拒絶の森…ノースティリス南に広がる森と比べて小さいが、ここを開拓しようと入った人間が帰ってこないことから、人を拒む森という意味でそう呼ばれるようになった。仄かな星と月の明かりを遮る木々で、どこまでも真っ暗だ。闇の中で響く、風にざざめく葉の音、動物の声、そして———
アドニス(人間の足音、先に来た冒険者…?としても随分と多い。それにマナの気配が強い。これはエレアか?)
エレアはカルーン国内にあるヴェンデールの森を故郷としている。だが、数年前に死の病の原因であるエーテルを生み出す森の増大によってカルーン国家は破綻。それを恨みに抱く者、他国も土地を侵食されないか恐怖し。現在、ザナンの皇子による異形の森の民への弾圧に非難は過激化し。居場所を追われた難民がネフィアに隠れ住んでいるという…。
アドニス(…戦う意思を見せたなら、どちらかが倒れるまで戦え。父上はそう教えてくれた)
侵入者に気付き、武器を手に近づいてくる音が聞こえる。逃げようが、知られた以上追ってくるだろう。哀れだと思う感情が出てくる…だが、この地は開拓される予定で。こちらの話を聞く様子は無く。また別の冒険者が討伐にやってくるだろう。なら、戦うしかないとアドニスは銃を構えた。
エレアの集団で危険なのは、遠距離から魔法の矢を撃たれることだ。HPが低い者とっては、一撃でミンチにされるだろう。アドニスはわざと姿を見せて、1人…2人と誘い出す。囲まれるのが危険なら、少しずつ確実に減らしていけばいい。後ろに下がりながら、射撃し。ちょうどエレアたちが並んでいたところに魔道具を振るう。アイスボルトに貫かれ、赤い血が飛び散る。それを浴びた少年は無意識に血を舐め取っていた。
アドニス(美味しい…) 先刻のコバルトの巣で感じた飢えが満たされる感覚がした。
エレアの神経術士「貴様か!我らの森を荒らして…っ!?」
怒りをあらわにリーダー格らしいエレアは途中で言い淀んだ。辺りは一面の血に染まり、その中心にまだ幼い少年が立っていた。手の平から滴る赤い血を恍惚と舐めている。異様な光景に怯んだが、同胞を殺されて逃げるなど…そんな選択肢など無い。いや、無かった。予測していたより、少年は素早く動き。神経術士の身体は為す術もなく、凍り——
『エレアの神経術士』を射撃し 破壊した。
アドニス(……お腹すいた…)
城に居た頃は毎日に飲めていたものを飲めなくなるのが、ここまで辛くなるなんて想像してなかった。モンスターの体液を飲もうが、物足りない…やはり人間の血じゃないと。激しく戦った後だと、より飢えを感じた。
アドニス(こうなるとわかっていたのか…) 少年は懐から、プレゼントの箱に入っていた採血道具を取り出した。
ルシアン「アドニス、おかえりー。そして、討伐成功おめでとう~。帰りが遅いから、迷子放送しようかと思ったぜ」
アドニス「どこから放送する気だ…。こんな時間まで待っててくれたのか?」 外から軽やかな鳥のさえずりが聞こえる。少年が出かけた暗い夜から、眩しい太陽が昇る朝となっていた。
ルシアン「いや、さっきまでぐっすり寝てたわ。ふふふ、坊ちゃんを想うと眠れな~い♥って、言ってほしかった?」
アドニス「やめろ。それならコバルトに抱かれて、犬の体臭に包まれたい」
ルシアン「坊ちゃんの趣味はよくわからねぇな…。まあ、とにかく疲れただろ。休もうぜ。そしたら、拒絶の森ってところに」
アドニス「ああ、それなら俺1人で片付けたぞ」
ルシアン「わぁーお!坊ちゃんすっごーい!…って、褒めたいところだけど。勝手に別の所に行くなんて、いけないなぁ~」 いつもどおりの笑みを浮かべているが、その雰囲気はどこか怖さがあった。
アドニス「…ごめんなさい」 少年はやり遂げたことを誇らしいと思っていた己を恥じた。ルシアンの顔をよく見ると、目の下が青っぽく。実は寝ていないことに気づいたのだ。
ルシアン「素直な坊ちゃんは可愛いなぁ。それじゃあ、お仕置きに添い寝してやるよ」
アドニス「どういう罰だ…!?」
~怨念の遺跡~
ルシアン「さぁて、ここは怨念がおんねん遺跡だー!」
アドニス「確か目撃されているモンスターは…レッサーファントムは鈍足の魔法、ニンフは眠りの手と冷気系攻撃。他に、混沌の手だったか?引き込まれて、集団に殴られないように気をつけよう」
ルシアン「…。はははは!囲むなら、殴って減らせばいいぜ!」 高らかに笑いながら、少女は遺跡の中へ進んでいった。
アドニス(時々、父上みたいなギャグを言うよな…)
ルシアンはニンフに柔らかい手で触られた。ルシアンは眠りを妨げられた。ルシアンは眠りおちた。ニンフは魔法を詠唱した。ボルトがルシアンに命中した。ルシアンは眠りを妨げられた。
ルシアン「スヤァ…フゴ!?…あぁん、そんなところ……スヤァ…いや、寒い!」
アドニス(傍から見たら面白いことになっている…)
ルシアン「デス・ファントムだってさ。なんか強そうだな!」
アドニス「死の亡霊って…死んでいるからファントムなのでは?」
ルシアン「そう言われるとだせぇな…じゃあ、デスクリムゾンファイナルソード・ファントムとかカッコ良くないか」
アドニス「素晴らしい。何もかもすごいネーミングだ」
デス・ファントム「…!」
若者たちの好き勝手な発言にデス・ファントムは激怒した。
ルシアン「ぐわー!?こいつ呪ってくるぞー!おまけに攻撃がいてぇ!アドニスはなるべく離れるんだー」
アドニス「っ…!」
置いて離れることに抵抗を感じたが…自分が倒れてしまったら、ルシアンは己を連れ帰ること優先するだろう。隣の部屋に移動したが、その先はレッサーファントムが待ち伏せしていた。アドニスは冷静に攻撃態勢に切り替え、1人で撃破した。
ルシアン「ぐっ…遊びすぎた」
その声にルシアンの様子を見て、アドニスは動揺した。ルシアンから余裕な表情は消え、瀕死状態だ。離れていろと言われたが…少年は迷いなく紐を使用し。ルシアンは瞬時にアドニスのすぐ隣にテレポートした。
ルシアン「うわぁ!?アドニス近い…って、なんで俺を隣に飛ばしたんだ?アドニスにヘイトが向かったら、即ミンチになるだろ」
アドニス「そういう結果になろうが…一緒にいるのにお前任せにするなんて、俺は俺を許せない」 少年は癒しの手の杖で少女を回復しながら、そう言い放った。
ルシアン「ははは、坊ちゃんのプライド高くて好戦的なところ好きだぞ。よっしゃ、いくぜー」
アドニス「そのつもりだ!」 こちらに音もなく近づいてくるデス・ファントムに向かって、少年は武器を向けた。
マジックミサイルの杖(残り10回)を振った。矢は『デス・ファントム』に命中し軽い傷を負わせた。『デス・ファントム』は恐怖して逃げ出した。ルシアンは『デス・ファントム』を殴って殺した。
ルシアン「はははは!俺の拳と、坊ちゃんの俺への愛の勝利だ!正にデスゥ!な奴だったなぁ。うん?なんか濡れ濡れな指輪が落ちてる。あいつの手汗か…!?」
アドニス「変なことを言うな。これは…《シャワーリング》?雷雨の影響を受けない魔力が込められ、その表面は常に濡れているという逸話があるアーティファクトだな。…本当に拭っても濡れているな」
ルシアン「へぇ、水分補給に良さそうだな。坊ちゃん、ちょっと指に装備して…」
アドニス「舐めようとするな」
拒絶の森→怨念の遺跡1:40
魔法の矢にもっと苦戦すると思っていたが、わりと耐えましたね?ボスは麻痺の矢が危険なのですが…速度差で、使う前に倒してしまいました。
ボスが持っていた炎の衝撃の杖にルシアンのHPがごっそり削られて驚いたが、それを2・3発受けても耐えられるから生命力100はすごいな(実は普通)
鈍足眠り異次元の手など、サンドバッグにされそうな組み合わせが揃っているネフィアでしたね。というか、ルシアンがそうなっていたな…。オーロラリングと同じ効果がある《シャワーリング》は序盤に入手するには良い装備ですね。
ルシアン「ぷはー、ひと暴れした後に飲むビアは美味いな~。帰りにノースポイントをあちこち見て回ったけど、まだまだ強い奴がいそうだな。ちょっと北へ行ったら、ただならぬ雰囲気の戦場?みたいなところがあったし」
アドニス「…花園があったよな。俺はそこに探索したいと思っているが、いいか?」
ルシアン「いいぜぇ~、お花畑でらんらんランデブーしようぜ~~」 調子よくそう答え。少女は豪快にジョッキの中身を飲み干しながら、アドニスの細い肩を片腕で抱いて寄せる。
アドニス「う、酒臭い…うぷ」
陽気に鼻歌をしているルシアンの隣で、慣れない匂いにアドニスはぐったりしてしまった。次の出発は遅くなりそうだ。
コメント