アネモネ「いたた…。幼女の柔らかな頬が赤く熟れてしまったじゃないか」

エリザ「自業自得ですわよ。私も笑ってしまいましたけど…あなたは笑いすぎ。マリー、まだ気まずそうな顔をしていますわ」

マリー「…」

アネモネ「…すまない。ついそなたの胸はいじってしまうのだ」

マリー「その言い方もやめてくれ」

エリザ「あなた」

アネモネ「ひぇ!なぜだ…!?」

————騒々しい…。

すべて終わったかのように吞気な会話をしている吸血鬼たちに、重々しい何者かの声が聞こえた。

我は奈落の君主。魔を司り、人の世を滅ぼす災厄の王。かつて神に弓を引きし、原初の害獣なり。貴様は————…そうか…。異なる者が我が前に立つ。それもまた良いだろう。永き眠りより浮上した余の自我を沸き立たせてみよ、異界の仔らよ。その可能性を此処で示してみせるが良い…



マリー「人の世を滅ぼす存在だと言うなら、私は貴様を滅ぼす」

アネモネ「ふふっ。マリーは魔王というより、やはり勇者というのが似合うな。…本当に。さあ、最後の清掃だ!思い存分に綺麗にしてやろうぞ!」


闇の霧、鈍足、脆弱の霧によるデバフ。地獄の吐息、轟音の波動などの攻撃魔法。そして、物理攻撃の火力も高い。まさに魔王に相応しい強さであった。だが、それに恐れず。吸血鬼たちは向かっていく。魔王の弱点である電撃追加攻撃がエンチャントされた《破壊の斧》で切り込んでいくマリー。エリザも負けず劣らず、エーテルダガーと忍刀の2刀流を華麗に振るう。アネモネは2人の集中が途切れないように、サモンモンスターの杖で呼びされた魔物たちを混沌の渦で吹っ飛ばし。鼓舞と治癒の雨でサポートしていく…。乱れなく、3人の連携が合わさり。そして———


*ブシュ* エリザは《仄暗き奈落の王》の首をちょんぎり 殺した。

エリザ「ふぅ、やっと片付きましたわ。次から次と、問答無用で襲ってくる方ばかりで疲れましたわ…。世界を救うとか、滅ぼすとか…まったく。阿呆はあなた1人で充分ですわよ」

アネモネ「我は友好的だぞ?戦う意思を見せたら、容赦しないだけだ。世界を滅ぼしたいなど、思ったこと……我は無い」

エリザ「…私もそんなこと思う暇は無いですわ。あなたのことだけで、大変ですもの」

アネモネ「我は素晴らしくも麗しい絶世美形吸血鬼であるからな。ふふ、我の事で胸いっぱいになってしまうのは仕方ないことだ」

エリザ「鬱陶しさで胸いっぱいですわ」

マリー「…?」 アネモネとエリザのやり取りを微笑ましく見ていたマリーだが、ふと玉座に盃が置かれていることに気付く。盃は蜂蜜色の液体に満ち、今すぐ飲みたくなるような香しい匂いが漂ってくる。「これは…酒か?ごくりっ」

アネモネ「永遠が欲しいなら、飲み干すといい。鑑定したところ、それは神の食物アンブロシアから作られた《神酒 ネクタール》らしいぞ」

マリー「…。私はそんなもの望まない」

アネモネ「そうか」
吸血鬼は不老不死の酒が満ちた盃を取り、ためらいなく奈落へ投げ捨てた。零れ、飛び散る黄金の粒の輝きは、すぐに暗い底に消えていった。

アネモネ「さて、ヴェルニースに戻るぞ。ヴェルニースヴィンテージというワインを報酬に用意していると、酒場のマスターが言っておったな」

エリザ「もう。また飲む気ですの…」

アネモネ「なら、エリザは………エリザも。いや、無理に付き合わなくて良いが」 アネモネはしばし無言の後、そっとエリザだけに聞こえるように囁いた。「酒よりそなたに甘えていいか?」

エリザ「え…その…い、いいですわよ」

マリー「…私だけで依頼報告に行こうか」

アネモネ「な…!マリー聞こえて…!?待て、待つのだっ!今度は3人で誰が酔い潰れるまで飲み比べだ!逃がさんぞ」

マリー「また私の勝利だろう」

エリザ「それは…どうかしら?」

マリー「え?」

アネモネ「え?」

 


RPではああなったが、座ると勇者戦となり。玉座に座らない選択肢を続けると《仄暗き奈落の王》戦になります。《アイヴァンの夢》と同様、奈落の城ボス撃破後に挑めるボスということは《魔導》にも…?設定的に魔女関連かな。